クレーム対応のレシピ 第34回

IT化で変わった企業と消費者の「力関係」
置き去りにされた顧客を苦情対応で救おう


著者:JBMコンサルタント 玉本美砂子
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      「ジョン・グッドマンの後は、グットマンならぬグッドウーマンです! 」。シ~ン……真っ白な世界。伏し目がちの客たちの中で、流れる汗の冷たさに凍える体を誰に受け止めてもらおうか?

 「コールセンター/CRMデモ&コンファレンス2013in東京」で、私は苦情対応とクチコミの効果「グッドマンの法則」で知られるジョン・グッドマン氏の基調講演の後に、「コールセンターの役割・ミッション、そこで働くということ」の演題で講演させていただいた。

冒頭のスベリ発言はその時のものである。冷や汗のまま講演を続けたが、さぞかし片腹痛い思いを聴講者にさせてしまったことと思う。 

 今回は、「お客様の力」について考える。

 従来、生産者と消費者の力関係で弱い立場とされるのは消費者側だった。消費者保護法やPL法も弱い立場の消費者を守ろうとして生まれたものだ。だがコンタクトセンターで受け付けるクレームや理不尽な電話に日々接していると「本当にお客様は弱い立場なのだろうか?」と疑問を抱くこともあるだろう。

 近年は、消費者の力がずいぶん強くなったようにも感じる。とくに、学校・習い事・教習所などの教育関係や医療ではその傾向が強い。先生もお師匠様も、昔に比べてずいぶん弱い立場になったものだ。

 だが、本当にお客様は強くなり、強いからこそクレームを訴えるのだろうか? 

 このことについて先日、友人から苦い体験を聞いた。

ある大手通販サイトで、ITオンチの友人が手違いで同じ物を2つ注文してしまった。おまけにカード決済と商品代引きとで支払いが二重になった。

返品・返金の連絡をしようとしたが、商品には電話番号が載っていない。サイト上の〈電話する〉をクリックし折り返しを受ける形でようやく電話がつながった。ネットが苦手だから電話をしようとしているのに、電話につなげるためにネットの操作が必要だとはこれいかに。

結局、返金してもらうまでに4回ほど別々のオペレータとやりとりする羽目になり、とうとう声を荒げてしまったという。

 すると、一応、謝罪はしてくれるものの、申し訳なさそうな雰囲気が伝わらない。こちらは顔の見えない「巨大な組織とIT」を相手に腹を立て、相手もまた大きなシステムの中で起きることだと割り切っている感じがしたという。

 IT・ハイテクノロジーの前に、ますます弱い立場になっている顧客もいるのではないだろうか。

 ジョン・グッドマン氏の講演によれば、「VOC(顧客の声)」に耳を傾け、改善することがクチコミによる企業評価の向上につながるという。組織が大きくなり、システマチックになり、テクノロジーが進む中で、置き去りにされている顧客は少なくない。クレーム応対とはそういう顧客の声を拾う場ではないだろうか。
 今回はこれでおしまい。「ジャ~・グットバイ!」

(コンピューターテレフォニー2014年1月号掲載)

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2024年01月31日 18時11分 公開

2016年06月29日 16時54分 更新

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