コールセンター
InterMedia 代表 野原裕美
社内外から評価される業務改善事例とは、ほぼ例外なく、コンタクトセンター単体での取り組みに限定されず、他部署やパートナー企業との一体感を感じさせる。今回は、過去の「月刊コールセンタージャパン」に掲載された事例記事から、著者がその独自の視点でとくに目を引いたベストプラクティスを抽出。内容を分析する(取り組み内容はすべて掲載当時のもの)。
事例分析を通して印象的なのは、それぞれの取り組みが綿密に設計・実行されていることだ。コンタクトセンターの変革・進化は、多面的なチーム戦。各事例のリーダーは、目先の問題解決だけにとらわれず、俯瞰した視点を持ちながら全体を設計し周囲へ働きかけながら成果を出している。
ウォーターサーバーの解約率上昇をきっかけに、外部委託していたコンタクトセンターを内製化。カスタマージャーニーを描くことで課題を可視化し、施策を洗い出した。オムニチャネル化、情報発信、Webの行動解析など、さまざまな取り組みを重ね、同時並行的に人材育成にも着手。必要なスキルの可視化など、取り組み全体が「点ではなく面」として機能していることが大きな特徴といえる。とくにMission/Vision/Valueの浸透に注力することで、チーム力を大きく強化していることが成功の最大のポイントと読み取れる。
サイボウズはパーソルコミュニケーションサービス(掲載時は富士通コミュニケーションサービス)など複数のBPOベンダーに業務委託。マルチベンダーをマネジメントするポイントとして、(1)こまめな品質チェック、(2)課題の整理と振り返りの徹底、(3)ベンダー間の情報共有とコミュニケーション、(4)関係者による直接会話の機会創出──などの取り組みを実践、カスタマーサポートの価値を高めている。
KDDIの業務委託事例。問い合わせ内容の変化や複雑化に対応するため、さまざまなITソリューションを駆使。従来のサンプリング型のモニタリングやアンケートに加え、音声認識システムを駆使した全件評価、生成AI活用などを進めた。とくに「顧客だけではなく現場でのメリット」を強調するために、全管理者向けの勉強会やアンバサダーの起用など、足並みを揃える取り組みは大型センター事例として秀逸といえる。
多様かつ複雑なサービスの利用者を支援するため、マルチスキル型のセンターを志向。オペレータ支援システムとして、生成AIを活用したFAQやメールのテンプレート構築を進めた。とくに大きな効果が創出されたのはSVの業務負荷軽減で、それによってオペレータも安心して働くことのできる環境を整備、カスタマーエクスペリエンスにも大きく寄与している。
2025年06月20日 00時00分 公開
2025年06月20日 00時00分 更新