コールセンター現場力向上の鍵 即実践できる採用・定着マネジメントの考え方 第1回

2025年7月号 <コールセンター現場力向上の鍵 即実践できる採用・定着マネジメントの考え方>

栗栖俊輔

実践編

第1回新連載

共通の目的、協働意思、コミュニケーション
マネジメントが留意すべき“3つの要素”

雇用属性、年齢、経歴の違いはもちろん、就労観やキャリア観などの「前提」が異なれば、業務の見え方や捉え方は異なり、自身の役割や責任の認識にもズレが生じる。多種多様な人材が集まるコールセンターは、そのズレが生まれやすく、業務効率や応対品質の低下といった、組織全体の課題の原因となっていることもある。このズレを解消するためのマネジメントとして、3つの要素を解説する。

PROFILE
リンクアンドモチベーション
EMカンパニー カンパニー長
栗栖俊輔
一貫して採用領域のコンサルティング・アウトソーシングに従事。近年は採用および入社後の定着・活躍支援を行うオンボーディング事業の責任者を経て、2024年より、採用コンサルティング事業の責任者に就任。

 「対応品質がばらついている」「非正規社員の意欲や能力の高め方が分からない」「スタッフの不満や要望に対応してもキリがない」「求める人材が集まらない」

 本連載では、こうしたコールセンターにおいてよくある課題の解消に向けたマネジメントや採用の考え方を紹介する。第1回は、組織全体の課題を解決するために必要な視点を取り上げる。

多様性が生む役割・認識のズレ

 コールセンターは、多様な雇用形態、かつ年齢や経歴も多岐にわたる人材が働く職場だ。

 調査によると、8割以上のセンターで非正規社員が過半数を占めているという(日本コンタクトセンター協会『2020年度 コールセンター企業 実態調査』)。年齢構成についても、「21〜30歳が50%、31〜40歳が19%、41〜50歳が16%、50代以上が8%、18〜20歳が7%」と、幅広い世代が混在しているという調査結果もある(スタッフファースト調査記事 2021年8月5日の情報より)。

 こうした人材の多様性ゆえに、就労観やキャリア観などの「前提」が異なりやすく、役割や責任の認識にもズレが生じる。結果、業務効率の低下や対応品質のばらつきといった課題が生じている。

 この要因の1つには「視界の個別性」がある。視界の個別性とは、立場や職務によって業務の見え方や捉え方が異なることを指す。たとえば、管理職は組織全体を俯瞰して長期的に捉える一方、オペレータは日々の顧客対応に集中している。この視界の違いこそが、さまざまな課題へと発展する。

「視界の個別性」解消の3要素

 課題解消には、オペレータ1人ひとりが職場を「1つの組織」として捉えられるよう、適切なマネジメントを行うことが重要だ。オペレータからは、「電話応対を担う個人の集まり」として見えがちだが、実際は組織として一体となって業務を担っている。その認識を醸成することが求められる。

 そのために押さえるべき要素が、「共通の目的」「協働意思」「コミュニケーション」の3つだ。

 まず「共通の目的」とは、組織として目指すべきゴールを指す。次に「協働意思」とは、共通の目的の実現などの組織活動に貢献することへの、個々人のモチベーションととらえることができる。そして「コミュニケーション」は、共通の目的と協働意思を接続させ、組織としての目的達成と個々人の協働意思をリンクさせる役割を持つ。これらは、米国の経営学者チェスター・バーナード氏が提唱した「組織成立の3要素」であり、いずれか1つでも欠ければ、組織は本来の力を発揮できない。

図 組織成立の3要素
図 組織成立の3要素

①共通の目的

 共通の目的が欠けると、スタッフは各自の判断で業務を進め、「顧客のために尽くす人」と「作業としてこなす人」が混在しやすくなるため、組織として「何を目指すのか」を明確にすることが重要だ。応答率や平均対応時間といった定量目標(KGI・KPI)だけでなく、ミッションやビジョンといった定性目標も掲げる必要がある。

 定性目標が浸透すれば、現場の判断基準が揃いやすくなり、達成に向けた工夫も生まれやすくなる。

 たとえば、「“声”を聴き、“価値”に変える」というビジョンが根づいた職場では、トークスクリプトをただ読むのではなく、顧客の声のトーンや沈黙、言葉の背景にある感情を汲む姿勢が育つ。また、顧客の声をもとに商品・サービスの改善や業務設計に生かす仕組みも自然に機能する。

②協働意思

 協働意思が欠けると、「自分は言われたことをやっているから問題ない」といった受け身の思考に陥りやすくなる。確かに業務には個々の役割があるが、組織として一体で仕事を担っている以上、この意識では、全体の生産性やサービス品質が損なわれかねない。

 こうした状況を防ぐには、メンバー同士のつながりを感じられる関係性の構築が重要だ。個々人の感情をケアし、協働へのモチベーションを高める工夫が求められる。

 たとえば、サンクスカードのような施策を通じて、感謝や称賛を伝え合う文化を育むことが効果的だ。承認欲求や親和欲求が満たされ、「一緒に頑張りたい」「誰かの役に立ちたい」といった前向きな気持ちが生まれやすくなる。

③コミュニケーション

 最も削減してはいけないのはコミュニケーションだ。コミュニケーションが不足すると、スタッフは「閉じた状態」で業務に向き合うようになり、「分からないことがあっても相談しづらい」と感じやすくなる。また、共通の目的が浸透しにくくなり、協働しようとする意識も育ちづらくなるため、視界の個別性が解消されにくい状況に陥る。コミュニケーションを「コスト」ではなく「投資」と捉え、意図的に設計・実践することが大切だ。

 たとえば、①共通の目的の浸透には、方針や背景を共有する場の設定や、マネジメントからの定期的なメッセージ発信が効果的である。②協働意思の醸成においては、サンクスカードのほか、 ミーティング、ランチ会など、相互理解と信頼を深める仕組みが有効だ。

 現場管理職は、これら3要素のどこに問題があるのかを正しく把握し、「なんとなく」ではなく「目的を設定して」施策に落とし込まなければならない。スタッフが「1つの組織」としての一体感を持てるような環境づくりを実現し、成果に繋げてもらいたい。次回以降は、「採用」「オンボーディング」「定着」と時系列に、現場で起きている課題とその解決方法を解説する。

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会員限定2025年06月20日 00時00分 公開

2025年06月20日 00時00分 更新

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