実践編
第6回最終回
「気づけば、できていないことばかり指摘してしまう」──そんな悩みを抱える管理者の方も多いのではないでしょうか。「コールセンター大好き人間」を増やすために、最後にお伝えしたいのが「褒める文化」の重要性です。褒めることはオペレータの成長を促し、職場の雰囲気を前向きに変えます。今回は、現場に「褒める文化」を根づかせるための考え方と実践のポイントをお伝えします。
これまで「コールセンター大好き人間」を増やすためのさまざまな取り組みを紹介してきましたが、最終回ではその極意を伝えたいと思います。それは、コールセンターに「褒める文化」をつくり、定着させることです。
褒める文化のあるコールセンターは、入った瞬間にすぐに分かります。オペレータがみんな笑顔で、生き生きと仕事をしているからです。その影響は応対品質や離職率にも表れてきます。褒める文化のあるコールセンターは、応対品質が高く、離職率も低い傾向にあります。
今は、強みを伸ばしながら人を育てるマネジメントが求められる時代です。コールセンターにおいても、前向きに挑戦できる環境づくりが重要になっています。
一方で、「厳しく指導することで人は育つ」という考え方に慣れている管理者の方もいるかもしれません。しかし、自分が受けてきた指導をそのまま当てはめるのではなく、今の時代や相手に合わせて、言葉や育て方をアップデートしていくことが大切です。それこそが、上に立つ人間に求められる姿勢ではないでしょうか。
もちろん、褒める文化は一朝一夕にできるものではありません。組織に根づくまでには時間がかかります。ですが、トップが変われば、コールセンターは必ず変わります。管理者であるセンター長やSVが、良いところを見つけ、褒めることから始めていきましょう。その積み重ねが、いずれ文化となるはずです。

私が人の強みを見ることを大切にしているのは、自分自身、できる部分を認めてもらえたことで前向きになれた経験があるからです。
外資系銀行のコールセンターでオペレータとして働いていたときのことです。研修の内容も、端末に表示される内容もすべて英語でした。英語が苦手だった私は、まったくついていくことができませんでした。この仕事を続けられるのか自信をなくしかけていたときに、トレーナーの方に「英語を理解できていないだけで、仕事ができる人なのは分かっているからね」と声を掛けてもらえました。
できないことを責めるのではなく、できるところを見てもらえたことが本当に嬉しくて、心の底から頑張ろうと思えました。それまでは、英語が理解できないことが恥ずかしく、同僚にも質問ができずにいました。しかし、その言葉をきっかけに、「この単語の意味を教えて」と気兼ねなく聞けるようになり、一年後にはトップの成績を出せるまでに成長できました。
このときの経験から、私は人の良いところ、強みを見つけるようにしています。人を育てる立場になると、どうしてもできないことに目がいってしまいがちです。しかし、できないことを責めるのではなく、褒めて強みを伸ばしていくと、本人の中に「やればできる」という感覚が生まれます。すると、苦手なことにも前向きに取り組めるようになり、少しずつ改善されていくのです。欠点を直そうとするよりも褒めて強みを伸ばすほうが、成長スピードは速くなります。
ただし、褒めるといっても、何でも褒めればいいわけではありません。褒めるという行為は、相手に関心を持っていることの表れでもあります。「抑揚がついて聞きやすくなった」「前より落ち着いて話せるようになった」というように具体的に伝え、「見守っている」「成長を応援している」という気持ちを伝えることが大切です。
また、場所の使い分けも必要です。手本となるようなもの、例えば素晴らしい電話応対ができたときは、みんなの前で褒める。一方で、本人の努力や小さな成長のときは、個別に褒める。この使い分けを誤ると、褒めたことで周りからの嫉妬を生み、ときにマイナスに働くこともあります。
年上の部下や、少し気難しいタイプには、一歩へりくだるのも有効です。「自分は苦手だけど、〇〇さんはできていますよね」「さすがですね」と、自分が苦手なことを一言添えるだけで、受け取り方は大きく変わります。
管理者はモチベーターとして、自分の言葉の重みや意味を考えて発言しなければなりません。どういう言葉を掛けたら相手のためになるのか、心に響くのかを常に意識することが大切です。
褒める文化を根づかせるためにも、管理者の皆さんには、相手のやる気を引き出す伝え方を学んでほしいと思います。例えば、コールセンター向けのeラーニングサービス『BIZTEL shouin』では、管理者向けの研修も多数提供しており、やる気を引き出す褒め方や、注意・指導をする際のポイントも具体的に伝えています。私も監修に携わっており、導入したセンターの管理者から「忘れないように何度も見返している」という声もいただいています。基本をしっかり身につけ、ぜひ褒める文化を根づかせてください。
私はコールセンターで働き、正しい言葉遣いを覚え、人と話をする楽しさを知り、自分の世界が大きく広がりました。この仕事が私の人生を豊かにしてくれたことは、間違いありません。今、コールセンターで働いている皆さんにとっても、ここでの学びや経験が、人生をより良いものにしてくれる。そんな仕事となることを心から願っています。
会員限定2026年07月20日 00時00分 公開
2026年07月20日 00時00分 更新