3.最初に取り組む業務範囲を決めましょう
AIを活用する業務の候補を整理したら、そのなかから短期間で検証でき、想定どおりの結果が出なかった場合にも影響を抑えられる業務を選びます。
最初からセンター全体を置き換えるのではなく、既存業務を継続しながら効果を比較できる範囲に限定することが重要です。
具体的には、対象とする窓口、問い合わせの種類、曜日や時間帯を絞ります。
営業時間外やあふれ呼だけを対象にする、1つの電話番号や問い合わせ業務に限定する、1拠点・数店舗から始めるといった方法があります。
また、AIに対応で完結させるだけでなく、用件の確認や必要情報の聞き取りなど、有人転送の前処理だけを任せる方法も有効です。
対象範囲を決める際は、既存のCTI、電話番号、CRMなどへの影響も確認します。
そのうえで、AIが対応を完結する範囲、オペレーターへ転送する条件、折り返しを受け付ける条件を明確にします。
同時に、複雑な判断や個別対応が必要な問い合わせなど、AIの対象外とする業務も定義しておきます。
次に、PoCの実施期間と検証に必要な件数を設定します。
件数が少なすぎると効果を正しく評価できないため、通常時と繁忙時の両方を確認できる期間を確保することが大切です。
また、PoC終了後に継続するのか、対象業務を拡大するのか、設定を見直すのか、利用を停止するのかについて、あらかじめ判断条件を決めて、関係者やベンダーと合意しておきます。
これらの内容は「初期導入スコープ定義書」として整理します。
対象業務、対象件数、実施期間、AIが行う処理、有人対応へ切り替える条件、対象外業務、継続・停止の判断基準を明記します。
導入範囲と判断基準を事前に共有することで、PoCの途中で目的や評価基準が変わることを防げます。
まずは、既存業務を止めずに効果を比較できる小さな範囲から始めます。PoCで効果と課題を確認したうえで、次の窓口や業務へ拡大するかどうかを判断することが、限られた予算と人員で導入リスクを抑えるポイントです。
4.導入効果を測るKPIを設定しましょう
AI導入の効果を正しく判断するために、導入前の数値を取得し、「何がどれだけ改善すれば成功とするか」を決めます。この判断基準はとても重要です。
多くの指標を追うのではなく、導入目的に直結する主なKPIを1~2個に絞り、基準値、目標値、測定期間を設定することが重要です。
例えば、電話をつながりやすくすることが目的なら、応答率、放棄呼率、待ち時間を確認します。
入電削減ではAI完結率や再入電率、対応効率化では平均処理時間(AHT)や後処理時間(ACW)、現場負荷の軽減では残業時間や取り次ぎ件数が指標になります。
また、1件当たりのコストや投資回収期間を算出し、AIの利用料を含めても費用対効果が得られるかを確認します。
一方で、効率だけを評価すると、顧客体験や応対品質の悪化を見落とす可能性があります。
そのため、誤認識率、有人での再対応率、再入電率、苦情件数なども確認し、AI導入によって新たな負担が生じていないかを測定します。
これらは「KPI設計シート」にまとめます。各KPIについて、導入前の数値、目標値、測定方法、成功と判断する基準を記載します。
例えば、平均通話時間を6分30秒から5分以内に短縮する、応答率を70%から85%へ改善する、再入電率を10%以下に維持するといった形です。
あわせて、KPIが目標に届かなかった場合の対応も事前に決めておきます。
設定や業務フローを見直すのか、対象範囲を縮小するのか、利用を停止するのかを明確にすることで、効果が不明確なまま追加投資を続けることを防げます。
5.社内の推進責任者と意思決定プロセスの明確化は大切です
AI導入には、経営責任者、センター長、オペレーター、IT部門、法務、経理・調達など、複数の関係者が参加します。
現場だけ、あるいは経営だけで進めるのではなく、「誰が推進し、誰が評価し、誰が協力し、誰が最終判断するか」を明確にすることが重要です。
まず、導入全体を進める責任者と、業務設計や現場調整を担う責任者を決めます。
次に、予算、セキュリティ、ITシステム連携、運用変更・契約について、それぞれの決裁者と承認条件を確認します。
経営はROIやCX、事業継続性、現場は応答率や操作性、IT部門はシステム連携やセキュリティなど、関係者によって重視する点が異なるため、必要な判断材料も整理しておきます。
各関係者の役割、重視すること、判断・承認する内容を一覧にし、PoC開始、本導入、契約締結までの承認手順を明確にします。
あわせて、定例会議の参加者、報告方法、問題が発生した場合のエスカレーション先も決めます。
過去の営業案件では、現場の評価が高くても、決裁者への説明や上位役職者の巻き込みが不足し、導入に至らなかったケースがありました。一方、現場、IT部門、意思決定者が参加する定例会議を設け、PoCのKPIや導入範囲を共有した案件は前進します。
現場の評価を”経営の投資判断につなげる意思決定プロセスを可視化”することが大切です。
いかがでしたでしょうか。下記の5つを先ずは可視化してメンバーで共有する事から始まります。
1.AI導入で解決したい課題の整理をしましょう
2.AIの効果が期待できる業務の見つけましょう
3.最初に取り組む業務範囲の決めましょう
4.導入効果を測るKPIを設定しましょう
5.社内の推進責任者と意思決定プロセスの明確化は大切です
日本を支えるすべて中小規模の受電業務の皆様のお役に立てたら幸甚です。
次回、「第2回 待ったなし!? カスハラ対策にAI活用!」をお送りいたします。お楽しみに!
2026年09月17日 13時54分 公開
2026年09月17日 13時54分 更新