SUBARUのCX施策

2026年10月号 <FOCUS/コールセンター>

コールセンター

CXは「知識」だけでは生まれない
顧客理解から広がるカーライフ支援

──SUBARU

効率化が進むコンタクトセンターで、CXをどう高めるか。SUBARUお客様センターでは、実車・実機を使った体験型教育や高速道路での実車研修を通じ、顧客の戸惑いへの理解を深めている。そこで培われるのが、「自分の言葉」で伝える応対力だ。生成AIで通話後の後処理業務を軽減しながら、顧客対応の質を高め、購入後のカーライフ全体を支えるCXへとつなげている。

 SUBARUお客様センターが重視しているのは、問い合わせに正確に答えることだけではない。複雑化する車両技術や機能を、顧客の状況や理解度に応じて分かりやすく伝え、安心して次の行動を選べるよう支援することだ。

 同センターには、車両の使い方や取扱説明書の内容に関する問い合わせが多く寄せられる。相談者は40〜70代が中心で、なかでも60代が多い。運転支援システム「アイサイト」や、スマートフォン連携機能を備えたインフォテインメントシステムなど、車両機能の高度化に伴い、操作に戸惑う顧客は少なくない。

 こうした問い合わせに対し、FAQを拡充して自己解決を促す一方、電話は複雑な相談を受け止めるための重要な有人接点と位置づけている。オペレータは、対話を通じて顧客がどこでつまずいているのかを見極め、必要な情報をかみ砕いて案内する。そのうえで、顧客が納得し、次の行動へ移れるところまで支えることが、お客様センターの役割だ。

左から、カスタマーファースト推進本部 アフターセールス推進部 カスタマーサポート課 課長の藤井太二氏と、同課 主事の脇田 亮氏
左から、カスタマーファースト推進本部 アフターセールス推進部 カスタマーサポート課 課長の藤井太二氏と、同課 主事の脇田 亮氏

顧客の戸惑いをどう捉えるか
実車体験で「自分の言葉」を磨く

 もっとも、顧客が抱える不安や戸惑いを的確に捉えるのは容易ではない。同じ機能についての相談でも、操作方法を知りたいのか、故障を心配しているのか、運転そのものに不安を感じているのかによって、確認すべき内容や伝え方、案内先は異なる。カスタマーファースト推進本部 アフターセールス推進部 カスタマーサポート課 主事の脇田 亮氏は、「お問い合わせには、不安や戸惑い、期待など多様な思いが含まれています。背景まで理解し、寄り添う応対を大切にしています」と説明する。

 こうした応対に求められるのは、商品知識の習得だけではない。同センターでは、オペレータの意識が取扱説明書に記載された仕様を正確に伝えることのみに向きやすく、「顧客の用途や期待まで踏み込むことができれば、お客様にもっと寄り添う応対ができるのではないか」と感じていた。また、車の専門知識を問われることへの不安から、顧客への質問を深掘りしにくい傾向もあった。背景には、オペレータ自身がSUBARU車を運転する機会が少なく、実際の利用シーンや操作時につまずきやすいポイントを具体的に把握する機会が限られていたことがある。

 そこで同センターは、新型車の発売に合わせた研修に加え、実車やインフォテインメントの専用機材を使った体験型教育を充実させている。新型車研修では、商品マニュアルをそのまま用いるのではなく、旧モデルとの違いや、実際に寄せられやすい質問を盛り込んだ資料を作成。実機研修では、車載製品と同一のディスプレイを専用に用意し、インフォテインメントやスマートフォン連携などをオペレータ自身が操作しながら、画面遷移や操作手順を確認する。

 さらに、スタッフ全員を対象に、高速道路での実車研修も実施している。アイサイトの作動や走行時の感覚を自ら確かめ、車両機能への理解を、体験を通じて深めながら、商品知識を実際の応対に生かす力を養う研修だ。脇田氏は、「実際に体験したことで、お客様が何に困っているのか、その本質をオペレータ自身が理解できるようになりました」と説明する。

 その経験は、旧モデルと現行モデルの違いを尋ねる問い合わせなど、利用場面を踏まえた案内に生かされている。実体験に裏打ちされた理解が、「自分の言葉」で伝える力につながっている。

体験型研修-1
体験型研修-2
体験型研修-3
実車での走行体験と車載機器の操作確認を通じ、顧客が実際に感じる戸惑いや不安を具体的に理解するための体験型研修

効率化で「人」の価値を高め
カーライフを継続的に支える

 顧客対応により多くの時間を充てるため、業務の効率化も進めている。その一つが生成AIの活用だ。現在は、通話後の応対内容を生成AIで要約し、システム登録に活用。効率化の対象は後処理(ACW)などの内部工程のみで、顧客との対話そのものを削減することは目指していない。定型的な作業の負荷を軽減した分、オペレータは問い合わせ内容に応じた丁寧な対応に注力できる。カスタマーファースト推進本部 アフターセールス推進部 カスタマーサポート課 課長の藤井太二氏は、「効率化によって生まれた時間を、お客様への応対品質の向上に使いたい」と説明する。

 その応対を、必要に応じて販売店へつなぐことも、お客様センターの役割だ。内容によっては最寄りの販売店を案内し、販売店で確認できる内容や、来店する意義を具体的に伝えている。また、顧客の了承を得たうえで問い合わせ内容を販売店へ共有し、販売店から顧客へ連絡するケースもある。

 今後は、購入後も続く顧客のカーライフ支援に力を入れていく考えだ。SUBARUでは、保有している車の価値を維持するため、アフターパーツの提案や新たな機能を付加する取り組みを進めている。藤井氏は、「お客様が今、お持ちの車を長く大切に乗り続けられるよう、SUBARUの掲げる『安心と愉しさ』を届けられるセンターにしていきたい」と展望する。購入後のカーライフを支え、顧客との関係を長期にわたってつないでいく。そうした顧客接点の積み重ねが、SUBARUお客様センターのCXを形づくっている。

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会員限定2026年09月20日 00時00分 公開

2026年09月20日 00時00分 更新

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