サポート満足度調査に見る深刻な課題

2025年12月号 <FOCUS/トピックス>

トピックス

2万5000人超を対象としたCS調査に見る
「呼量削減」実践のための深刻な課題

──J.D. パワー ジャパン「カスタマーセンターサポート満足度調査」

コールセンター最大のミッションは、「対応した顧客の満足度向上」だ。国際的な顧客満足度調査機関であるJ.D. パワー ジャパンは、今年も金融業界、EC・通販業界を対象にカスタマーセンターサポート満足度調査を実施。その結果からは、コールセンター業界共通の取り組みテーマとなっている「呼量削減」に対する強力極まりない課題が浮かび上がっている。

 チャットボットの利用は定着したものの、呼量削減に至る重要なファクターに課題あり──顧客満足度調査の国際的機関であるJ.D. パワー ジャパンが毎年、実施している「カスタマーセンターサポート満足度調査<金融業界編><EC・通販業界編>」の2025年版からは、コールセンター業界全体の課題に対する強烈な示唆が垣間見える結果となった。

 同調査は、金融機関もしくはEC・通販サービスにおいてカスタマーセンターサポートを利用した消費者(20~74歳)を対象としたもので、回答者数は金融業界編が2万3562人、EC・通販業界は2668人におよんでいる。コールセンターやカスタマーサポートを対象とした調査としては、国内では最大規模といえる。

 スコアは、総合的な顧客満足度に影響を与えるファクターを設定し、各ファクターの詳細評価項目に関するユーザーの評価を基に1000ポイント満点で総合満足度を算出。構成するファクターは、総合満足度に対する影響度が大きい順に次の通り(カッコ内は影響度)。「利用のしやすさ(問い合わせ先の見つけやすさ、利用できる時間帯、待ち時間、使いやすさなど)」(28%)、「用件に対し提供された情報や回答内容の適切さ」(25%)、「説明の丁寧さ/応対の丁寧さ」(24%)、「問題の解決や対応に要した時間」(22%)。

利用者増えるチャットボットも
垣間見えた「致命的な欠陥」

 図1は、回答者が「直近で利用したサポート窓口・機能」について聞いた結果だ。金融業界では電話(コールセンター)が54%、EC・通販業界でも39%と最も多いが、チャットボットもそれぞれ11%、13%と2ケタに乗せている。とくに若年層ではそれぞれ18%と2割近い利用を占めた。

図1 直近で利用したサポート窓口・機能
図1 直近で利用したサポート窓口・機能

 同調査を担当したJ.D. パワー ジャパンのGlobal Business Intelligence部門 シニア マネージャー、日高 志津枝氏は、「チャットボットの利用率はかなり高まっていて、企業側の導入も進んでいる。しかし、年齢層別に見たとき、高年層(60〜70代の高齢者)の満足度がかなり低いのが気がかり」と指摘する。

 図2に、回答母数の多い金融業界のチャネル別の総合満足度を示す。全体的に高齢者層の満足度が低いが、チャットボットに関してはとくにスコアの低さが際立っている。

図2 チャネル別総合満足度(金融業界)
図2 チャネル別総合満足度(金融業界)

 日高氏は、「総合満足度を構成する4ファクターのうち、『用件に対し提供された情報や回答内容の適切さ』や『問題の解決や対応に要した時間』に対する評価が高年層で低い」としたうえで、「チャットボット利用時の経験として『回答の情報量が不十分』『自分が次に何をするべきかの説明が不明確』と感じた割合が若年層に比べ約10ポイントも高かった。(高年層では)チャットボットを利用しても十分な回答が得られず、時間もかかるため、低い満足度にとどまる傾向があることがうかがえる」と分析している。

 結果、「今後の問い合わせ時に最も優先的に利用したいチャネル」という設問に対しても、高年層では、チャットボットを選ぶ割合が全体よりもかなり低く(チャットボットの利用者全体:34%、高年層:23%)、コールセンターを選ぶ割合が全体よりも高い(チャットボット利用者全体:17%、高年層:30%)という結果になっている。

電話をかける主要な顧客層
「シニアのデジタルシフト」が課題

 コールセンタージャパン編集部が調査した「コールセンター実態調査」では、「運営上の課題」という設問に対し、「呼量削減」は有効回答社数202社のうち、50%を占め、すべての課題項目において2番めに比率が高い。「チャットボットに期待している導入効果」という設問に対しては、導入企業105社のうち、実に76.2%が「電話の呼量削減」と回答しているほどで、これが極めて大きな課題になっていることは明白だ。

 しかし、同じく編集部が毎年実施している「コールセンター利用者調査」では、回答者の年齢層が年々、高まっており、2025年は実に全体の31.8%を60代、27%を70代が占めており、10代は0.1%、20代は1.3%とごくわずかだ。取材を重ねていても、「圧倒的に高齢者層からの入電が多い」という運営企業が多い。

 従って、呼量削減の第一条件は、「いかに高齢者にテキストコミュニケーションを利用してもらうか」と言い換えることもできるはずだ。FAQやチャットボットは、高齢者が使いやすくてわかりやすいUIや表現の工夫が必要といえる。

 また、高齢者には「用件が完了したのか不安」という理由で、ネット手続きが終わった後に、さらに確認のために電話をかけるケースも多い。これを防ぐためには、電話番号で発信できるSMSでの「手続き完了」のメッセージ配信など、これまで以上にきめ細やかなコミュニケーション・ルールの設定も視野に入れるべきだ。

つながりにくいカード業界で
圧倒的高評価を得るアメックス

 図3は、各業界のトップスコア企業のスコア、最高評価を得たファクター、2位とのスコア差をまとめたものだ。

図3 各業界のトップスコア企業
図3 各業界のトップスコア企業

 全4ファクターで最高評価を得たのは、ソニー銀行(ネット銀行部門)、ソニー損害保険(ダイレクト系損害保険会社部門)、アメリカン・エキスプレス・インターナショナル(クレジットカード会社部門)、ヨドバシ・ドット・コム(総合ECサイト部門)、ジャパネットたかた(テレビ通販部門)の5社で、すべてが2年以上、連続してトップ評価を得ている。総合力の高さが大きな特徴と見てよさそうだ。

 なお、全業種・全企業でトップスコアは、昨年同様、アメリカン・エキスプレス・インターナショナルで、同業界における2位とのスコア差もトップとなっている。

 クレジットカード業界は、相次ぐ不正利用や関連スパムメールの大量発信などもあって、各社、コールセンターがつながりにくい状況に陥っている。なかには、コールバック予約を主な電話対応の手段とするところもあるほどで、人手不足は深刻だ。そうした状況においても全業種通じてトップスコアを維持する同社の企業努力は高く評価されるといえそうだ。

(矢島竜児)

2025年11月20日 00時00分 公開

2025年11月20日 00時00分 更新

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