ユーソナー
カスタマーサクセスのKPIというと、チャーンレートを思い浮かべがちだ。だが、それだけでは、部門としての貢献度を測れないと捉える企業も多い。独自の企業データベースをもとに、複数ソリューションを展開するユーソナーもその1社だ。同社のサクセス部門は、既存顧客との接点づくりに注力する点は他社と同様だが、最重要指標に、契約が継続されていれば得られたであろう利益の「逸失金額」を設定する特徴を持つ。
顧客データ統合ソリューション「ユーソナー」を筆頭に、「プランソナー」「mソナー」などをSFA/CRM/MAツールと連携し、企業の営業活動やマーケティング活動を支援しているユーソナー。
メインターゲットを、エンタープライズ企業に設定。1部門から導入を開始し、スケールを拡大していくことでグループ全体、そして子会社へと導入の輪を広げていく。
「ユーソナーは、データを提供するだけでなく、使うためのインタフェースも含めたソリューションを展開しています。ですから、より高度に活用いただくには、使い方をアシストする必要があります」と、執行役員で営業本部CSISグループ(G)の兼平 篤氏は説明する。
そのアシスト役を担うのが、図のCSISGだ。「導入支援からオンボーディング、ヘルプデスク、コールセンター、カスタマーサクセス(CS)、カスタマーサポート組織で構成しています」と兼平氏が言うように、“既存顧客との接点”の全般を網羅している。構成は、CS4名・インプリメンテーション11名の「導入支援」、カスタマーサポート4名の「顧客支援」などとなっている。
営業からインプリメンテーションチームが案件を引き継ぎ、オンボーディングまでを担当する。CSチームが、オンボーディングが完了したと判断すると、同案件を引き継ぎ、アダプションやアップ/クロスセルへと移行する。オンボーディング完了の判断基準は、「初期トレーニングが始まり、顧客の担当者が操作をすべて覚えた。または一定期間にソリューションを使用している状態などと条件づけています」(兼平氏)。この際、CSチームも、オンボーディングの一部をともに遂行することで、同チームが完了の判断を担っている。
カスタマーサポートチームは、電話とメールで問い合わせに応じる。兼平氏は、「CSチームも、電話応対を積極的に行うように業務を変更しました」と説明したうえで、「電話をかけてくるのは、緊急性が高い。もしくは、操作方法をじっくり聞きたいかなど、アダプションや、アップセルの素材となるコンタクトリーズンも多い。CSチームが電話に出ることが最適です」と語る。
CSチームの主要な役割は、オンボーディングがうまくいってない、もしくは、うまくいった、新しい機能が出たといった、顧客へのアプローチだ。さらに、ヘルスチェックにより、離反しそうな顧客を抽出し、コンタクトすることもある。顧客理解を進めるうえでも、操作に関するサポートの一部を担う価値は高い。
CSISGはKPIに、チャーンレート(解約率)も設定している。しかし、各ソリューションともに、チャーンは0.5%未満と非常に低い。
その理由を兼平氏は、「導入先にエンタープライズ企業が多いこと、一度利用いただけると、企業データの鮮度を保つためにも、使い続けるお客様が多いことが挙げられます。とくに、マスターデータを管理する重要性を理解いただけると、解約されにくいです」と解説。ただし、「クライアント数も増加していますから、0.5%未満といえども、損失額は決して小さくはない。ですから、契約が継続されていれば得られたであろう利益の『逸失金額』を最重要視しています」と続ける。
エンタープライズ向けのサブスクリプション・ビジネス全般にいえることだが、解約率のみを見ると、事業は好調としか捉えられず、現状に満足する傾向が強い。
その結果、「ペインポイント」の発見が遅れる可能性もある。“逸失金額”も指標化すれば、改善意欲も高まる。なお、算出方法は、「当期に解約した企業の、前年のARRを母数として、当期に受領見込みだった金額を“逸失金額”として計上しています。3月に満期で解約した企業を例に算出すると、MRRが20万円、ARRが240万円だったとして、4月から12月までの9カ月間の180万円が当期の逸失金額となります」(兼平氏)。
扱うソリューションが増え、顧客も拡大するなかで今後、CSチームが拡張する可能性は大きい。兼平氏は、「顧客データは、企業の根幹。しかし、そのデータを、自社のビジネスにどう生かすかを見出せないお客様も多い。そのため、提言を当社に期待されることも増えてきました。人員を増やす必要性はもちろん、CSチームのメンバーにはコンサルティング要素も必要です」と課題を語る。
そこで、インプリメンテーションチームで経験を積んだメンバーを、CSチームに配属するなども検討。ほかにも、インプリメンテーションチームが持っているノウハウを、ナレッジとして共有する準備なども進めている。
「オンボーディングのプロセスには、まだ改善の余地があると感じています。徹底的に強化して、顧客の課題を最小化できる仕組みをまず作りたい。少人数でも効果を最大化できる仕組みを作っていきたい」(兼平氏)
(月刊「コールセンタージャパン」2025年5月号 掲載)
2025年04月20日 00時00分 公開
2025年04月20日 00時00分 更新