CSカレッジ、「2023年カスタマーサクセス国内事例 総括発表会」を開催

CSカレッジは12月14日、「2023年カスタマーサクセス国内事例 総括発表会」をオンライン、オフラインのハイブリッドで開催した。


当日のタイムテーブルが下記。

冒頭で、主催者のレクシエス 代表取締役社長 / CSカレッジ 代表 丸田絃心氏が「カスタマーサクセスの動向をつかみ、2024年に戦略に活かしていこうという主旨です」と挨拶。

その後、6名が事例企業の発表および質疑応答が行われ、丸田氏と本イベントの共同開催企業であるコミューンの 執行役員CCO / SuccessHub事業責任者 岩熊勇斗氏がファシリテーターをつとめた。



はじめに日本アイ・ビー・エム テクノロジー事業本部 カスタマーサクセス部 部長 戸倉 彩氏が登壇。    

日本アイ・ビー・エムのカスタマーサクセス組織は、グローバルで1000名程度(2021年発表)。
同事業部が扱う商品は、クラウド、ソフトウエア、一部ハードウェア。watsonxやIBM Db2、データストレージなどの購入企業にテクニカルな面でオンボーディングやバージョンアップ支援をするのがカスタマーサクセス部のミッション。

●2023年にとくに注力した活動
カスタマーサクセス部設立3年目となり、ビジネスおよびテクニカルの両面で成果が求められる年であったことから、とくに専門知識を持って成果があがるような技術支援を強化した。
そのひとつがメンバーのスキルアップ。IBMはグローバル規模で社員研修が充実しており、社員は業務時間内にインプットが課され、資格取得などに活かしている。コミュニケーションや英語など内容は多岐にわたり外部研修も受講可。研修・試験後にはデジタルバッチが取得でき全社に取得状況が公開される。「このスキルの人と組むことで案件を成功せよう」など他部門からも参考にされている。
 部内でも研修動画をつくり、利用ツール(Gainsightなど)の使い方などを用意し社員の情報アップデートや新人教育にも活用した。プリセールスのフェーズでも使ってもらえることも視野に入れ、横展開できるコンテンツの制作から公開までを実施したことで幅広く活用されている。





次いでシスコシステムズ合同会社 デジタルカスタマーエクスペリエンス シニアマネージャ 小泉 雅人氏が登壇。

シスコシステムズでは、約7年前にカスタマーサクセスを立ち上げ、テクノロジーやデータをフルに活用し、リニューアルやパートナーサクセスを行っている。

テックタッチ、ハイタッチを運用する組織は分かれており、ハイタッチはひとりあたり1000社担っており、それを支えるのがテックタッチ。テックタッチ領域はアジアパシフィック全体でひとつのチームとして機能している。
同社は15のステージでカスタマーライフサイクルを定義しており、ステージが進んだことをトリガーに自動で情報が提供されるテックタッチの仕組みが整備されている(画像)


このカスタマーライフサイクルにおける最適な日数と要件が定まっているため、テックタッチ後の反応が芳しくない場合に、CTAによるハイタッチのフォローを行う。

●2023年注力したのはAI活用。
同社ではグローバルで機能するオンラインコミュニティを23年前から運用、現在7カ国語に対応し、120万人に利用されている。閲覧数は月間3300万PV、4分に1回ポストされている。

この内容をデータ分析するため、質問意図を分類(ラベリング)し、機械学習を用いたデータサイエンスモデルでクラスター分析。生成AIで課題をサマライズし、引き出したインサイトからコンテンツをつくり、コミュニティにポストし、反応を見たところ一定の成果が見られた。
苦労したのは、どのモデル、生成AIを用いるかという点と、ラベリング、チューニング、クレンジング。
本施策への予算確保方法については、事前に手作業でラベリングから分析、コンテンツのポストまで行って成果検証を共有した経緯を解説した。



3番目に登壇したのがセゾン情報システムズ カスタマーサクセス部 エバンジェリスト 小暮浩史氏だ。

セゾン情報システムズは、2023年2月からファイル転送機能「HULFT」とデータ連携ソリューション「DataSpider」を組み合わせたクラウドサービス「HULFT Square」を提供開始。これに伴い、カスタマーサクセス部門を立ち上げた。

●今年1年で行ったのは組織の立ち上げ。
既存のオンプレミス製品があったことから顧客の需要やオンボーディング時の課題などの仮説を設定。初期段階は、1to1でハイタッチするなかで、顧客のサクセスやオンボーディングでつまづきやすいポイントなどを把握。オンボーディングシナリオを整備し、運用にあてて検証を繰り返した。
チーム構成は、ハイタッチCSM3名、仕組づくりメンバー5名。人とのコミュニケーションが好きか仕組みづくりが好きかで担当分けを行った。ただし、仕組みづくりのメンバーも顧客との打ち合わせには極力同席、顧客視点を理解するよう努める。MTG内容は日時で情報連携を行っており、課題・プロジェクト管理ソフトウェア「Jira」に履歴を蓄積している。
KPIは、営業は売上、テクサポは解決までの所要時間、サクセスはオンボーディング完了率や利用状況など。
オンボーディングのシナリオは一定整備でき、下期はリニューアル部分の整備を行う方針。





次いで登壇したのがアドビ カスタマーサクセスマネジメント部 シニアカスタマーサクセスマネージャー 児玉知之氏。

アドビが提供するソリューションは、PhotoshopやIllustratorなどを提供する「Creative Cloud」と、CDPやMA、CMSなどを提供する「Experience Cloud」がある。
児玉氏が担当しているのは、サイトやアプリなどの体験をさまざまな方法で検証し改善を支援する「Adobe Target」とWeb分析ツール「Adobe Analytics」のカスタマーサクセスだ。
主な業務内容は、とくにユーザーにとって難易度の高いオンボーディングからアダプション領域。ハイタッチ、ロータッチ、テックタッチ、コミュニティタッチの4つ(図)。


●1年で注力したのはコミュニティタッチ
同社の中で盛り上がりを見せるMAツール「Marketo Engage」のユーザー会にならい、製品活用ユーザー会の企画・運用を行っている。目的は活躍、つながり、活用促進の3つ。それぞれの取り組みが下図。


同社が定義するユーザー会運営の価値が下図。顧客側のメリットばかりを考えがちなコミュニティ運営だが、「CSM側が顧客にしかない情報を引き出し、より深い理解をすることも非常に重要な視点」(児玉氏)と説明した。

コミュニティはKPI設定が難しく社内の予算確保の厳しさに直面する企業が多い。
そこで、Marketo Engageの成功事例から、リニューアルの成功やアップセル・クロスセルにつながる事例を理解浸透させ、実現した。
ユーザー会のKPIは参加企業の年間ARRへのインパクトなどを検証している。



4番目に登壇したのがHubSpot Japan カスタマーサクセス プリンシパルカスタマーサクセスマネージャー 川村拓司氏。

CRMプラットフォームの開発、販売を行うHubSpotは2006年に創業。カスタマーサクセスは2007年から行っており、現在8名が所属する同部門の主な業務はアダプションとリニューアル。

●今年注力したのは日本語ナレッジの強化。
社内アセットは主に英語。英語力必須のカスタマーサクセス人材の採用は容易ではない。加えて同社のプロダクトはカバー範囲がマーケティング、セールス、ヘルプデスク、コンテンツ制作、決済と幅広い。プロダクト知識が必要であることはもちろん、ソリューション別の顧客のビジネスと業務を理解していなければコミュニケーションが取れない。
グローバルでのトレーニング研修はあったが、国内企業のビジネスモデルや業務内容までは反映できていない。
そこでオリジナルの日本語版としてロープレ、プロダクトナレッジ、プレゼンテーションノウハウなどを追加。

プレゼンテーショントレーニングの一例が下記画像。

架空の顧客を想定し、対応を思考するトレーニングができるもので、入社から2カ月の研修を経て顧客対応をひとりで行えるようなものとした。HubSpotが提唱した循環型ビジネスモデル「フライホイール」を思考する機会としても活用している。



最後に登壇したのがSmartHR カスタマーサクセスグループ VP of Customer Success稲船祐介氏。

SmartHRは、およそ5年前に100名だった社員が1000名を超え、カスタマーサクセスは当時11名から140名を超えるまでに拡大している。スケールに伴い、課題となるのがチーム構成とマネジメント力の強化。
●2023年に注力したのが下記4つのスケール対応施策。

・組織再編成
活用率・エクスパンション低下への施策としてSMBとMMBを分け、KPIを再設定
・チャーン理由の整理と分析・対策の強化
オプション・プラン増に伴い、チャーン理由が複雑化。画像のように分類したことでセグメント別の傾向などが把握できるようになった。

・担当分けによる組織戦でのマルチプロダクト対応
提供ソリューションのマルチプロダクト化が進一方で、CSMのナレッジが限界となったことから、分業制にし、チーム全体での総合ナレッジを強化した。
・各マネージャー増に伴うマネジメントスキルの強化
スケールに伴いマネージャーが増加したため、マネジメント力強化が必要だった。週二回のマネジメントMTG、隔週での中長期計画MTGなどを儲け、組織運営について各々思考する機会を増やすとともに組織全体の方向性をすり合わせることで、全体パフォーマンス向上につなげた。




セッション終了後には、懇親会が行われ、参加者らは互いのカスタマーサクセスの取り組みについて情報交換の場として活用された。


会場参加者からは、
「ハイタッチからテックタッチまでさまざまな施策があり参考になった」
「少人数でのマネジメント手法の模索はこれからの自身のマネジメントの参考にしたい」
「今年注力したことにフォーカスした企画主旨が非常に良かった。自社でも来年、クォーターごとに注力すべき戦略を考えていきたい」
などの感想があった。



 

2024年01月31日 18時11分 公開

2023年12月17日 20時12分 更新

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