クレーム対応のレシピ 第4回

高い期待値の裏返し
応対次第で損なわれる企業イメージ


著者:JBMコンサルタント 玉本美砂子
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 1年ほど前に東京都心の有名ホテルに宿泊したとき、携帯電話の充電器を部屋のコンセントに指しっ放しにしてしまって、大阪に帰ってからそのことに気づいた。ホテルからの連絡はない。電話をしたら「預かっていますから、取りにきてください」とおっしゃる。わざわざ充電器のために大阪から新幹線に乗る人はいない。何のための宿泊名簿だろうか。名前を言えば誰でも知っているホテルで起こったことだ。

 顧客満足は顧客期待との相関関係で生まれる。私たちは、知名度、規模の大小、イメージ、口コミなどから企業に対して期待値を持つ。一流企業と見られている企業には一流の商品と一流の応対があるとみなしている。一般的なクレームは顧客の期待値を会社が裏切ったときに生まれる。顧客の事前の期待と事後の評価の落差がクレームを生むのだ。同じ金額で買ったスカートでも、特売激安バーゲンで買ったスカートに糸のほころびを見つけた時と、高級ブランド品のスカートにほころびを見つけた時とで感じ方や行動は変わる。特売激安バーゲンで買ったスカートには針と糸でほころびを繕う自分がいるが、それが高級ブランド品のスカートなら店に駆け込むだろう。

 クレームがあるということはそれだけ顧客から期待されているということの証だ。期待値の低い企業にクレームは少ない。一流企業・有名ブランドと思われている企業は一流の応対をするものと顧客は思っている。

 この当たり前なことをオペレータはしっかり意識してもらいたい。自分の会社、センターが顧客からどう見られているか。一流、有名ブランドと見られているなら、それにふさわしい応対があるはずだ。価格とは、商品そのものにサービス、応対質が加わったものである。クレームは顧客期待の裏返しであり、応対次第で顧客の企業に対するイメージを取り戻すことも、より高めることもできるのだ。

 とはいえ、クレーム多発でマスコミまで押しかけて、「これでわが社も全国ブランド、一流の仲間入りだ」というのは、勘違いもはなはだしい。

図 ホテルの格と顧客の期待値


(コンピューターテレフォニー2011年7月号掲載)

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2024年01月31日 18時11分 公開

2016年06月29日 16時44分 更新

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