
ジュエリーは、一生を通じて身に着けられる「一生もの」。「身に着ける人の日常や人生に彩りを添える存在として、価値観やライフスタイルを反映したデザインが求められます」──そう語るのは、東京・南青山に路面店を構えるジュエリーブランド「Shelby」のデザイナー、AKIさんだ。「1人ひとりのお客様の人生や想いに寄り添うものを作りたい」という想いのもと、既存の商品とは異なる特別なサービスとして、オーダーメイドジュエリー・リバイブ(リメイク)ジュエリーのデザインを提案している。
技術的な美しさだけではなく、「贈り主、あるいは身に着ける人の想いや価値観」もデザインに込めるため、依頼を受ける際は、入念なヒアリングを実施。デザインの好みだけではなく、「どのようなシーンで身に着けたいのか」「自分をどう見せたいのか」など、要望の“具体化”となる情報を聞き出してカタチをつくっていく。AKIさんは「お客様がすべての答えを持っている」と強調する。
例えば、「仕事をする際に身に着ける」と一口に言っても、仕事の内容や志向によって、適切なカタチは異なる。PC操作の多い仕事だから「邪魔にならないネックレスがいい」という場合もあれば、反対に「モチベーションアップのために視界に入るリングがいい」という場合もある。これらの情報に、「シャープ」「マニッシュ」など、顧客の好みを反映したデザインを提案している。
新規依頼の場合は、顧客の好みを把握するうえで、店内にディスプレイしているジュエリーを見せながら会話を進める。この際、声のトーンや表情の変化も「顧客を知る」貴重な情報となる。話し方や話題を変えるなど、会話が弾みやすい環境づくりも欠かさない。
リバイブの依頼の場合は、大切な誰かから受け継いだジュエリーを“蘇らせる”という観点で、いまは身に着けられていない理由とともに、依頼の背景にある贈り主やジュエリーへの想いも聞き出すことを心がけている。「身に着けられるようにしたい、というシンプルなご依頼から始まることが多いのですが、お話を引き出していくうちに“こうできたらいいのに”というご要望が出てくることが多いです」(AKIさん)。会話中の沈黙は、「過去を思い返したり考えたりする時間」と捉え、あえて言葉を差しはさまず、相手の言葉が出るのを待つようにしている。
例えば、ある女性から、「亡くなった母親に生前買ってもらったパールのネックレス」のリバイブを依頼された。当初、“指定したデザインで作ってほしい”という要望だったが、ヒアリングで得た「姉妹であること」「形見であること」を踏まえ、1本の素材を半分に分けて、2本のネックレスに仕立てたところ、「姉妹で本当の意味での形見分けができました」という、喜びの声につながった(写真左下)。
「華美で日常使いする場面がない」というダイヤモンドが散りばめられたリングは、「さまざまな場面に合わせて身に着けていたい」という要望を汲み、素材を分けて3本のシンプルなリングにして、単体でも重ね付けしても使えるようにすることで応えた。
時には、デザインをカタチにする段階で、納期の遅れが発生してしまうこともある。その場合は、AKIさんが橋渡し役となって、職人から制作状況を聞き出して顧客に伝えている。「可能な限り迅速に、職人さんの想いや考えも含め、つぶさにお伝えして、ご相談をするようにしています」と、AKIさん。「ジュエリーが出来上がるまでの物語の一部として“待つこと”も楽しむわ」と、ポジティブに捉えてくれるお客様が少なくないという。ネガティブな情報は伝えるタイミングが遅れれば遅れるほど、企業への印象を悪化させ、離反を招く。顧客と真摯に向き合う姿勢がもたらした好例と言える。
顧客が出来上がったジュエリーを手に取って、心が動く瞬間を見た時にやりがいを感じるというAKIさん。今後も、顧客の人生という物語に華を添えるデザインを追求していく。

会員限定2025年07月20日 00時00分 公開
2025年07月20日 00時00分 更新