AfterCall~電話の後で 第168回

2026年4月号 <AfterCall〜電話の後で>

山田祐嗣

コラム

第168回

問い合わせの難度上昇で早期離職が課題
社内ヘルプデスクを構築しスキル向上を支援

 近年、新入社員の離職率の高さが問題視されています。2025年に厚生労働省は、2022年3月に大学を卒業して就職した人のうち、3年以内離職率は3割強と発表しました。この状況に、各企業は若年層の早期退職を防ぐために、希望配属先への配属を約束したり、メンター制度を導入したりと手を尽くしています。サポート業界の離職率はさらに高く、1年以内で30〜50%に達することも珍しくありません。数年前から責任者の方々は、皆さん口をそろえて「採用が難しい」「離職率の改善が難しい」ことを課題にあげています。そこで、問い合わせ件数を減らすために、各社Webサイト上のFAQやシミュレーションなどのセルフサポートを強化することよって、顧客がサポートセンターに連絡せず、自ら解決に向かえるように企画しています。顧客は、簡単な質問はWebサイトなどで自己解決をしますが、それでも解決できなかった場合は、サポートセンターに問い合わせするようになります。あるサポートセンターでは、セルフサービスを充実したことで、難しい質問の比率が上がり、そのことがサポート担当者の精神的な負担になり始めたと言います。

 以前、私が働いていた企業のサポートセンターでは、新人のうちは住所変更などの簡単な事務処理から対応していました。そのうちに、顧客と話すことにも慣れ、計画的な研修を積み重ねて、難しい問い合わせにも対応できるようになりました。いきなり複雑な問い合わせを受けると、自信を喪失してしまう新人サポート担当者が発生します。しかし、簡単な疑問点の解消や事務手続きを顧客自らが行うようになると、いきなり難しい問い合わせを受ける比率が増えるので離職者が増えてしまいます。サポート業界では、従来から離職率に課題を抱えています。そこで、多くの企業が、KCS(ナレッジ・センター・サービス)などのナレッジ管理手法を用いたり、サポート担当者と面談を頻繁に行ってメンタルケアを施すことで、従業員満足度を向上させ離職率の改善を図ってきました。サポート担当者が顧客対応をしているときに、あらかじめ用意されたナレッジを検索し、それをもとに回答できれば精神的な負担は大幅に軽減されます。

 冒頭の厚労省の発表を見て、私はコールセンターの離職率対策の1つであるナレッジを社員向けに構築することが重要になると感じました。日本企業の一部は、依然として終身雇用を前提に社員の育成システムを構築しています。欧米企業に比べて、社員向けナレッジを構築したり、ヘルプデスクを強化することをコストと見ています。先輩社員から学んだり、前任者から引き継ぎを受けることが前提のためです。欧米企業は上司や先輩社員が突然、転職したりリストラされるため、こうした仕組みを整えることは当たり前です。このような時代だからこそ、日本企業も社員用ナレッジの構築や、ヘルプデスクを強化することで、社員の精神的な不安が解消し離職率が下がるなど、従業員の流動化の備えになるのです。

PROFILE
山田祐嗣
HDI国際認定資格取得者:HDIイベント、認定トレーニング、格付けベンチマーク、メンバーネットワーキング、実態調査などを通じてサポート業界に価値を提供し、サポートセンターのサービス品質向上および地位向上を目指し活動をしています。

2026年03月20日 00時00分 公開

2026年03月20日 00時00分 更新

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