
Part.1 <現状と課題>
生成AIの登場・普及と先行き不透明な採用市場──コンタクトセンターは変革の過渡期といえる。現場、経営、関連部署、顧客とステークホルダーが多彩かつ複雑な関係性のなか、それぞれに対して価値創出が求められるセンター長の役割や必要スキルもまた、変化が求められるのは当然の流れだ。先進企業で活躍するセンター長の声とアンケート調査から、次世代型センター長の「要件」を探る。
コンタクトセンターの現場は今も昔も忙しい。顧客接点であるがゆえに、世相や社会制度、ルールの変化の影響をまともに受け、かつ生産性向上が求められる労働集約型の現場のため、新しいITソリューションの導入が真っ先に試行される「実験場」の様相も呈している。マネジメントには、多種多様な人材に安心感を与える「軸のブレなさ」と、そうした変化を受け入れる「柔軟性」という、一見、相反する要素が求められる。
一方で、いまだ多くのセンターが「人手」に頼る労働集約のままで、マネジメントの主業務も人材管理に偏りがちであることも否めない。加えて、価値創出部門という、センターが目指す存在意義に対する社内の理解も進んでいない。
センター長には、すべてのステークホルダーの“利”を先取りにして計画・実行する、経営視点・顧客視点・従業員視点の三位一体のマネジメントが不可欠だ。
センター長に求められる資質について、先進的な企業のセンター長たちに聞いた。ヒアリングをもとに、編集部では『センター長に求められる要件』を30項目に整理し、チェックリストとしてまとめた(図)。さらに、センター長23名に自己採点してもらった結果を基に、現場で重視されている資質やスキルを検証する。

Part.2 <インタビュー>
Part.2では、「コンタクトセンター・アワード2024」でマネジメント・オブ・ザ・イヤーを受賞した4名の取り組みを検証する。ES向上や自律型組織の構築、データに基づいた経営へのアピール、情報共有の徹底によるスムーズなDXの推進など、変革期に求められるセンター長の役割を果たしている。共通するのは、経営/現場/顧客視点のバランスの良さだ。偏らずに最適解を模索することが、施策の推進力につながっている。
「コンタクトセンター・アワード2024」でマネジメント・オブ・ザ・イヤーを受賞した4名は、経営・現場・顧客の3視点をバランス良く持ち、変革期に求められるセンター長像を体現している。ネスレ日本の宮崎康司氏は業務改善と人材育成を両立、DHLジャパンの堅木 裕氏は現場の自律促進、読売新聞東京本社の多和田 元氏はデータで経営を支援、NTTマーケティングアクトProCXの永野 亮氏はKPI達成と収益構造の変化に対応。共通点は戦略的視点と高い経営提言力である。




2025年07月20日 00時00分 公開
2025年07月20日 00時00分 更新