AfterCall~電話の後で 第166回

2026年2月号 <AfterCall〜電話の後で>

山田祐嗣

コラム

第166回

国策転換、アクセント問題、離職率対策
依存がもたらすフィリピンの課題

 今年もフィリピンの英語学校に行きました。フィリピンのコールセンターのサポート担当者は、英語力が非常に高いことで有名ですが、実は、英語学校の講師にはコールセンター出身者が多くいます。

 フィリピンには、米国企業のカスタマサポートをアウトソーシングで受ける企業が多く、電話のサポート担当者は大学卒業者の人気職種のひとつにもなっているといいます。しかし、勤務時間帯が夜間のシフト制だったり、米国の顧客がサポート担当者に対して厳しい話し方をするなど、体調や精神面で健康を維持することが難しいという課題もあります。大手BPOで働いた経験のある、人事部門出身の英語学校の講師は、「米国向けのサポート担当者の賃金は、同じ会社の管理部門で働く社員よりもはるかに高い」と言います。一方、「給与は大卒の平均賃金の数倍と高額。しかし、米国向けの夜勤の仕事は肉体的にも精神的にも厳しい」と語る人が多いのも事実です。

 話を英語学校に戻します。私の通う学校では、留学前に講師の希望を出せるため、コールセンターの勤務経験がある講師を希望します。教材も、コールセンター関連のニュースや記事をベースに作成してもらっています。同国では、コールセンターやBPO企業が経済に与える影響が大きく、しばしばニュースで取り上げられます。最近の話題としては、米国の政権が「コールセンターを米国内に戻す」法案を検討していることがあります。法案が通過した場合の影響や、実用化が進む生成AI活用の進展が将来に与える影響などです。米国人を顧客とするコールセンターでは、アジアのアクセントが強い英語を話すと、相手にされないことがあるそうです。そのため、新規採用されたサポート担当者は、徹底的に米国英語の話し方の訓練を受けます。また、米国では、話し方の地域差が大きいため、各地域の話し方を使い分けて対応するセンターもあります。フィリピンの国内線の英語アナウンスなどは、英語に慣れた人でも聞き取りが難しい場合もあるため、英語を主要言語にするフィリピンの人でも、米国向けの会話トレーニングは必要なのでしょう。

 日本のコールセンターでは、サポートをする地域ごとに話し方を変えるといった発想はあまり耳にしません。しかし、顧客との心理的な距離を縮め、共感や寄り添いで顧客体験を向上させる取り組みは変わらないと思います。そして、日本のコールセンター同様、フィリピンも離職率対策といった共通の課題もあります。

 実際に、数千席をひとつの建屋で運用しているフィリピンのサポートセンターを見学すると、その規模やファシリティの素晴らしさに圧倒されます。しかし、実際に電話を受け付けているサポート担当者自身が抱える課題は、精神面や体調面のコントロール、業務知識の習得速度の向上など、日本と共通している課題も多く、それらの対応方法は参考になります。一度、訪問して、ご自身の目で確かめることをお勧めします。

PROFILE
山田祐嗣
HDI国際認定資格取得者:HDIイベント、認定トレーニング、格付けベンチマーク、メンバーネットワーキング、実態調査などを通じてサポート業界に価値を提供し、サポートセンターのサービス品質向上および地位向上を目指し活動をしています。

2026年01月20日 00時00分 公開

2026年01月20日 00時00分 更新

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