コラム
第21回
聞き取りやすく感じのいい声は重要です。しかし、コールセンターの現場でぜひ身につけてほしいと思うのが、実はその逆の技術。「声を足す」のではなく、「声を引く」ワザです。
電話では、相手の表情が見えません。そのためオペレータは、沈黙が怖くなります。「何か言わなくては」「間を空けてはいけない」「明るく話し続けなくては」──そう思うほど、説明が長くなり、語尾が伸び、相手が話すタイミングまで奪ってしまいます。
ところが、お客様が本当に求めているのは、オペレータがたくさん話してくれることではありません。「ちゃんと私の話を受け取ってくれた」と感じることです。そこで重要になるのが、「声の余白」です。
例えば、お客様から、「商品が届いたんですが、注文したものと違うんです」と言われたとします。ここですぐに、「大変申し訳ございません。確認いたしますので、ご注文番号をお願いいたします」と返す。これは、間違いではありませんが、その前にほんの一瞬、「……はい」と相手の話を受け止めるだけで、印象はかなり変わります。
この「はい」は、単なる相づちではありません。「あなたの話を聞きました」という、声による受信確認なのです。電話では、この“受信したことを伝える声”が非常に重要です。
もう一つ意識してほしいのが、語尾です。「確認いたしますので、少々お待ちいただけますでしょうか?」と、最後まできれいに言い切ろうとすると、かえって硬く聞こえることがあります。それよりも、「確認いたします。少々お待ちください」と、必要なところで一度声を切る。この「切る」という技術が、電話では大きな意味を持ちます。声を切ることで、言葉が整理されます。そして相手にも、「ここまでが一つの情報なんだ」と伝わります。つまり、聞き取りやすさは、声量だけで作るものではありません。「どこで声を終わらせるか」でも作ることができるのです。
「沈黙が怖い」というオペレータは少なくありません。しかし、すべての沈黙をなくす必要はありません。お客様が話し終えた直後に、ほんの一拍置く。重要な情報を伝えた後に、少し間を置く。相手が考えているときには、先回りして話さない。この“余白”があることで、お客様は自分の言葉を整理できます。
オペレータ自身にもメリットがあります。一呼吸置くことで、相手の言葉を正確に受け止め、次に何を伝えるべきかを整理できるからです。つまり、間をつくることは、会話のスピードを落とすことではなく、会話の精度を上げることでもあるとも言えます。
最後に、すぐに実践できる方法をご紹介します。① お客様が話し終わってからすぐに話し始めず、一拍置いてから返答する(0.5秒待つ)、② 「確認いたします」「少々お待ちください」のように声を切り一文を短くする、③ 相づちは「はい」と一度、落ち着いた声で受け止める、の3つです。「どこで声を止めるか」に、ぜひ注目してみてください。
この「引き算」ができるようになると、「この人は私の話をちゃんと聞いてくれている」と感じさせる声へと変わっていきます。

会員限定2026年10月20日 00時00分 公開
2026年10月20日 00時00分 更新
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