本誌記事 ケーススタディ スマレジ

顧客の「状況」を可視化・共有して有料会員率を高める

Casestudy ケーススタディ

スマレジ

コールセンターの仕組みをサクセスに活かす!
顧客の「状況」を可視化・共有して有料会員率を高める

BtoB向けSaaS企業の顧客窓口では、長期的な人間関係の構築が欠かせない。一度のやり取りで完結する問い合わせ対応だけでなく、オンボーディング支援や利用状況に応じた能動的なフォローも重要な業務だ。法人向け決済サービス事業を展開するスマレジでは、オンボーディング支援からアフターサポートのコールセンターまで一貫したカスタマーサポートを構築している。

竹村 大氏
カスタマーサクセス部 執行役員の竹村 大氏

 iPadやiPhoneを用いたPOSレジを提供するスマレジ(大阪市中央区、山本博士代表取締役)は、飲食店・小売店で取り扱うPOSレジの「スマレジ」や決済サービス「PAYGATE」を展開。キャッシュレス決済はもちろんのこと、セルフレジやモバイルオーダーにも対応している。そのほか、スマレジ利用企業からのニーズに基づいて開発された飲食店向けオーダーエントリーシステム「Waiter」や、クラウド勤怠管理システム「タイムカード」も提供している。

 主な利用顧客はアパレルセレクトショップ・飲食店などで、事業規模は中規模層(店舗数2〜39店舗)が中心。業界別の利用推移を見ると、小売業が31%でもっとも多く、次いで飲食業、アパレル業が続く()。POSレジ市場では近年、従来型の据え置き型POS端末からクラウド型への移行が急速に進んでおり、同社も新しい機能を開発、POSレジ市場でのシェア拡大を目指している。

図 業界別の利用店舗の推移(無料プラン含む)

図 業界別の利用店舗の推移(無料プラン含む)

プロダクトを理解し、顧客を知る
部署間で連携し課題を解決

 スマレジのCS事業全体を管轄するカスタマーサクセス部に所属するのは約60名。導入前後のサポートおよびオンボーディングを担当する「カスタマーサクセスチーム」、契約後の操作案内やテクニカルサポートを担う「カスタマーサポートチーム」、顧客の自己解決率向上のためのFAQサイトの制作や製品アップデートの配信を行う「ヘルプコンテンツチーム」、ハードウエアや請求周りのサポートを行う「事業支援チーム」の4部門で構成されている。

 ミッションの1つである「有料会員の獲得」は、カスタマーサクセスチームがKPIに設定しているトライアルプラン開始後の有料CVR(Conversion Rate)や解約率(Churn Rate)で管理。有料会員獲得のために重要となるのがオンボーディング支援だ。トライアルプラン中および有料プラン移行後の顧客に対するオンボーディング支援を行い、導入検討段階から導入直後まで幅広く支援している。カスタマーサクセス部 執行役員の竹村 大氏は、「顧客単価は導入企業の規模によって異なるため、有料プランに移行した“達成率”をKPIとしています。コンバージョンの機会は、月単位であればタイミングなどによるので運に左右されやすいですが、半年単位で見ますので平均的なスコアになると捉えています」と述べる。カスタマーサポートスタッフには、CPH(Call Per Hour:1時間あたりの対応件数)や、定期的に実施するモニタリングスコアを個人KPIとして課しているが、トップダウンでの指示ではなく、オペレータ自身が半年ごとに目標を設定し、その達成度で評価している。

 これらのKPIを把握し、顧客とのやり取りを支援するため、各チャネルでコミュニケーション・ツールを導入している。電話ではCTIツールを提供するリンク(東京都渋谷区、岡田元治代表取締役社長)の「BIZTEL」を導入。メールツールはインゲージ(大阪府大阪市、和田哲也代表取締役CEO)が提供する問い合わせ管理・メール共有システム「Re:lation」を、チャットツールはCSプラットフォームの「Zendesk」を採用している。顧客ごとのヘルススコアの算出にはGoogle Looker Studioを活用し、BIZTELで把握・記録した顧客情報と連携しつつ、データ分析を実施している。

社内共有の円滑化に対話力を重視
早期着台に向けツールを駆使

 事業自体が拡大過程であるため、採用活動は常時行っている。採用では、過去の同業務経験より、誰に対しても、どの場面でも伝わりやすい“コミュニケーションスキル”を重視。竹村氏は、「業務上必要な知識は入社後でも習得できますが、性格や適性を変えるのは難しいです。お客様のサクセスを第一に考えて対話できれば、自ずと成長できると考えています」と説明する。

 社員研修の段階では、顧客に寄り添うサポートが身に付くよう「スマレジのユーザー」としての視点を身に付けることから始める。具体的には、ヘルプコンテンツチームが作成した案内書を参考に、実際のユーザーさながらに試験利用し、商品知識や操作設定方法の習得に努める。オンボーディングをはじめとした先輩の顧客対応には必ず同席。通話対応時のモニタリングを行いながら、すべて先輩のフォローがある中で対応する。このほかにも、CS部門のSV数名がGoogleのミーティングルームをそれぞれ開設しており、何かあればスタッフはいつでも入室して質問できる。難易度が高い問い合わせは、この段階でエスカレーションされる。

 竹村氏によると「各業務に最低でも2人が関与する体制にしており、属人化は起きていません。現時点で起きているものはそのように組織変更していきます」という。また、今後のサクセスをはじめとした製品の展望について、「当社でクロスセルに注力している『タイムカード』を例に挙げると、部門間連携を含めた社内共有を重視しています。とくに開発方針や販売思索などのKGIに関わる内容については、他部門の部門長やリーダーとVOCや製品開発予定までを共有し、各部門で施策に結びつけるように把握しています。このように、社内の情報連携を強化し、長期視点で収益向上につながるCXを提供していきます」と述べた。

(2023年7月号 月刊「コールセンタージャパン」掲載)

 

2024年01月31日 18時11分 公開

2023年06月20日 00時00分 更新

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