本誌記事 ケーススタディ ベーシック

競争力を高める真の“部門間連携”

ケーススタディ ベーシック

成長を支えた“ハブ”としてのカスタマーサクセス
競争力を高める真の“部門間連携”


BtoBで SaaSを軸にビジネス展開している企業の多くが、「カスタマーサクセス部門」を設置している。新規導入も重要だが、サブスクリプションというビジネスモデルにおいては「利用継続と拡大」こそが成長のカギ。CMS(コンテンツ・マネジメント・システム)をはじめとしたマーケティングツールを提供するベーシックもその取り組みを進めている。



 カスタマーサクセス部がさまざまな部署のハブとして機能し、企業を成長させる。そうした事例のひとつといえるのがベーシック(東京都千代田区、秋山 勝代表)だ。
 同社が提供する「ferret One(フェレットワン)」は、サイト制作(CMS)から問い合わせ管理、メール配信、LP(ランディングページ)作成、キャンペーン管理など、BtoBマーケティングに必要な機能をオールインワンで提供。とくにネットビジネスのプロセスでDXを強力に支援する。
 同社は提供するソリューションごとの部門構成で、ferret One事業部配下には専属のカスタマーサクセス部門がある。所属する人数は約40名、雇用形態は正社員と契約社員がおよそ半分ずつの構成だ。
 サクセス部門の主なミッションは「顧客のWebマーケティングを成功に導く」であり、体制としては4つのグループに分かれている。営業受注直後のフォローを担う「オンボーディンググループ」は、操作方法から成功体験に至るまでの初期段階を支援する。「アカウントサクセス」は、導入後1~2年を経て、状況が変化した顧客への定期的なフォローを担当。解約阻止やアップセル・クロスセルなども行う。「制作」は顧客のサービスサイトの改修および運用を行うため、ディレクター、デザイナー、ライター、コーダーが所属する。「ソリューションプランニング」は顧客サイトのSEO対策や記事・ホワイトペーパーの作成、コンサルティングなどのサービスを提供する。

ハブとしての役割を果たす
部門間連携と施策提示

 サクセスの役割として最も重要なのが、部門間のハブとしての役割を果たすことだ。日々、顧客と向き合う中では当然、クレームもある。その声から「どこに課題があり、不満を感じているのか」を把握する。クレームの原因は、CS内だけの問題にとどまらず、受注時に営業が生んだ齟齬やプロダクトの課題など多岐にわたる。
 「自社の課題を最も解像度高く理解できるのが、サクセス担当者」と島田翔平氏が話すように、さまざまなボトルネックは、顧客対応を通じて読み取ることができる。そこから、プロダクトや事業全体のプロセス改善を社内に提示したり、成功事例の共有により営業支援につなげるなど、単独でバリューを出すのではなく、ハブとなって各部門と連携することを何より重要視している。この点は、さまざまな業種のコンタクトセンターにおけるVOC活動と共通している。
 同社においては、商談にプロダクトの責任者も同行してヒアリングすることもある。全部門一丸となって「ferret One」を良いものにし、売上げを上げていく考えだ。
 一方、カスタマーサポートは、エンジニア経験のあるスタッフが多く所属し、インバウンド中心でテクニカルな問い合わせに対応している。もちろん、同じ顧客接点としてサクセスとサポートは密に連携しており、サクセス担当者が「お客様からこのような要望があるがどうすればできるか」などの相談機会も多いという。
 部門間連携によって顧客の声から製品を強化、サクセス部門からさまざまな情報を発信することで適切な機能を利用してもらい、クライアントの成長につなげる。各部門が単独で機能するのではなく、同社の特徴である「つながるカルチャー」が強い組織とプロダクトを作っている。 


テックタッチ成功を導く
ツール利用の「WOW」体験

 「これまで、ハイタッチ型のアプローチに偏ってきたのが課題のひとつ」と話す島田氏。現在、オンボーディングを含めた全プロセスの顧客対応で、テックタッチを使った自己解決を促進している。 ただし、単にツールを提供するだけでは、使ってもらえない。島田氏は「重要なのはWOWの体験」という。「実際に使ってみたら、超簡単にできた!」「人に聞くより早くてわかりやすい!」という驚きの体験がテックタッチには重要です」(島田氏)。


 やりっぱなしではない、顧客の反応を丁寧に検証しつつ自動化を進める点は、チャットボット導入後、なかなかアップデートできないコールセンター、カスタマーサポートが参考にすべき点だ。具体的な例を画像に示す。ログインすると、顧客の利用状況に応じてありがちな疑問点がポップアップで表示される。いわば「先回り型」のセルフサポートだ。例えば、オンボーディングの段階であれば、「設定」で多い問い合わせに誘導。顧客ごとにカスタマイズされたテックタッチこそが“本当に使われるツール”になり得る。
 「今後はMA機能を強化し、さらにリード獲得を促進したい」と意向を示す島田氏。そのうえで、「今は必ずしも商談受注につながる貢献ができていない」という課題も認識している。「製品とノウハウは常にセットで提供すべき。企業や製品、サービスのカイゼンと成長にサクセスは不可欠な存在です」(島田氏)。





 

2024年01月31日 18時11分 公開

2022年10月20日 09時29分 更新

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