インタビュー
「日本のCSはコスト部門」の印象を払拭
生成AIソリューションも3月にローカライズ
カスタマーサクセス(CS)市場は、コンセプトの普及に対し、ITツール導入事例が少ない。2022年夏、日本に現地法人を設立。徐々に導入企業を増やしているのが、米国の主要ベンダーのゲインサイトだ。米本社でCRO(Chief Revenue Officer)を務めるマリリー・ベア氏に日本市場での成長戦略などを聞いた。
──米ゲインサイト入社以前からCSに関わっておられたのですか?
ベア かつてはコンテンツ・デリバリー・ネットワークやクラウドセキュリティ事業を展開するアカマイ・テクノロジーズでカスタマーサクセスチームを統率していました。当時、顧客の維持に課題を抱えており、ゲインサイトのカンファレンスイベント「Pulse!」への参加をきっかけに、同社のソリューションを知りました。その後、Zendeskに転職して活用したところ、CSチームが収益部門へと進化するのを実感。その体験を機に、入社するに至りました。
──米国のCS市場について教えてください。
ベア SaaS市場は競争が非常に激しい。そのため顧客企業は、自社の付加価値を最大限引き出せるソリューションを求めています。ゲインサイトは、顧客の定着や維持だけを目的とするのではなく、CSチームが企業の成長を牽引する収益源となることを提唱しています。米国ではすでに、CSはコスト部門ではなく、収益を拡大する部門と認知され、成長戦略の中核を担う立場となっています。
──具体的にどのような訴求を強めているのですか。
ベア 「ポストセールスジャーニーのすべてのポイントで価値を提供すること」がCSチームのミッションで、ゲインサイトのソリューションはそれを具現化する。言わば「カスタマーOS」として機能します。そのためにはデータの重要性が従来よりも高まっており、有効活用するために生成AIを搭載した「Staircase AI」をリリース、日本語にも対応します。
──『Staircase AI』について教えてください。
ベア Staircase AIは、あらゆるプラットフォームからデータを取得し、顧客企業の優先順位付けを行います。具体的には、「顧客と企業の間の非構造化データと構造化データを分析し、AIを活用して顧客の動向をスコア化。適切なアプローチのタイミングまで示唆する」などの機能を持ち、CSチームに対して大きな価値を提供します。これにより、CSM(カスタマーサクセス・マネージャー)は、従来の手作業によるデータ入力の手間を大きく削減でき、より戦略的な業務に集中できるようになります。
──日本市場をどう見ていますか。
ベア 日本では、CSが未だコスト部門という見方をされている傾向が強いと認識しています。そのため、経営層らに向けた啓蒙活動を、積極的に展開して認識の変化を促す活動を展開してきました。しかしながら、日本のCS市場には大きな可能性を見出しています。成長スピードが速く、企業の関心も急速に高まっていると捉えています。
ですから、当社のソリューションもローカライズ(日本語化)を強化するとともに、新たな人材採用を進めている最中です。今後も日本市場への投資を継続する方針です。5月に米国で開催する「Pulse!」でも、日本からの来場者を増やし、成功事例やベストプラクティスを共有したいと考えています。
(月刊「コールセンタージャパン」2025年5月号 掲載)
2025年04月20日 00時00分 公開
2025年04月20日 00時00分 更新