本誌記事 ケーススタディ ベルタ

ベルタ

購入後のプロアクティブコンタクトで伴走支援
BtoCで“カスタマーサクセス”を体現

女性のライフステージにおける課題や悩みにアプローチする商品やサービスを展開するベルタ。同社で顧客対応全般を担うのが「カスタマーサクセスDiv.」だ。単に商品やサービスの説明に終始せず、接点をもってくれた顧客と長く付き合うためにどんな悩みでも相談できる窓口を整備し、独自のブランド戦略でLTV向上を推進する。

 妊娠前から産後・育児、さらには壮年期・老年期に至るまで、「女性のあらゆるライフステージに合わせた課題解決」を目指し事業を展開するベルタ。サプリメントやドリンクなどのフェムケア商品から、保険サービス、各種専門家による相談サービスなどを多角的に展開。女性の悩みに寄り添い、ライフステージ変化にあった最適なサービスを提供するのが、ライフステージマーケティング事業だ。

 同社は2013年に自社オリジナルの酵素ドリンクを提供開始。当初は価格面でのオトク感でしか顧客価値を打ち出せずにいたが、顧客の悩みや要望に対してヒアリングを重ね、ライフステージの変化における悩みに着目し、あらゆる世代を対象にして商品を開発。また、LINEやWebサイト上で、薬剤師や助産師、ファイナンシャルプランナーなど、部門内に在籍する専門家に無料で相談できるサポート体制を整備、多角的に顧客の問題解決につながるサービスを提供している。同社は「本当の意味での顧客満足」を考え、顧客ごとのライフステージ変化による悩みに向き合い、カスタマーサクセスの“解”を追求してきたといえる。

サクセスの一手段として
社員専門家への無料相談を提供

大島由紀氏
カスタマーサクセスDiv. リーダーの大島由紀氏

 顧客対応部門は、顧客サポートを管轄する「カスタマーサクセスDiv.」と、顧客動向などの数値データの管理を担う「カスタマーリレーションDiv.」で構成。スタッフは約20名で、チャネルは電話やメールのほか、LINEアカウントも開設している。

 主なミッションは、顧客とライフステージ変化の中で長期的な関係を築くこと。問題解決につながる最適なサービスを提供するためにも、顧客にとって相談しやすい窓口を目指している。具体的には、初回の商品購入後にアウトバウンドで電話をかけ、商品を購入するに至った経緯や疑問点をヒアリングし、商品の服用方法を説明する。困った理由の解決につながるような専門家相談サービスや別の製品紹介などを通して、「本当の意味での問題解決」を支援する。「ドリンクやサプリ1つをとっても、購入目的はお客様によっても異なり、必ず何かしらのお困りごとを抱えています。ご要望いただいた商品だけではなく、お客様がなぜその商品を必要としているのか、今どのようなライフステージにいるのかをヒアリングしたうえで、本当に必要な商品やサービスをお伝えしています」とカスタマーサクセスDiv.リーダーの大島由紀氏は説明する。大島氏は、自身も妊活マイスターとして相談業務を担当している。解約相談を受けた際も事務的な対応に終始せず、「なぜ解約したいか」を把握して最適な選択肢を探る。顧客理解を最優先事項としていることから、その理由に応じて別の商品やサービス、定期契約の休止などを提案する。「一時的な悩みを解決して終わりにしないのが我々のモットー。商品に対する悩みだけでなく、今お客様自身が抱える悩みをいつでも打ち明けられる体制を目指しています」(大島氏)。

 電話やメールなどの日々の顧客対応、解約時などのアンケートから得られた商品・サービスの要望(VOC)は、社内ポータルサイトで共有。VOCはWebサイトのUI改善や商品ラインアップの拡充などに活用されている。VOCを起点とする改善施策は、Webサイト上に「お客様の声をもとにしたサービス改善事例」ページを設けて公開している()。

図 サービス改善事例をサイト上に公開
図 サービス改善事例をサイト上に公開

LTV最大化に向け
“複数サービス活用度”を重視

 長期的な関係構築において、KPIが直近の売り上げを中心に展開せざるを得ない企業は多い。同社では長年の実績から、「長期的な関係構築ができている顧客ほどLTVが高い」という仮説に基づいてKPIを再定義した。具体的には、リピート購入率とは別に、相談窓口や各種イベントへの参加傾向をもとに集計した「複数サービス利用率」や、ライフステージの変化に応じた別商品・サービスへの変更といった「ライフチェンジ率」を設定。個々のユーザーが抱える悩みに応じて最適なサービスを提示している。大島氏は、「本当の意味で女性のライフステージの課題を解決するために、我々と接点を持って下さった方々と、長く付き合っていける関係を築いていきたい。商品購入後のアウトバウンドが最初の接点になることが多いのですが、そこでのコミュニケーションをきっかけに、『大島さん、いますか』と指名してもらえるようになることも、ひとつの評価指標としています」と説明する。

 真の意味で寄り添った顧客対応を実現するには、スタッフ自らが考えて行動できるグループ体制が欠かせない。同社では「スタッフの主体性」が育まれる環境を整えている。例えば、イン/アウトバウンド時の必須スクリプトは「あいさつ」と「自己開示」に限定し、それ以外の対応はスタッフの判断に委ねている。カスタマーサクセスDiv.が目指す理想像は、「友人以上に語り合える関係」だ。単に「モノ」を届けるのではなく、顧客の悩みを解決することに向けた情報、寄り添うといった「コト」を届けていくことで、真のサクセスを実現していこうと考えている。

(月刊「コールセンタージャパン」2024年6月号 掲載)

2024年05月20日 00時00分 公開

2024年05月20日 00時00分 更新

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