VOC分析・活用の「課題と展望」

2026年11月号 <FOCUS/トピックス>

トピックス

8割超が必要性感じるも役立度はいま一歩
VOC分析・活用の「課題と展望」

──フライル(Flyle)

VOCは、コールリーズンの把握や応対品質・顧客満足度の向上、商品・サービスの改善などに寄与する重要な情報資産だ。フライルが実施したVOC分析・活用に関する調査によると、VOC活用の必要性を感じている企業は8割を占めるものの、経営の意思決定などに十分役立てている企業は2割程度という。何が障壁となっているのか。同レポートに記載された、主要なインサイトを取り上げる。

 コンタクトセンターなどに集まる顧客の声(VOC)を収集・分析し、潜在的なニーズや課題を抽出して商品・サービスの開発・改善に生かす──。通話音声のテキスト化やノンボイス対応が進むことで、VOC活用への関心が高まっている。しかし、十分な成果を得ている企業は少ないようだ。

 VOC分析・活用を支援するフライルは、このほど『VOC分析・活用の「課題と展望」レポート』をまとめた。その結果、VOC活用の必要性を感じている企業は8割を超えるものの、ビジネス上の意思決定などに十分役立てている企業は2割程度だった。同レポートでは調査データをもとに、VOC分析・活用の実態と課題、改善策について整理している。

目的は商品・サービス改善が最多
マーケティング、CX向上が続く

 図1に回答者属性をまとめる。同調査は、企業のVOC分析・活用に携わる担当者424名を対象に実施。所属部門は、お客様相談室/カスタマーサポート、コンタクトセンター、CX部門がそれぞれ3分の1ずつ。役職は管理職が41.5%、現場リーダー・SVが33%、経営層が15.8%、企画・DX推進担当が9.7%となっている。センターの運営形態は事業会社が約7割、BPO事業者は2割強だ。センター席数では、30〜50席未満を中心に、10〜300席未満がボリュームゾーンとなっている。業種ではIT企業と金融が比較的多い。

図1 全体の回答者属性
図1 全体の回答者属性

 図2-1は「自社におけるVOC活用の位置づけ」を聞いた結果だ。VOC活用を重視する層は8割超(82.3%)にのぼる。一方で「必要だが十分に活用できていない」が約2割を占め、活用意思と実態との乖離も存在する。「自社のVOC分析・活用がビジネス上の意思決定や改善活動に役立っているか」を聞いた結果が図2-2だ。約8割が役立っている実感を持つが、「十分に役立っている」は約24%にとどまる。“手応えはあるが使い切れていない”感覚が大勢を占める。

 「VOC活用の目的として重視しているもの」を答えてもらった。結果、商品・サービスの品質改善が約5割を占め、新商品・サービスの開発、マーケティング戦略の立案、顧客満足度・ロイヤルティ向上が約3割となった(図2-3)。

 なお、VOCの収集元として最も多いのはメール(約5割)。次点でチャット、フォームが続き、問い合わせ件数の多い電話(音声)は約3割にとどまる。テキスト化のひと手間が課題になっている可能性がある。また、月間に取り扱うVOC件数は3000件以上が全体の43.8%を占めており、手作業による分類・分析は限界だと考えられる。

図2 VOC活動の目的・現在地
図2 VOC活動の目的・現在地

VOC活用フェーズは“分析止まり”
問題把握も改善施策化まで届かず

 図3-1は「VOC分析・活用における課題」を聞いた結果だ。上位を占めたのは「分類・分析の工数」「専門知識による属人化」「高度な分析ができない」だ。収集して分類する段階の負荷が最大のボトルネックで、その先にある「顧客課題の真因把握」や「改善施策化」まで届いていない実情がうかがえる。また、VOC分類・分析業務に費やす時間を聞くと、月間80時間以上という回答が過半数(54.3%)を占め、200時間以上でも26.2%となった。これは課題のトップである「工数」を裏付けており、削減余地が大きいと考えられる。

 VOCの分類・タグ付けの精度についても聞いた(図3-2)。結果、「修正の手間あり」が過半数で、人手による手直しが常態化。「十分に高い」は23%にとどまる。

 図3-3は、各項目に対する分類・タグ付け状況と今後の意向を聞いた結果だ。顧客や商品の課題・真のニーズを掘り下げる高度な分類・タグ付けを「実施できている」層は2〜3割台にとどまり、「今後実施したい」が全項目で4〜5割台となっている。また、「VOC分析・活用における自社の到達フェーズ」を聞くと、「可視化まで(B)」が最多で「改善施策の策定・実行(D以降)」まで進めているのは11.8%にとどまる(図3-4)。分析止まりで、施策実行まで届かないのが一般的といえそうだ。

 なお、到達フェーズと高度な分類・分析の実施状況をかけ合わせて見ると、「フェーズD〜E」群は「フェーズA〜C」群と比べ、「顧客の熱量」や「リスク検知」といった、VOCに潜んでいる真のニーズや課題を掘り下げる分類・分析の実施率が高い傾向にある。

図3 VOC分析・活用の課題
図3 VOC分析・活用の課題

 続いて、AI技術の活用状況と実践の障壁についてまとめる。

 「VOC分析に使用している主なツール」を確認したところ、BI(可視化)ツールが最多だった(図4-1)。ただし、VOC分析専用のAIや汎用生成AIも広く併用。可視化ツール依存から分析・解釈型のAIへの移行が進みつつあるようだ。実際、「VOC分析・活用業務における生成AI・AIツールの活用状況」を聞くと、試験導入〜本格導入で約68%、検討中も含めると85%に達し、AI活用は業界標準となりつつある(図4-2)。ただし、本格運用だけで見ると2割弱のため、PoCから先へが困難なようだ。

 「VOC分析・活用業務でAIを活用するにあたっての懸念・障壁」を聞いた(図4-3)。最大障壁は「個人情報・セキュリティ」。分類・分析精度への不安よりもガバナンスや統合の障壁が先立つ。なお、AI活用状況と懸念・障壁をかけ合わせて分析すると、AIを本格的に導入・運用中の層と、試験的に導入の層で比較した結果、「セキュリティ」は両者ともに約6割で一貫して最大級の障壁だが、「精度への不安」は本格運用層で顕著に高い(54.9%)。これは実運用の開始後に課題として顕在化するケースが多いためと考えられる。

図4 AI・テクノロジー活用の状況と障壁
図4 AI・テクノロジー活用の状況と障壁

VOC活動の成否を左右する
「役立ち実感」が高い企業の特徴

 図2-2で見た、VOCの役立ち実感の高い企業(十分に役立っている)と低い企業(あまりorまったく役立っていない)では、どんな特徴や傾向差があるのだろうか。

 「役立っている群」は、役職では経営層や管理職の比率が高く、VOC活用の位置づけでも「経営上の重要テーマとして継続的に投資」という回答が6割にのぼる(図5-1、5-2)。VOCの有効活用のためには“経営アジェンダ化”が重要であり、「いかにVOCを経営の言語へ翻訳し、意思決定のテーブルに乗せるか」がカギとなる。

 また、「役立っている群」では、分類精度が「十分高い」との回答が63%(図5-3)。AIツールだけでなく、BIツールの利用率も顕著に高い(図5-4)。AI活用によって分類・分析の精度を高めつつ、可視化の仕組みも整えることで、意思決定に質するデータ分析・活用が可能になると考えられる。

 収集しているデータソースでは、「役立っている群」は電話・メール・チャット・フォームと多様な経路を扱う(図5-5)。また、課題として「データ整備」が最上位である点も特徴的だ(図5-6)。「意思決定に質するデータ分析」の土台として、多様なデータソースを統合・構造化するデータ活用基盤構築の必要性が示唆される。

図5 VOCの「役立ち実感」が高い企業の特徴
図5 VOCの「役立ち実感」が高い企業の特徴

◇◇◇

 以上の調査結果から、フライルではVOC分析・活用を深化させる3つのポイントをあげる。

1.手作業・属人運用からAIによる自律運用への転換

 専門人材の不足と膨大な分類・分析工数に対し、採用・育成での補強には限界がある。分類・要約・CRM入力といった後処理をAIでワンストップに自動化し、専門性がなくても回る自律運用へ転換することが、改善サイクル実行の負荷を下げる起点になる。

2.VOC活用のカギは、「経営アジェンダ化のためのデータ活用基盤の構築」と、「課題の真因を掘り下げる分類・分析の実践」

 VOCが十分に役立っている企業の多くは、VOCを「経営上の重要テーマ」に据え、「分類精度の高さ」「AI+可視化の仕組み作り」「多様なデータソースの統合・構造化」を重視している。これらの条件を満たし、経営の意思決定に資するデータ活用基盤を構築することが、AI時代の勝ち筋と考えられる。また、VOC分析に基づく改善施策立案・実行まで到達している層では、「顧客の熱量」や「リスク検知」といった、課題の深刻度・優先度を判別できる粒度まで分類・分析が掘り下げられている率が高い。VOCを「何が・なぜ・どれだけ深刻か」が見える粒度まで構造化し、課題と真因を可視化できることが、改善アクション加速のカギとなる。

3.AI本格運用を支える、ガバナンス基盤と分類・分析精度の担保

 個人情報・セキュリティはAI活用のフェーズによらず最大級の懸念であり、導入の前提としてガバナンス基盤は必須だ。一方、本格運用フェーズでは分類・分析の精度への課題感が強く、実運用を機能させ続けるうえでは精度を担保できる仕組みが重要となる。

 今後、VOC活動はますます重要な取り組みとなる。収集データは社内に限らず、SNSやレビューサイトなど社外情報も必要だ。多様なデータを元に迅速な改善サイクルを回す仕組みが求められる。

詳細はhttps://biz.flyle.io/resources/contact-center-voc-survey-2026を参照

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会員限定2026年10月20日 00時00分 公開

2026年10月20日 00時00分 更新

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