
Part.1 <提言>
最重要KPIは応答率、マニュアルやスクリプト以外の発言はNG、どんなに長時間通話でも通話料無料、SVはオペレータのお世話役。こうした「常識」を過去のものとしない限り、コールセンターの運営は必ず行き詰まる。消費生活の変化は、顧客接点に対する期待値も変えている。かつ、労働力不足は解消しない。根本的な解決と時代への適応を図るために、“常識”に疑問を持ち、前提と考え方を見直す──そのポイントを検証する。
国内でコールセンターの設置が一気に進んだのは1990年代後半。約30年の間に運営手法は“型化”され、定石とされるノウハウも蓄積された。しかし、その「常識」がいまや弊害を生んでいる。生成AIの登場でコールセンターの役割・機能に変化が求められつつある今こそ、常識を見直すべきターニングポイントだ。
慢性的な人手不足を補うため、セルフサポートは拡大したが十分な成果を上げられず、顧客体験は悪化している向きもある。例えば、“コスパ、タイパ志向”の高まりにより、企業(サポート)への期待は「正確さやホスピタリティ」から「速さ・手軽さ」へとシフトしている。にもかかわらず、多くのセンターは従来どおり正確性や丁寧さを最優先し、いわばニーズとズレたサービスを提供し続けているかのように見える。
人手不足の背景には、コールセンターが就労者/求職者にとって魅力的な職場になっていない点も大きい。ルールは厳格で自由度、権限が極めて小さい。ストレスフルで社会人、ビジネスパーソンとしての十分なスキルを身につけることが困難──。これは「スクリプト/マニュアル遵守」という“常識”の副作用でもある。
いま、見直すべきコールセンターの「10の常識」を検証する(図)。

Part.2 <座談会>
なかなか向上しない社内での位置づけ、にもかかわらず変わらない品質管理やKPIの設定。相対する顧客の行動やニーズが変わっても、顧客接点であるコールセンターの働き手に求めるスキルや資質、属性、管理手法は20年前から大筋は変わっていない。Part.2では、コールセンター市場を代表する識者と現役マネージャーによる「疑うべき常識」に関する議論を収録する。
<出席者>(順不同)



<モデレータ> コールセンタージャパン編集部
コールセンターのマネジメントが直面する課題と今後の方向性を、3人の専門家が多角的に議論した。参加者は、イー・パートナーズの谷口 修氏、Kiralaの内池智美氏、chottoの山下未紗氏。共通して指摘されたのは、変化する顧客ニーズや労働環境に対し、依然として旧来型のKPIや管理手法に固執している点だ。
谷口氏は「応答率偏重」や「コールセンターのプロフィット化」という発想を誤りとし、サービスレベルや顧客資産維持の視点からセンターの価値を再構築すべきと強調。内池氏は経営がCS部門の情報価値を理解・活用できていないと指摘し、現場と経営の両輪が必要と語る。山下氏は、現場が「コスト」としてのみ扱われる構造を問題視し、センターを「ブランドの顔」「顧客体験を創る場」として再定義する重要性を説いた。
また、AI時代における役割変化にも言及。AIと人の役割を固定化せず、柔軟に最適化すべきとし、SV職やモニタリングも再考の余地があるとした。とくに内池氏は階層を排した自律的運営を実践しており、谷口氏も評価基準の自動化や目的再設定を提案している。最後に3氏は、「問い合わせゼロ=ベストサービス」という考え方や、単一指標に頼らない多角的な評価の必要性を指摘。コールセンターが企業成長の“戦略拠点”となるには、常識を疑い、柔軟で能動的なマネジメントが不可欠だと結論づけた。
2025年11月20日 00時00分 公開
2025年11月20日 00時00分 更新