顧客接点、最大の資産を生かす! 生成AI時代の「VOC活動」

2025年11月号 <特集>

特集

顧客接点、最大の資産を生かす!
生成AI時代の
「VOC活動」

Part.1 <現状と課題>

記録、分析、活用──3フェーズの課題を解消する
生成AI活用のススメと「あるべき未来」

生成AIが登場し、コールセンターでのVOC活用は転換点を迎えている。音声認識による全件テキスト化が可能になり、生成AIが分類・分析を担うことで量・質ともに飛躍的な向上が期待できる。しかし、「どう活用するか」が課題である点は変わらない。データ整理の負荷、他組織での活用、経営に対する訴求力といった壁をいかに乗り越えるか。ベンダー企業の技術進化と有識者の視点、先進企業の事例から、生成AI時代のVOC活用の方向性を探る。

 生成AIの導入により、コールセンターにおけるVOC(顧客の声)は「全件分析」が可能となり、量・質ともに飛躍的に向上した。しかし、活用には依然として課題がある。断片的な集計にとどまり改善行動につながらない、センター外部への連携不足、経営層との距離の3点だ。ベンダー各社は「全件分析」「知識化」「現場活用」など異なるアプローチで解決を模索。事例企業も生成AIの活用を通じ、要約やタグ付けによるデータ均質化、潜在的不満の抽出、経営貢献度の数値化などを進めている。今後は、AIの示唆を人が意思決定へ結びつける役割分担と、部門横断の組織体制構築が持続的なCX改善のカギとなる。

図 VOC活用の業務フローに関する課題
図 VOC活用の業務フローに関する課題

Part.2 <ケーススタディ>

「目視確認」「不安定な品質」から脱却!
先進4社に見る“活用前・活用後”の変化と進化

生成AIを活用することで、VOC活動の何がどう変わるのか。「声」の量と質を向上させるために、生成AIをどう使えばいいのか。集める、分析する、共有するという一連のプロセスに労力を要する割に、「報われることが少ない」「形骸化しやすい」とされたVOC活動。Part.2では、JR西日本カスタマーリレーションズ、auじぶん銀行、ビッグローブ、パナソニック エレクトリックワークス社の取り組みを通じて、活用ポイントを整理する。

CASE STUDY 1
JR西日本カスタマーリレーションズ

生成AIがもたらした課題発見と仮説検証
生産性向上の副産物として進化したVOC活動

 JR西日本カスタマーリレーションズは、2022年度からELYZAの生成AIを導入したアーリーアダプターである。当初の狙いは年間200万件におよぶ電話・メール対応の効率化で、応対履歴の要約にAIを活用した。これにより、従来は一部抽出に限られていたVOCを全件フォーマット化し、5W1H形式で整理することで、部門横断的に理解可能な情報基盤を構築した。さらに、要約の長短を調整するチューニングや、ベテランオペレータの記録を参考にしたプロンプト設計を実施し、精度と網羅性を高めている。タグ付けも自動化され、Power BIでの集計・可視化が可能となり、従来困難だった全件分析とトピックの深掘りが実現した。輸送障害の問い合わせ急増把握やICOCA利用トラブルの抽出など成果が現れている一方、感情の「温度感」の補完やタグ設計の最適化といった課題も残る。同社はAIと人の知見を組み合わせ、VOCを経営資産へと進化させている。

CASE STUDY 2
auじぶん銀行

生成AIでキャッチする「潜在的不満」
全社共有と改善速度が飛躍的に向上

 auじぶん銀行のCS本部は2024年末から生成AIを本格導入し、VOC活動を強化した。従来はオペレータの主観に依存していたが、AIを活用することで「苦情」「要望」「ご相談」に加え、見逃されやすい「潜在的不満」を自動で抽出できるようになった。音声認識で記録をテキスト化し、『QANT VoC』に投入する仕組みで、1件の応対から複数の要素を同時に検出可能。さらにAIは改善の示唆も提示し、従来時間を要した改善サイクルを迅速化した。背景には顧客が不満を直接口にしにくい時代環境があり、同社は「能動的にシグナルを拾う」姿勢を重視する。収集データは全社員がダッシュボードで共有し、部門横断で議論・実行する仕組みが定着。取り組みは途上ながら「まず拾えるものから拾い改善につなげる」方針を掲げる。将来的にはVOCの経営貢献度を数値化する「経営インパクト指標」を開発し、声の大小ではなく経営への影響で改善優先度を判断する体制構築を目指している。

CASE STUDY 3
ビッグローブ

ジャーニー上の全痛点を解消する!
VOCを600パターンに分類・集計

 ビッグローブは、組織横断で推進しているCX向上全社プロジェクトを推進。そのなかにVOC/調査分析WG(ワーキンググループ)を設置し、Google Cloudの生成AI『Gemini』の活用による電話のVOC分析の精度を向上する基盤を整備している。

 VOC分析における「可視化」「整理・分類」に生成AIを活用。通話内容から「フェーズ」「問い合わせカテゴリ」「コールリーズン」を判定して600パターンに分類。通話データ全件をスピーディーかつフラットに細分化できるようになったことでVOCの解像度が高まり、改善施策の精度向上や優先すべき改善施策の明確化につながった。

CASE STUDY 4
パナソニック エレクトリックワークス社

VOC活用の2大課題「収集」「分析」プロセス
生成AIで限界突破に挑む

 パナソニック エレクトリックワークス社は、約20年前からテキストマイニングを活用したVOC(顧客の声)分析を行ってきたが、オペレータの入力のバラつきによるデータ信頼性の低下と、単語単位分析の限界という2つの課題を抱えていた。これを解決するため、同社は音声認識と生成AIを導入し、データ収集から分析まで自動化する新体制を構築中だ。具体的には、RightTouchの『QANT VoC(旧RightVoC by KARTE)』で問い合わせ内容の自動整形やトレンド可視化を行い、Flyleの『AIインサイト分析プラットフォーム』で潜在ニーズを探索する。両ツールを連携させ、2026年春までに全社展開を目指す。これにより、顧客接点から得られる情報を迅速かつ精度高く活用し、商品企画や業務改善につなげる狙いだ。

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2025年10月20日 00時00分 公開

2025年10月20日 00時00分 更新

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