金融センター利用者のAI受容度調査

2026年6月号 <FOCUS/トピックス>

トピックス

「定型業務の自動化」「オペレータ支援」は許容範囲
金融コンタクトセンター利用者のAI受容度調査

──三井情報

現在、あらゆる産業で導入盛んな生成AI。銀行、カード会社をはじめとした金融機関も例外ではなく、コンタクトセンターでの活用も進んでいる。一方、金融機関のセンターを利用する消費者は、これをどう受け止めているのか──。三井情報はこのほど「金融企業カスタマーセンター利用者のAI受容度調査」を実施。AI活用に対する意識や利用条件が浮き彫りになった。調査結果の主要ポイントをまとめる。

 日本銀行の調査によると、金融機関では生成AIの活用・試行が広がっており、その効果は一定程度、評価されている。一方で、実際に金融機関のサービスを利用する消費者が、生成AI活用をどのように受け止めているかに関する定量的なデータは限られており、とくにコールセンター/カスタマーセンターに焦点を当てた調査は少ないのが実情だ。生成AI活用に関する規制・ガイドラインの整備が進むなか、利用者の声を踏まえた「責任あるAI活用」や「人間中心の設計」は、金融機関の持続的な信頼確保において重要性が増している。

 こうした状況を背景に、三井情報は、金融機関におけるAI活用検討の基礎情報を提供することを目的に「金融企業カスタマーセンター利用者のAI受容度調査」を実施、このほど結果レポートを公表した。

 「センター利用者のAI受容度・抵抗感・受容条件を可視化することで、センター業務におけるAI利活用のロードマップ設計の一助となるよう実施しました」と、調査を主導したNEXT1営業本部 CX第一営業部 第一営業室 マネージャーの倉茂美華氏は説明する。

利用窓口は圧倒的に「電話」
デジタルチャネルも増加の兆し

 調査対象は、過去1年以内に金融機関(銀行・証券・クレジットカード・生損保)のカスタマーセンターへ問い合わせた経験があり、「生成AI」という言葉を認知している、全国の20代〜70代の男女(各年代ごとに均等に割付回収を実施、高年齢層のサンプルも十分に確保)。調査期間は2025年12月から翌年1月で、1781件の有効回答を得た。なお、生成AIへの印象は、ポジティブ評価が約6割でネガティブ評価が約1割。どちらともいえない中間層は約3割を占める。

 図1は、金融機関カスタマーセンターの利用実態だ。過去1年以内に問い合わせた金融機関は、カード会社と銀行が多く、次いで生命保険、証券、損害保険と続く。利用したチャネルは電話が全体の7割と圧倒的に多く、Webフォームやチャット、メールなどのデジタルチャネルは2割程度となっている。業態とチャネルの組み合わせでは、各業態×電話が上位を占めるなか、カード会社×Webフォームが5位に食い込んでいる。今後、デジタルチャネル活用も増えていくことが予想される。

図1 金融機関カスタマーセンターの利用実態
図1 金融機関カスタマーセンターの利用実態

定型業務のAI受容度は約8割
利用促進のカギは不安要素払拭

 図2は、問い合わせ内容別に、どの程度AI応対が許容できるかを聞いた結果だ。残高照会や手続案内は「AIだけでOK」「まずAIでOK」と受容度が高い(約75〜80%)。一方、不正利用疑いなどの緊急性が高い相談や商品内容説明などは、「最初から人」を望む声が多く、内容の複雑さや相談要素の有無によって、AIと人の使い分けが求められる。また、AIによる早期解決と多少待っても人での対応を希望するかを聞いた結果では、約6割がAIですぐに解決できるならAIがよいと答えている。

図2 問い合わせ内容別のAI受容度マトリクス
図2 問い合わせ内容別のAI受容度マトリクス

 「照会や手続きなど定型的な業務はAIですぐに解決し、反対にトラブル対応や相談などの非定型的な用件は時間がかかっても有人対応を望む人が多いです」(倉茂氏)

 なお、同調査は実際にAI応対を経験したわけではなく、あくまで問い合わせ内容別にAI応対でもよいかを4段階で聞いた結果だ。実際の運用では、サービスを提供するチャネル別に回答精度や速度などをしっかり設計し、受容度を高めていく必要がある。

 図3はAI応対への不安要因を聞いた結果だ。「自分の状況への理解不足」「トラブル発生時の責任の所在」「誤った案内をされる」「個人情報の利用範囲」「会話内容の利用・学習範囲」などが挙がる。これらの不安払拭が、AI応対の利用促進のカギといえそうだ。

図3 AI応対への不安要因ランキング(複数回答)
図3 AI応対への不安要因ランキング(複数回答)

 これに関連して、「応対者がAIか人かを事前に知りたい」と望む人は8割以上と非常に多い。また、「有人対応を希望すれば、すぐに切り替わると安心」という人も約6割を占める。AI活用の推進において、AIであることを隠さないこと(透明性)と、いつでも人に頼れる導線の確保(選択権)は、顧客体験(CX)を損なわないための必須要件といえる。

 以上を踏まえて、「一次応対はAIが行うことを明言し、定型業務ならその場で完了、非定型業務ならすぐに有人に代わるといった業務設計も十分に考えられます」と、NEXT1営業本部 CX第一営業部 副部長の前西理絵氏は考察する。

バックエンドでのAI活用は容認
会話データ分析にも理解示す

 直接、顧客応対を行わないバックエンド業務でのAI活用の受容度についても調査している。

 図4は会話データの分析について利用目的別に受容度を聞いた結果だ。トラブル防止などの「録音・後から確認」の受容度は約8割と非常に高く、「応対品質向上・教育」「商品・サービス改善」も7割強と比較的受け入れられやすい。一方、「商品・サービス提案」での利用は、他と比べて「どちらともいえない」の割合が高く、肯定的意見も相対的に低いため、導入には丁寧な説明が求められそうだ。

図4 会話データの分析:利用目的別の受容度
図4 会話データの分析:利用目的別の受容度

 オペレータがAIの支援を受けながら応対する場合の印象も聞いている(図5)。好意的な印象を持つ人は57.3%と約6割を占め、反対に否定的な意見は15.2%だった。「AIが人を助ける」ということは、利用者にとっても「正確で迅速な回答が期待できる」ため、安心材料として機能する可能性が高い。

図5 オペレータ支援AIへの印象
図5 オペレータ支援AIへの印象

 「AIに直接応対されることに心理的な抵抗感を持つ人は一定数います。しかし、自身に相対しているのはオペレータで、その後ろでAIが活用されて、問い合わせが早く正確に解決できるのであれば、自分にとってメリットだと考える人が多いようです」(倉茂氏)

「選択権」と「透明性」の担保
AI利用意向を高める2つの要点

 今後、金融機関のカスタマーセンターでAI導入が進んだ場合の利用意向を確認した(図6)。

図6 今後の利用意向
図6 今後の利用意向

 「積極的に利用したい」は13.8%と1割強にとどまったが、「利用したい」(38.9%)を含めると、過半数がポジティブに回答。条件次第で受容される土壌がある。

 では、「AI応対でも使いたい」と思える条件とは何か。調査結果のトップ5を図7に示す。

図7 「AI応対でも使いたい」と思える条件:トップ5(複数回答)
図7 「AI応対でも使いたい」と思える条件:トップ5(複数回答)

 最も多かったのは「いつでも有人オペレータに切り替えられる」で61.7%。次いで「問い合わせ内容に応じて、AIか人かを自分で選択できる」が58%だった。以下、「AIが対応できる内容の範囲が、あらかじめ示されている」(37.2%)、「会話内容の記録やデータ利用の目的が事前に説明されている」(28.6%)、「会話内容は個人特定されない形でのみAI学習に使われると明示されている」(24%)と続く。このことから、AI応対の利用促進には、顧客自身がいつでもAIか人かを選択できる「コントロール権(選択権)」の設定と「対応範囲とデータ利用範囲の透明性」の担保が重要と考えられる。これらを含む業務設計により、AI応対への心理的なハードルが下がり、利用率の向上が期待できる。

 図8は顧客属性別の今後の利用意向をまとめたもの。年代別に見ると、20代〜40代は「積極的に利用したい」層が2割前後で推移する一方、年代が上がるにつれ「どちらともいえない」層が増加。50代以降は慎重姿勢が見られるものの、強い拒絶反応は限定的だ。また、利用チャネル別では、チャットやメールなどのデジタルチャネルを利用する層はAIへの抵抗感は薄い。電話や店頭・窓口といったオフラインチャネル利用層は受容度は低いものの、半数は利用意向がある。生成AI好感度別では、AIに非常に良い印象を持つ層は8割以上が利用に前向き。反対に悪い印象を持つ層はほぼ利用を拒否しており、相関が極めて強い。

図8 顧客セグメント別の今後の利用意向
図8 顧客セグメント別の今後の利用意向

 こうした顧客属性によっても利用意向や受容度はさまざま。自社の顧客がどのような属性なのかを見極めた業務設計が必要といえる。

 以上のことから、今後、金融企業のカスタマーセンターは、AI導入をどのように進めていくべきか。「まずは顧客と相対しないバックエンドでオペレータ支援を行い、次に顧客と直接相対する定型業務の対応、最後に非定型業務の対応というのがセオリーでしょう。ただ、コンタクトセンターには人手不足という課題があります。一足飛びに自動化を進めて生産性を高めたいという企業もあると思います。いずれの場合も、自社センターのAI活用の“現在地”と“目指す姿”を把握し、利用者の受容度を考慮した導入計画が重要です」と前西氏は強調する。

 コンタクトセンター運営業務において、AIは生産性向上とCX向上の両立という経営課題の解決に欠かせないものとなっている。本調査からは、生成AI導入にあたっては、先進技術と人間の温度感のバランスを保ち、顧客との信頼関係を維持しながら運営を最適化することが重要といえそうだ。

このコンテンツは会員限定です。
限定コンテンツを見るには無料会員登録が必要です。

お申込み

会員限定2026年05月20日 00時00分 公開

2026年05月20日 00時00分 更新

その他の新着記事

  • スーパーバナー(P&Wソリューションズ)

●コールセンター用語集(マネジメント編)

●コールセンター用語集(ITソリューション編)

記事検索 

購読のご案内

月刊コールセンタージャパン

定期購読お申込み バックナンバー購入