定着する組織作り『人財』最適マネジメント講座 第2回

 

新人研修だけがトレーニングではない!
中長期育成計画の見直しが品質向上を導く


顧客は「正しさ」だけではなく、共感や親しみもあわせて評価する。だが、 オペレータ研修は新人に対する業務知識の詰め込みに偏重している。顧客 の期待に応えるためには、新人研修のみならず着台後のスタッフも含め、 モニタリングと連動したトレーニングプランを構築することが有効だ。


著者:HDI-Japan(ヘルプデスク協会) 長掛文子
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 今回は、HDIサポートセンター国 際認定(以下SCC国際認定)の従業 員管理の1つ、「トレーニングプラン」 について紹介する。
 オペレータ向けの研修は、どうし ても商品・サービスをはじめ業務知 識の習得に集中する。しかし、顧客 の要望には、「ビジネスニーズ」(正 しい回答)と「心理的ニーズ」があり、 一般的にCSの75%は心理的ニーズ からなると言われる。つまり、顧客 は、「正しい回答」だけを求めてい るわけではない。「私の気持ち・状 況を理解してほしい」という期待を 満たす必要がある。
 これは、当社で実施している「問 合せ窓口格付け調査」でもみてとれ る。同調査で収集したコメントには、 「親身に共感していない」「マニュア ル通り」などの不満の声がある。一 方で、満足のコメントとしては、「親し みがある」「共感が伝わる。役に立 ちたいという気持ちが伝わった」「丁 寧で、適度な距離感」など。“共感” “一生懸命”といったニーズを満たす か否かが、評価の別れ目のようだ。 また、同じ丁寧な対応も“よそよ そしい”と取られるか“丁寧”と受け 止められるかは顧客による。オペ レータは、その顧客がどのような対応を求めているかを察知してサー ビスを提供しなければならない。
 このように業務知識だけでなく、 いかに顧客の気持ちを理解できる サポートスタッフを育成するかがCS 向上のカギだ。実際に、顧客の心 理的ニーズを満たす教育は、どのく らいのセンターで行き届いている だろうか。

“馴れ”が応対に悪影響
ベテランこそ教育が必要


 新人オペレータの教育手法は、 HDIプラクティス&サラリーサーベ イ2009の調査結果を見ると、「オン ザジョブトレーニング(OJT)」がも っとも多く、「先輩による指導」が次 に続く(表1)。



 
一方で、配属後のス タッフを対象としたトレーニングプラ ンはどうだろうか。表2にあるように ほとんど実施されていないのが実状 だが、ベテランの教育こそ実は注力 すべきだ。横柄な対応や、手慣れ た感じで淡々と事務的に「処理」す る対応はベテランにこそ多い。また、 顧客の期待は進化し続けるものだ。 センターの応対品質も常に進化し 続けなければならない。新人以外 のスタッフにもトレーニングは必要 だろう。




高評価コールを“盗み合い”
品質向上の近道は「真似」にあり


 トレーニングは、前号で述べた 「職務内容定義」と連動させながら 計画していくべきだ。また、集合研 修だけでなく、個別指導も実施する ことが望ましい。

 以下では、モニタリングをベース にPDCAサイクルで応対の改善を図 ったセンター、高評価のコールを共 有することで応対スキルを伸ばした センター、2社の事例を紹介する。 HDI-Japanが、表3の基準でコー ルモニタリングを毎月実施する某企 業では、その結果を用いて、以下の プロセスでフィードバックを実施して いる。①評価対象のコールを品質 管理担当者とサポートスタッフが一 緒に聞く、②サポートスタッフが自己 評価、③品質管理担当者がモニタ リング評価をフィードバック、④自己 評価とのギャップの原因を探る、⑤ 改善―という流れだ。こうしたモ ニタリング指導を繰り返すことで 個々の応対を改善し、さらに副次的 な効果として、センター内全体の士 気向上を促した。

表3 クオリティの評価基準

 
 一方、バイリンガル(日本語・英 語)でサポートサービスを展開して いる別の企業では、当社が評価し た結果、スコアの高いコールをセン ター内に公開している。これにより、 「良いコールを聞いて、他人の良い ところを盗め」と促している。クッ ション言葉を使うタイミングをはじ めマニュアル化しにくいノウハウを 共有するのに役立っているという。 新人や、外国人スタッフの日本語対 応は、一朝一夕に改善されるもの ではないが、同センターは、こうし た仕組みで、異例の速さで応対ス キルの向上を実現したという。 このように、モニタリングをベー スに行える育成法はさまざまある。

(コンピューターテレフォニー2010年11月号掲載)

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2024年01月31日 18時11分 公開

2013年02月22日 11時36分 更新

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