市界良好 第168回

2026年4月号 <市界良好>

秋山紀郎

コラム

第168回

電話番号を隠すということ

 最近は、ホームページで電話番号を見つけづらい会社が多い。なるべくFAQなどを参照してもらって自己解決をしてほしいというのは分かるが、入電を減らすために電話番号を奥のほうに置いて、顧客接点の費用が電話より安価とされるテキストチャネルに誘導、いや強制的に使わせているようなケースが散見される。そのようなことをやっても、お客様にとってコンタクトが必要な電話は減らないのではないだろうか。

 少し前の話だが、通信会社にやや複雑な内容の問い合わせをしたかったため、電話番号を探した。有人チャットしか窓口がなかったので、仕方なく使用した。状況説明を入力するのは時間がかかる。一旦、短めに伝えて、後から補足しようとしたら、すぐに相手が「入力中」になった。それを待たないと失礼かと思ったが、返信内容は、私が入力したことの繰り返しと「詳細を教えて下さい」という依頼である。この時点でチグハグ感がある。その後のやり取りでも、こちらの意図を伝え、相手の内容の確認に時間がかかった。途中で何度も電話で話したいと伝えたものの、テキストのみとの返事であった。途中でチャットが中断して最初からやり直しになるのは避けたいため我慢してチャットを進めた。結局、40分くらいかかった。電話なら10分で終わっていたと思う。顧客体験としては著しく悪い。電話窓口が閉じられている現実に失望した。

 先日、家族で米国に旅行した。事前に予約していた現地ツアーが、当日の天候の影響で中止になるかも知れなかったため、前日にホームページを見て電話番号を探した。すぐに見つかったため、電話をしてみると、当日の朝7時に判断されるということだった。中止の場合は電話をくれるということだったが、不安に感じた私は、朝の7時に電話をしたところ、予定通りに催行するということだった。電話がつながった際に、集合場所を細かく教えていただけたので、安心して集合時間の8時に現地に行くことができた。日本の感覚では、前日の連絡はFAQやIVRだと思ったし、当日の朝7時に電話がつながるとは思えなかったが、ドライにデジタル化が進んでいそうな米国の会社に、意外にも温かい対応をしてもらえた。

 日本では、代表電話番号を非公開にする企業も増えてきた。それは分かる。ホームページに情報が充実し、部署別の電話番号より各担当者への直通電話が普及している現在では、代表電話番号へのニーズは少ない。怪しい売り込みか、面接に遅刻しそうな学生が慌てて電話してくる程度だという。一方で、販売サポートの電話を閉じてしまい、売り上げへの影響が指摘されているメーカーからは、後悔の念も聞かれる。

 電話を使うのはそんなに悪いことなのか。何も調べずに電話に頼るのは良くないとは思うが、ホームページが見づらい、書いてある意味が分からない、不安だから確認したいなど、何かしら理由があるのだと思う。

 多くのコンタクトセンターが採用難だと悲鳴を上げている。稼働人数が少ないので、呼量削減をしなければならないと必死のセンターもある。だからといって、電話番号を隠して回線を絞ったのでは、大切な顧客の声は届かなくなる。当たり前の話である。

PROFILE
秋山紀郎(あきやま・としお)
CXMコンサルティング 代表取締役社長
顧客中心主義経営の実践を支援するコンサルティング会社の代表。コンタクトセンターの領域でも、戦略、組織、IT、業務、教育など幅広い範囲でコンサルティングサービス及びソリューションを提供している。
www.cxm.co.jp

2026年03月20日 00時00分 公開

2026年03月20日 00時00分 更新

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