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第1回
中小規模でAI導入を成功に導く「はじめの準備」
中小企業こそAI!「小規模センターのための実践・AI導入ガイド 」
音声ソリューションを手掛けて25年。アドバンスト・メディア、Automagi、ベリントシステムズを経て、株式会社IVRyの「既に一般企業でボイスボット6万アカウント採用」+「最高の技術を、すべての人と企業に届ける」というミッションに感化され、定年間近の58歳で同社へジョイン。これまでエンタープライズ市場で培ったAI音声対話ソリューションの経験を生かし、AIソリューションを日本中に届けるべく邁進中。趣味は、若さ維持のカレーとバンド活動。
■初めに
はじめまして!IVRyの森脇 健です。
今回から「中小企業こそAI!小規模センターのための実践・AI導入ガイド 」として全6回連載でお送りいたします。全部読破頂くと、Ai導入ついてのナレッジが爆上がり間違いなしです!
連日ニュースで報じられるのは大企業のAI活用ばかりであり、都市部と地方で“AI格差”が広がっているのが現状です。しかし、日本全体を元気にするためには、地方の現場を元気にすることが欠かせません。
皆様の業務では、すでにAI活用が進んでいるでしょうか?
・「うちは席数が少ないから関係ない」
・「AIは便利そうだが、高価でよくわからない」
そんな声を良く耳にします。
まだ導入されていない方にも、今検討中の方にも、本コラムがAI導入の一助になれば幸いです!
まずはじめに、このページでは下記の様に定義します。
大規模コンタクトセンター:オペレータ席数100席以上で運用
小規模受電業務:1席~50席程度で受電業務を運用←対象はここ
大規模コンタクトセンターでは既に何等かのAIソリューションが稼働してると想像しますが、日本全国に数多ある小規模受電業務(お客様センターや相談室)では、まだまだAI導入が進んでいません。
「そもそも数席・数十席規模の受電業務でもAI導入って出来るの?」 と、思われますが、答えは「はい」です。導入効果も大きいですし、すぐに効果を体感できます。
初回は「第1回 中小規模でAI導入を成功に導く”はじめの準備”」をお送りします。ぜひ最後までお楽しみください!
1.AI導入で解決したい課題の整理をしましょう
まず、現在の電話業務で発生している問題を洗い出し、「誰の、どの業務を、どの程度改善したいか」まで具体化します。 現場・管理者・経営それぞれの立場から困りごとを確認し、「応答率が低い」「後処理に時間がかかる」「取り次ぎが多い」といった課題に分類します。
次に、入電数、放棄呼数、平均処理時間(AHT)、後処理時間(ACW)、残業時間などの現状値を確認し、課題の発生頻度と業務への影響を可視化します。
そのうえで、AIによって解決する課題と、業務フローの見直しや人員配置などの運用改善によって解決する課題を切り分けます。 AIで実現したいことを「業務効率化」のような抽象的な言葉で終わらせず、「あふれ呼を減らす」「後処理を1件あたり1分短縮する」など、具体的な業務課題と目標に置き換えることが重要です。
最後に、課題の大きさを数値で比較し、AI導入によって最優先で解決する課題を1~2個に絞ります。
2.AI効果が期待できる業務を見つけましょう
まず、直近1~3か月の問い合わせ内容を種類別に分類し、それぞれの件数、対応時間、難易度を確認します。
そのなかから、定型的な案内、用件確認、本人確認、担当者への取り次ぎなど、件数が多く、対応手順が決まっている業務を抽出します。
候補となる業務を評価する際は、対応手順が標準化されているか、回答パターンが限定されているか、顧客情報に基づく複雑な判断を必要としないかを確認します。
また、AIで対応できない場合に有人対応へ切り替える条件を設定できるか、誤回答や誤対応が発生した場合の影響を限定できるかも重要な判断材料です。
そのうえで、AIだけで完結できる業務と、有人対応の前に必要な情報を収集する業務に分けます。
すべての電話を自動化しようとするのではなく、判断が少なく、繰り返し発生する業務から導入候補を選ぶことが重要です。
候補ごとに「問い合わせ件数×1件あたりの削減可能時間」を計算すると、期待できる削減時間や優先順位を具体的に比較できます。
過去の事例では、AIに問い合わせ対応のすべてを任せるのではなく、用件や本人確認情報を事前に聞き取ることで、通話時間を約28%削減できました。
AIの効果は完全自動化だけではありません。有人対応の前処理をAIに任せ、オペレーターが本来必要な対応に集中できるようにすることも、有効な活用方法です。
3.最初に取り組む業務範囲を決めましょう
AIを活用する業務の候補を整理したら、そのなかから短期間で検証でき、想定どおりの結果が出なかった場合にも影響を抑えられる業務を選びます。
最初からセンター全体を置き換えるのではなく、既存業務を継続しながら効果を比較できる範囲に限定することが重要です。
具体的には、対象とする窓口、問い合わせの種類、曜日や時間帯を絞ります。
営業時間外やあふれ呼だけを対象にする、1つの電話番号や問い合わせ業務に限定する、1拠点・数店舗から始めるといった方法があります。
また、AIに対応で完結させるだけでなく、用件の確認や必要情報の聞き取りなど、有人転送の前処理だけを任せる方法も有効です。
対象範囲を決める際は、既存のCTI、電話番号、CRMなどへの影響も確認します。
そのうえで、AIが対応を完結する範囲、オペレーターへ転送する条件、折り返しを受け付ける条件を明確にします。
同時に、複雑な判断や個別対応が必要な問い合わせなど、AIの対象外とする業務も定義しておきます。
次に、PoCの実施期間と検証に必要な件数を設定します。
件数が少なすぎると効果を正しく評価できないため、通常時と繁忙時の両方を確認できる期間を確保することが大切です。
また、PoC終了後に継続するのか、対象業務を拡大するのか、設定を見直すのか、利用を停止するのかについて、あらかじめ判断条件を決めて、関係者やベンダーと合意しておきます。
これらの内容は「初期導入スコープ定義書」として整理します。
対象業務、対象件数、実施期間、AIが行う処理、有人対応へ切り替える条件、対象外業務、継続・停止の判断基準を明記します。
導入範囲と判断基準を事前に共有することで、PoCの途中で目的や評価基準が変わることを防げます。
まずは、既存業務を止めずに効果を比較できる小さな範囲から始めます。PoCで効果と課題を確認したうえで、次の窓口や業務へ拡大するかどうかを判断することが、限られた予算と人員で導入リスクを抑えるポイントです。
4.導入効果を測るKPIを設定しましょう
AI導入の効果を正しく判断するために、導入前の数値を取得し、「何がどれだけ改善すれば成功とするか」を決めます。この判断基準はとても重要です。
多くの指標を追うのではなく、導入目的に直結する主なKPIを1~2個に絞り、基準値、目標値、測定期間を設定することが重要です。
例えば、電話をつながりやすくすることが目的なら、応答率、放棄呼率、待ち時間を確認します。
入電削減ではAI完結率や再入電率、対応効率化では平均処理時間(AHT)や後処理時間(ACW)、現場負荷の軽減では残業時間や取り次ぎ件数が指標になります。
また、1件当たりのコストや投資回収期間を算出し、AIの利用料を含めても費用対効果が得られるかを確認します。
一方で、効率だけを評価すると、顧客体験や応対品質の悪化を見落とす可能性があります。
そのため、誤認識率、有人での再対応率、再入電率、苦情件数なども確認し、AI導入によって新たな負担が生じていないかを測定します。
これらは「KPI設計シート」にまとめます。各KPIについて、導入前の数値、目標値、測定方法、成功と判断する基準を記載します。
例えば、平均通話時間を6分30秒から5分以内に短縮する、応答率を70%から85%へ改善する、再入電率を10%以下に維持するといった形です。
あわせて、KPIが目標に届かなかった場合の対応も事前に決めておきます。
設定や業務フローを見直すのか、対象範囲を縮小するのか、利用を停止するのかを明確にすることで、効果が不明確なまま追加投資を続けることを防げます。
5.社内の推進責任者と意思決定プロセスの明確化は大切です
AI導入には、経営責任者、センター長、オペレーター、IT部門、法務、経理・調達など、複数の関係者が参加します。
現場だけ、あるいは経営だけで進めるのではなく、「誰が推進し、誰が評価し、誰が協力し、誰が最終判断するか」を明確にすることが重要です。
まず、導入全体を進める責任者と、業務設計や現場調整を担う責任者を決めます。
次に、予算、セキュリティ、ITシステム連携、運用変更・契約について、それぞれの決裁者と承認条件を確認します。
経営はROIやCX、事業継続性、現場は応答率や操作性、IT部門はシステム連携やセキュリティなど、関係者によって重視する点が異なるため、必要な判断材料も整理しておきます。
各関係者の役割、重視すること、判断・承認する内容を一覧にし、PoC開始、本導入、契約締結までの承認手順を明確にします。
あわせて、定例会議の参加者、報告方法、問題が発生した場合のエスカレーション先も決めます。
過去の営業案件では、現場の評価が高くても、決裁者への説明や上位役職者の巻き込みが不足し、導入に至らなかったケースがありました。一方、現場、IT部門、意思決定者が参加する定例会議を設け、PoCのKPIや導入範囲を共有した案件は前進します。
現場の評価を”経営の投資判断につなげる意思決定プロセスを可視化”することが大切です。
いかがでしたでしょうか。下記の5つを先ずは可視化してメンバーで共有する事から始まります。
1.AI導入で解決したい課題の整理をしましょう
2.AIの効果が期待できる業務の見つけましょう
3.最初に取り組む業務範囲の決めましょう
4.導入効果を測るKPIを設定しましょう
5.社内の推進責任者と意思決定プロセスの明確化は大切です
日本を支えるすべて中小規模の受電業務の皆様のお役に立てたら幸甚です。
次回、「第2回 待ったなし!? カスハラ対策にAI活用!」をお送りいたします。お楽しみに!