本誌記事 ケーススタディ jinjer

1年で人員倍増を可能にしたIT活用

Casestudy ケーススタディ

jinjer

1年間でカスタマーサクセス人員は約2倍!
「人材教育」を重視したITソリューション活用術

2021年に人材総合サービスのネオキャリアから新会社として独立すると同時に大型資金調達を実現、事業を急拡大させるjinjerは、クラウド型人事労務システム「ジンジャー」を提供している。カスタマーサクセスの人員も、わずか1年で倍増。急拡大するなかでメンバーを育成した手法、テックタッチによるスケールへの対応について方針を聞いた。

北浦健太氏
CSチーム本部長 北浦健太氏
大嶋 翔氏
シニアマネージャー 大嶋 翔氏

 人事労務システム「ジンジャー」は人事労務管理、勤怠管理、経費精算など複数機能をクラウドサービスとして提供。国内約1万8000社以上で導入されている。

 人事労務領域で複数機能(ツール)を持つ特性上、複数のプロダクトを導入し、管理機能を1つのベンダーでまとめる顧客が多いことから、カスタマーサクセス部門は、全プロダクトを一気通貫で対応する体制だ。導入企業数の増加に伴い、2022年以降で人員がおよそ2倍に急拡大している。

3組織に分業化して仕組みを整備
社内育成〜顧客支援を実現

 現在、カスタマーサクセス部門は、(1)ECS部、(2)CS部、(3)CS推進部の3つの組織で構成している。(1)のECS部の役割は、エンタープライズ(大企業)向けのオンボーディング、アダプションを担う。(2)のCS部は中小企業向けのオンボーディング、アダプション、エクスパンションを行うことを目的とした部門で、次の4チームで構成している。

・オンボーディングチーム:プロダクトの運用定着促進
・アダプションチーム:プロダクトの契約更新を促す
・エクスパンションチーム:現在導入しているプロダクト以外で、他のジンジャープロダクトの相乗効果・活用余地がないかを提案
・CXチーム:CSOps(オペレーションズ)に近い役割。オンボーディング、アダプション、エクスパンションメンバーのナレッジの収集と展開を行い、各メンバーの習熟度を向上し、業務効率化を図る

 一方、(3)のCS推進部はカスタマーサクセス部門全体のサポートや他部署との連携を行う。

 事業の急拡大に伴い、現在強化しているのがテックタッチだ。オンボーディングではクラウドサーカスの「Fullstar」を採用。社内の開発チームと連携して顧客のオンボーディング進捗度合いを段階分けし、その段階に合わせて必要な情報(コンテンツ)配信する方針だ。シニアマネージャーの大嶋 翔氏は「メールに対するお客様の反応率はそれほど高くありません。そこで、顧客のオンボーディング状態ごとに必要なコンテンツを想定し、ジンジャーの管理画面でポップアップ通知することを検討しています」と説明する。コンテンツはテキストでの解説に加え、動画も用意している。

ナレッジ基盤「ジンジャー辞書」
アップデートの工夫に余念なし

 人員増加に伴い負荷が増えるのが教育だ。試行錯誤を経て、現在は1カ月間の座学研修を経て、先輩メンバーが過去に行った商談動画を閲覧して人事労務領域の専門的な知識をインプット。そのうえで、先輩メンバーのフォローのもとで顧客のオンボーディング業務に携わり経験を積んでいる。その際、活用しているのはクラウド型eラーニングツール「AirCourse」と、ナレッジプラットフォーム「Qast」。Qastは、顧客からの問い合わせのなかでも解決が難しい内容を中心に、基本情報まで蓄積しており、「ジンジャー辞書」と呼び活用している。閲覧回数やナレッジ投稿回数などから“活用度合い”をランキングする機能もある。蓄積したナレッジの中からテストを作成し、メンバーにQast内で調べて解答してもらうことで、個々人の知識レベルを定期的に、半ば強制的にアップデートしている。将来的には、Qast内に蓄積されたナレッジを整理し、顧客向けFAQなどに活用する予定だ。

ナレッジプラットフォーム「Qast」の利用計画

ナレッジプラットフォーム「Qast」の利用計画
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 事業規模が急拡大している同社だが「今後は人員を増やすよりは、カスタマーサクセスの業務をより効率化し、今よりも生産性の高い組織を目指します」(CSチーム本部長 北浦健太氏)。そのひとつの手法として、初期設定をカスタマーサクセス部門で行い、顧客にはすぐに使える状態で提供することで、各プロダクトを利用するハードルを下げることも検討している。

 従来、カスタマーサクセスの主業務とされてきたオンボーディング、ナーチャリング(教育)の“常識”とは異なる手法だが、顧客体験の向上から継続率向上につながると見込んでいる。

 北浦氏は「お客様の満足するポイントをきちんと理解し、期待値の基準を超えることで、高い満足度を持ってもらい、継続的に使っていただける状態が理想です。サービス提供者としては当たり前の状態ではありますが、簡単ではないことです。だからこそ、実現し、本当に良いサービスとして提供していきたい」とカスタマーサクセス部門を起点とした包括的なソリューション提供のビジョンを説明する。

(2024年1月号 月刊「コールセンタージャパン」掲載)

 

2024年01月31日 18時11分 公開

2023年12月20日 00時00分 更新

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