ナイル
自動車の購入手段が増えている。現金支払いはもちろん、残価設定型ローン、リースなどさまざまな方法がある。そんな中、月額定額カーリースサービスを展開するナイルは、「サービスの利用継続、再契約率の向上」を目的に、約3年前からカスタマーサクセスを強化。約20名のカスタマーサクセスユニットのメンバーが、BtoCへの伴走支援を日々、実践し続けている。
「顧客にサービスを使い続けてもらい、満足してもらうこと」が、カスタマーサクセス(CS)の目的といえる。BtoB、BtoCと対象は違えど、目指すゴールは変わらない。
BtoCに対し、CS業務を実践するのが、ナイル(東京都品川区、高橋飛翔代表取締役社長)のカスタマーサクセス(CS)ユニットだ。月額定額カーリース「おトクにマイカー 定額カルモくん(カルモ)」のユーザーに対し、約20名のメンバーが支援している。
自動車の購入はローン(残価設定含む)、サブスクリプションなど多数あるが、一般的に手続きはかなり煩雑だ。同サービスはインターネット上で申し込みができる手軽さが特徴。2024年5月時点で、累計申込者数25万人を突破した。
CSユニットは2021年、サービス開始から約3年後に組織された。事業も軌道に乗り始め、「顧客との付き合い方を見直す時期」に来ていたという。
カルモの特徴のひとつに、「新車で最長11年間」という契約期間の長さがある。自動車産業DX事業部の岩﨑圭介事業CCOは、「お客様が使う車そのものは、ディーラーで購入しても、リース契約でも変わりません。カルモで車をリースする便益を感じていただくことで差別化を図らなければ存続は厳しい。お客様の快適なカーライフのためにできることは何かを考え、実践することからユニットの活動が始まりました」と説明する。
3名からスタートした同ユニットは、契約後の顧客対応全般を担う。具体的には車検の更新の通知、請求をはじめとした金銭処理、月額課金型ビジネスのため督促業務も発生する。取り扱う業務量や内容も増えたことから、現在はユニットを次の4チームに分けている。
▽CS企画チーム:既契約者の満足度向上推進、提携先の開拓
▽お客様対応チーム:一般的な問い合わせにメール、電話、LINEで応対
▽オペレーションチーム:請求収納事務や車検・満了時期管理、メンテナンスなどの申請内容のチェック
▽債権回収チーム:支払いを遅延した際の各種対応
既存契約者の、顧客満足度向上を狙うCS企画の担当範囲は広い。例えば自動車保険や車検を行う整備業者、駐車場を提供する企業をパートナー企業として開拓。さらに、より付加価値の高い顧客接点構築の取り組みも主導する。
24年9月にはファンミーティングを開催した。「顧客対応はオンライン、アプリを使った伴走支援とテックタッチが中心。しかし、息の長いお付き合いを意識してハイタッチにも挑戦し、初の対面イベントを開催。約20名のお客様にご参加いただき、『セールスもサポートも手厚い』といったお声をいただいています」(岩﨑氏)。
ユニット内で最も人数の多いお客様対応チームは、14名前後が在籍する。平日10時〜19時で電話とメール・LINEをそれぞれ200件/月平均応対し、即日の回答を基本としている。さらに、オンボーディングにあたる、納車後のフォローコールを担当、車を所有することへの不安や疑問の払拭に努める。カルモのユーザーは、初めて車を所有するケースも多い。「フォローコールは、お客様に日時を指定いただく“コールバック予約”を採用しています。こちらの都合で電話をかけるのではなく、お客様の状況を鑑みる。これも伴走のひとつです」(岩﨑氏)。
手続き関連を担うオペレーションチームと債権回収チームは、債権管理・督促回収システム「Lecto」を用いて業務を効率化している。
同ツールを、車検のタイミングの通知にも活用している。「督促の累計回収は98.5%と高い成果を生んでいますが、他にも活用できないかと考え、車検のお知らせ(図)に活用しています。使い方は、日付をトリガーにCRMデータベースの金額や氏名といったパラメータを取り込み、メッセージを自動送信しています」(岩﨑氏)。
カスタマーサクセスのKPIといえば、チャーンレートが挙げられる。しかし、カルモはリース契約のため、中途解約が原則できない。そのためチャーンレートを指標にはしていない。BtoCでは、ロイヤルティを、クチコミや利用者からの紹介が左右する。そこで、顧客満足度、再契約率(リピーター増加)・紹介者数を指標に定めている。岩﨑氏は「経営層からのミッションも、契約期間終了後にまた契約してもらうための顧客満足度の向上です」と述べる。
現状は、NPSと、継続利用意向度を測定している。ただし、いずれも「商品(車)に依存する傾向にあるため、あくまで目安」(岩﨑氏)という。自動車は消耗品であり、装備や性能は日進月歩と、時間が経てば満足度も比例して下がる。サービスや顧客対応の応対品質が悪いとは言い切れない。
こうした背景もあり、Googleマップのクチコミに大きな比重を置く。24年1月から本格的に取り組み、11月には4.3へと、1.2ポイント引き上げた。「大多数の方から、100文字程度のコメントまでいただいています。その内容は、『商談時から親切丁寧に案内してくれて良かった』『サポートも充実してます』など、サービスや応対品質の高さによるもの。取り組み成果を実感しています」(岩﨑氏)。
(月刊「コールセンタージャパン」2025年1月号 掲載)
2024年12月20日 00時00分 公開
2024年12月20日 00時00分 更新