市界良好 第166回

2026年2月号 <市界良好>

秋山紀郎

コラム

第166回

学びの場

 優れた生成AIサービスを無料で利用できることはありがたいと思う。これまでは、ネット検索結果を取りまとめる作業が多かったが、その割合が減少した。検索結果を分析評価する業務から、生成AIサービスによって集約された情報の裏取りに代わっている。確かに仕事の効率性も品質も向上したと思うが、周囲の期待値も上がってしまったので、忙しさは変わらない。生成AIによって、仕事に余裕が生まれたとは決して言えない。むしろ、最近は各社ネットサービスのセキュリティ強化が進み、ログイン認証方法が複雑化したことから、業務効率が下がった実感がある。また、辞書のようなサービスやニュースサイトでは、広告を見ないと次の画面に進めないものや、Closeボタンがどこか分からないものが増えてきた。ダークパターンのようにも感じる。このようなユーザビリティを下げるオーバーレイ広告は逆効果だと思うし、スムーズな仕事の妨げだと感じることがある。

 このような環境下でチャットやメールなどの多様なチャネルを通じて社内外から連絡が入る。中には迷惑メールやフィッシングもあり注意しながら閲覧する。そして、隙間なくWeb会議が設定されているケースも多くある。そう考えると、情報量の多さとその処理に追われる日々が続いているのかもしれない。流れ込む情報を処理することに終始する毎日になっていないだろうか。

 ここまでネットサービスが隙間なく入り込む前は、会議でじっくり戦略を練ったり、トラブル発生を起点に関係者で原因を考察したりする場面も多かったと思う。報告書を作成したり、受領して吟味する機会もあった。他者の意見との違いを認識し、それを尊重するとともに、そこから多くを学んだものだ。時には、会議で指摘されたり怒られたりすることで、新しいことに気づくことも重要だ。最近は、パワハラを恐れて、人前で指摘することや意見の相違を議論することを避ける傾向があるという。そして、このような振り返りより、前に進むことが善とされ、優先され過ぎている気がする。議論を重ねたり、じっくり考えたりする時間を取っていない人が多いのではないだろうか。予定が過密であるがゆえに、この問題を実感していない人もいるだろう。

 最近開催したセミナーでは、テーブルごとに5〜6人単位で社外の人々と話し合いをする機会をつくった。「VOC活動で苦労していることは何か」「自社のコンタクトセンターの良さとは何か」といったテーマで参加者が話し合うワークショップ形式である。通常のセミナーでは、登壇者が先進的な内容を説明し、伝えることが多い。しかし、ワークショップでは、センターのSVクラス、ベンダー担当者など、同じようなポジションの参加者が能動的に活動し、意見交換や共同作業をする。先進事例を誰かが話しているとは限らず、共感を得るだけの時間になりそうなのだが、実は参加者の満足度が非常に高い。他者の意見を踏まえて、自分も見つめ直す良い機会になっているからだ。普段、このような機会が少ないことが影響しているのだろう。立ち止まって考えて学ぶ時間を作らないと、本質的な理解や判断力が次第に失われてしまう。

PROFILE
秋山紀郎(あきやま・としお)
CXMコンサルティング 代表取締役社長
顧客中心主義経営の実践を支援するコンサルティング会社の代表。コンタクトセンターの領域でも、戦略、組織、IT、業務、教育など幅広い範囲でコンサルティングサービス及びソリューションを提供している。
www.cxm.co.jp

2026年01月20日 00時00分 公開

2026年01月20日 00時00分 更新

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