生成AI×コンタクトセンター・サミット/自動化時代のFAQ

2026年11月号 <Discussion/座談会>

座談会 <生成AI×コンタクトセンター・サミット/自動化時代のFAQ>

問われるFAQの構造と品質
顧客にもAIにも届く情報整備

生成AIの活用が広がり、FAQを利用するのは人だけではなくなりつつある。AIが顧客に代わって情報を検索・参照して回答する時代、求められる情報の作り方や管理方法はどうすべきか。顧客にもAIにも「見つけてもらえるFAQ」とは何かを議論した。

<パネリスト>(順不同)

小松 史貴 氏
小松 史貴 氏
イオンフィナンシャルサービス
CS本部 コンタクトセンター3部
部長
明石 大樹 氏
明石 大樹 氏
ベネッセコーポレーション
オペレーショントランスフォーメーション本部 コンタクトセンター部 エキスパート

<モデレータ>

樋口 恵一郎 氏
樋口 恵一郎 氏
ハイウエア
代表取締役/FAQ成果コンサルタント、AIOアドバイザー

樋口 生成AIの登場によって、FAQを取り巻く環境は大きく変わっています。これまでは、顧客自身が企業のFAQサイトを訪れ、検索して回答を探すことを前提として、企業は自社で検索性や画面の見やすさを工夫してきました。

 しかし現在は、顧客がGeminiやChatGPTといったAIエージェントに質問し、そのAIから回答を得るケースが増えつつあります。そうなると、企業のFAQは「人が読むコンテンツ」であると同時に、「AIエージェントが回答を作るための参照データ」にもなるわけです。こうした変化に追随する取り組みを進めている2社に、お話をうかがっていきたいと思います。

小松 イオンフィナンシャルサービスで、コンタクトセンターのデジタル化や生成AIの導入を進めています。商品開発にも携わっており、100の商品・企画をリリースするという目標を掲げ、新しい技術をどうサービスに取り込むかを日々考えています。

明石 ベネッセコーポレーションで、CS領域を担当しています。現在はFAQやチャットボット、マイページなどWebサポートのUX(User Experience)を見直し、お客様がWeb上で自己解決できる環境づくりを進めています。

樋口 小松さんは、「FAQを見る相手は人だけではなくなる」と捉えて、すでに取り組みを進めているそうですね。

小松 FAQサイトの情報は、これまで極力短時間で理解できるように要約したり、アコーディオンを用いるなどしてスクロール量を減らす、UI(User Interface)の工夫をしてきました。しかし、AIには「読む時間がない」「見づらい」といった“事情”はありません。「AIも見る」を前提に、「AIが情報を正しく読み取れるか」を重要な視点として加え、取り組みを進めています。

 実際、社内でAIエージェントの活用を進めはじめた当時は、情報が十分に構造化されていなかったために、AIが自社のWebサイトやFAQをうまく読み込めないケースがありました。現在は、FAQをAIの参照データとして捉え直し、LLMO(Large Language Model Optimization)も含め、正確に情報を取得できる状態を整えようとしています(図1)。従来型のFAQが、以前にも増して重要になっていると感じています。

図1 まず取り組むべき知識基盤の整備
図1 まず取り組むべき知識基盤の整備

樋口 AIが回答するからこそ、その根拠となるFAQが重要になるわけですね。一方、ベネッセコーポレーションでは、ナレッジ全体の管理の仕方から見直しを進めていると聞いています。

明石 すべてのコンタクトチャネルで利用するナレッジを、「どうやって一元管理するか」という視点で考えています。従来は、キャンペーンや教材などの情報が届くと、まず電話対応用のナレッジを作り、それをFAQ担当やチャットボット担当が参照して、それぞれのコンテンツとして作り直していました。人手で実施していたため運用負荷が高く、抜け漏れも発生していました。

 そこで、ナレッジオーナーを置き、まずAIが読みやすいよう構造化した「マスターナレッジ」を作る仕組みの構築に着手しました(図2)。これをベースに、プロンプトを介して電話、FAQ、チャットボットなど、各チャネル向けのナレッジを生成する考え方です。情報の均一化、更新の高速化、管理工数の削減を狙っています。

図2 マスターナレッジ起点のナレッジマネジメント構築
図2 マスターナレッジ起点のナレッジマネジメント構築

人に求められる
ナレッジ整備と任せる判断

樋口 両社に共通するのは、AI活用を進めるほど、その土台となるFAQやナレッジ、つまりコンテンツの整備が重要になるという点です。一方で、AIは非常に速いスピードで進化しています。FAQを運営する側にも、技術を理解し、どこまでAIに任せるかを判断する力が必要になりそうです。

小松 まさにそうです。AIに最も期待しているのはスピード感である半面、それが導入の難しさにもつながっています。企画してからリリースするまでの間に、もっと優れた技術が出てきている可能性があるため、今の延長線上だけで考えてしまうと、リリース時にはチープ化(価値の低下)してしまう恐れがあります。

 また、私たちユーザー企業側も学ぶ必要があります。ベンダーだけが新しい技術や用語を理解している状態では、対等に議論できません。FAQやAI活用の方向性を自分たちで判断するためにも、組織として共通言語を持つことが重要です。

明石 AIはあくまで手段と考えています。「AIなら何とかしてくれる」と、丸投げしても質の高いアウトプットは望めません。人間がリテラシーを持ち、どの領域をAIに任せるのかを判断する必要があると考えています。

樋口 使う側が確かなAIリテラシーを持つべきという点で共通していますね。

明石 技術革新のスピードが上がるにつれて、新たな課題も顕在化しています。新しい高機能モデルを採用すれば性能は向上しますが、それに比例してトークンコストも増大します。結果として、ROI(費用対効果)が立ちにくくなりつつあり、使う側としてコストと性能のバランスをどう取るかが重要になってきていると感じます。また、SaaS型のFAQシステムにも生成AI機能が増えていますが、中身がブラックボックスになりがちな点にも注意すべきです。ベンダー側には、「AIをどのような考え方で実装しているのか」を、説明してもらう必要があると感じています。

座談会の様子

AIリテラシー高める
「導入→試す→直す」

樋口 つまり、これからのFAQ運営においては、AIリテラシーを組織の共通理解として持ち、「何をAIに任せ、何を人が担保するか」という設計をすることが重要になるわけですね。では、そのような取り組みをする企業は、どこから始めるべきでしょうか。

小松 まずは「試してみる」「使ってみる」ことだと思います。組織として体験し、学習することが重要です。最初から顧客向けに使わず、社内向けの用途で始めて、間違いや課題を洗い出す。UAT(ユーザー受け入れテスト)には、現場のオペレータにも参加してもらい、「導入して、直して、また試す」の繰り返しをすることによって、組織全体のAIリテラシーが高まります。

樋口 AIに実際にFAQやナレッジを使わせてみることで、コンテンツ側の課題も見つけやすくなるわけですね。

明石 AIO(AI Optimization)やLLMOといった新しい言葉やテクニックに、過度に振り回されないことが大事です。FAQもナレッジも、結局はコンテンツです。ユーザーにとって「わかりやすく、読みやすく、使いやすいコンテンツ」をきちんと作るという原理原則は変わりません。AIが読み取りやすくなるための工夫は必要ですが、小手先の最適化を追うのではなく、まず質の良いコンテンツを作る。そのことが、結果的にAIにとっても使いやすいナレッジにつながると考えています。

樋口 AI時代だから特別なFAQを作るというより、AIの登場によって、FAQの本質が改めて問われているのかもしれません。誰に、何を、どう伝えるのかを明確にし、正確で分かりやすい情報を作る。「人が読む」FAQの品質を突き詰めることが、そのまま「AIも読む」時代のFAQにつながっていくのだと思います。

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会員限定2026年10月20日 00時00分 公開

2026年10月20日 00時00分 更新

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