クレーム対応のレシピ 第6回

“お門違い”な苦情に「三分の理」
話を聴き共感を示すステップが不可欠


著者:JBMコンサルタント 玉本美砂子
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 「もしもし、こないだそちらで炊飯器を買ったものですけど、ご飯を炊こうと思ったらお米に虫がいたんです。高い炊飯器を買ったのに、お米に虫がいるなんて、晩御飯どないしてくれます?」――某防虫剤のCMだ。面白い!と素直に反応する人もいれば、言いがかりやクレームを助長すると不快感を示す人もいる。「ハードとソフトのミスマッチを揶揄したもの」と読み解いてもいいだろう。子供の不出来を教師の責任にする“モンスターペアレンツ”もこれに近いだろうか。

 実際に、このようなクレーム電話があればどうするべきか。まさか、「お米に虫がいるのは、お米ないしはあなたの管理の問題であって、こちらに電話をするのはお門違いだ」と、ストレートには言えまい。

 誰が見ても“お門違い”な苦情ではあるが、このおばちゃん自身は自分が正しいと思っている。「高い炊飯器に高い期待度を持っているから、虫が出るのは許せない」という気持があるのだ。一般的にクレームを言う顧客には「自分は正しい」と思う気持ちがある。「こんなことは私が初めて?」という言葉がよく出るのは、「この事象であれば誰でもクレームを出すはずだ、自分が間違っているのではない」ということを確認したいがためである。この心理が、怒りの爆発や要求を通そうとする言動あるいは企業に対しての親心的な助言というような現象となって現れる。応対者はこうした顧客心理を理解し、自分が設定するゴールへ会話を持っていかねばならない。

 顧客は自分が正しいと思っているのだから、まずはその気持ちを尊重してよく話を聴くことが大切だ。困っている背景に共感し、顧客の理解度に合わせて“どうすればよいか”を提案する。会話のゴールは、お困りごとの解決と会社/製品にいいイメージを持ってもらうこと。このように、顧客心理を考えながらゴールを見据えた会話をすることが、クレーム応対では必要だ。

 虫が出たと苦情を訴えるおばちゃんに対する模範的な対応手順は、まず虫がいてご飯が食べられない状況に十分に共感を示すことだ。次に、お米に虫が入らない方法を説明し、きちんと保管したお米を自社の“高い炊飯器”で炊くとますますおいしくなることをPRする。これによって、最終的には“いいイメージ”を残すことができる。

 クレームだからといって、何でもかんでも謝ればいいというものではない。顧客応対は商品の一部。『顧客心理の把握』と『戦略』が不可欠だ。これらが揃わないと「コールセンターに電話したのに、こんな応対するなんて、どないしてくれます?」と再びおばちゃんが登場することになる。残念ながら「おばちゃんコナーズ」も「クレームコナーズ」も売ってはいない。


(コンピューターテレフォニー2011年9月号掲載)

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2024年01月31日 18時11分 公開

2016年06月29日 16時45分 更新

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