AIエージェントの競争軸は、回答精度から「どこまで問題を解決できるか」へ移行しつつある。Zendeskは、AI、人、データ、ナレッジ、業務システムを統合し、継続的に問題解決力を高める「自律型サポートワークフォース」を掲げる。Zendeskが描く戦略を、製品開発を統括するジョン・アニアノ氏に聞いた。
Zendesk 製品開発CS製品担当シニアバイスプレジデント 兼 統括部長
ジョン・アニアノ(Jon Aniano)氏
――Zendeskのビジネス概況と、AIへの投資状況を教えてください。
アニアノ 現在、グローバルで3万2000社以上のお客様に、Zendeskが提供する企業向けAIを利用いただいています。例えば、2025年3月からの1年間で、CopilotやAI Agents、生成AI検索など、AIを活用したインタラクションは8億3000万件に達しました。我々は、これをお客様からの信頼や期待の表れと捉えています。研究開発には3億5000万ドル以上を投資し、約2000人の担当従業員が開発を支えています。
――投資の方向性を教えてください。
アニアノ 私たちが目指しているのは、単にAI機能を追加することではありません。カスタマーサービス、従業員サービス、コンタクトセンターを横断し、AIと人、業務システムを組み合わせながら問題解決を継続的に高度化する「自律型サポートワークフォース」の実現です。
そのためには、AIエージェント単体ではなく、データやナレッジ、既存の業務プロセス、アクションを実行する外部システムまでをつなぐ統合されたエコシステムが重要です。さらに、インテリジェンスに加え、ガバナンスやセキュリティも共通基盤として提供します。AIが顧客に関するコンテキストを把握し、必要なシステムと連携することで、適切な判断と問題解決につなげる考えです。 また、AIエージェントは、チャットやメール、メッセージングなどチャネルをまたいで利用でき、一貫した体験を提供できます。
――CS領域での「AI競争」が激しくなるなかで、自社をどう位置づけていますか。
アニアノ AIエージェント、オペレータ、人材管理、品質保証、分析など、カスタマーサービスにおけるインタラクションの全体をカバーできることが強みだと考えています。また、新たに発表した「特化型AIエージェント」をはじめ、我々のプロダクトは「解決」を目的として設計している点が競争力の源泉となっています。
――具体的には、どのような価値を提供するのでしょうか。
アニアノ カスタマーサービスにおいて、「回答」と「解決」は同じではありません。問い合わせへの回答の先には、本人確認や返金、注文変更などの業務処理や判断があり、そこまで完了して初めて「解決した」と言えます。データやナレッジ、ワークフローと特化型AIを組み合わせて問題を解決します。また、顧客との対話や業務処理の結果から継続的に学習して次回以降の対応を改善し、自動解決率や品質を高めていく。このループ(Resolution Learning Loop)に貢献することを意識して、各機能を拡充しています。
――「特化型AIエージェント」とは、どのようなものですか。
アニアノ 業界固有の専門知識と、企業ごとのナレッジ、ワークフロー、連携システムを組み合わせ、自律的に判断・処理しながら問題解決を進めるAIエージェントです。提供形態は、大きく「業界特化型」と「カスタム」の2つです。業界特化型は、小売業界から提供を始め、今後は金融などにも対象を広げていく予定です。一方、カスタムエージェントでは、企業固有の意思決定やワークフローを自動化できます。例えば、返金判断や不正検知など、それぞれの企業に固有のプロセスをAIに組み込むことが可能です。2026年11月の一般提供を予定しています。
さらにMCP(Model Context Protocol)クライアントを一般提供し、AIエージェントの処理フローや外部システムとの連携を設定する「Action Builder」から、外部システムが持つツールへ直接アクセスできるようにしました。複数のAPI連携を個別に作り込むことなく、AIが状況に応じて必要なデータや機能を呼び出し、実際の処理まで進めやすくすることが狙いです。
――AIエージェントの活用領域が広がると、人の役割も変わりそうです。
アニアノ AIが単純な会話や処理を効率化する一方で、人には専門知識を生かした判断や、より複雑な問題への対応が求められるようになるとみています。ナレッジ管理やサービス設計、分析といった役割も、今後さらに重要になるでしょう。
――今後、Zendeskはどの領域を強化していく考えですか。
アニアノ これまでは幅広い業種に共通するAI機能へ投資してきましたが、今後は業界ごとの知識や業務プロセスをより深く組み込んでいきます。小売・ECに加え、金融、エンターテインメント、医療などへの展開も考えています。並行して、AIエージェント、オペレータ向けCopilot、管理者向け機能、ナレッジ管理、分析なども一体として強化しカスタマーサービス全体の問題解決力を高めていく方針です。
2026年10月05日 10時00分 公開
2026年10月05日 10時00分 更新