クレーム対応のレシピ 第16回

サイレントカスタマー化しやすい日本人
「声なき声」を傾聴せよ


著者:JBMコンサルタント 玉本美砂子
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 こんなジョークがある。レストランで出てきたスープに蝿が入っていた時の各国人の反応。ドイツ人「このスープは熱いので十分に殺菌されていると冷静に考え、蝿をスプーンで取り出してスープを飲む」、アメリカ人「ボーイを呼び、コックを呼び、支配人を呼び、あげくに裁判沙汰になる」、日本人「周りを見回し、自分だけに蝿が入っているのを確認してから、そっとボーイを呼びつける」(中公新書「世界の日本人ジョーク集」より)。

 どうも日本人は奥ゆかしくて、クレーム=主張をガンガン言う民族だとは思われていないようだ。

 皆さんは「ジョン・グッドマンの法則」をご存じであろうか。「クレームの申し出があった場合、迅速に解決した顧客の方が、何もなかった顧客より再購入率が高い」「クレーム処理に不満を抱いた顧客の悪い口コミは、満足した顧客の好意的な口コミに比較して2倍も強い影響を与える」というものだ。

 この法則に照らせば、一般的に、商品を購入してその商品にクレームのない顧客だと60%近くは再購入する。反対に、クレームのある顧客の場合、コールセンターに電話をする人は40%であり、クレームが迅速に解決すると82%近くが再購入をする。しかし、クレームがあっても何もアクションを起こさない人の再購入率は10%であり、解決に不満を持った人は悪い口コミをどんどん広めていく。つまり、ひとつのクレームの後ろには、クレームを言いたくてもうまく表現できないので言わない顧客、奥ゆかしく何も言わずに去っていく顧客、そうしたサイレントカスタマーの声なき声があると応対者は自覚しなければならないのだ。企業側が、クレームの声に耳を傾け、迅速に問題を解決し、その後の改善・改革に繋がれば、不満を持つ40%の既存顧客を失わずに済む。逆に、「たった一人の言うことだから」といっておろそかに対応すると、坂を転げるように顧客は減っていく。

 「世界の日本人ジョーク集」には、こんな話もある。米国の新聞に、「日本人は表現が曖昧で、何を言いたいのかハッキリしない。日本人は堂々と主張(クレーム)のできない民族だ」と書いていた。数日後、その記事に対して、日本人らしき人物からこんな投書。「先日の貴紙についてですが、より幅広い議論を検討していただいた上で、前向きに善処していただければ幸いと存じますが、いかがなものでしょうか (匿名希望)」。クレームを言う場合でも、歯に分厚い衣を着せてしまう国民性なのだ。

図 ジョン・グッドマンの法則


(コンピューターテレフォニー2012年7月号掲載)

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2024年01月31日 18時11分 公開

2016年06月29日 16時48分 更新

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