コールセンター「進化の担い手」 QAの選び方/育て方第3回

 

採用/育成の共通ポイント
「分析力」の有無を見抜く


QAを設置する際にまず悩むのが、「どのような人材がQAにふさわしいか」ということだ。新規採用する際には、QAの役割にマッチする経験やスキルを持つ人材を見極めなくてはならない。一方、既存スタッフから選出する際にはどれだけ自社業務や応対についての知識を持っていても、品質管理者としてのスキルを一から教育しなおす心構えがQA設置を成功に導く秘訣だ。


著者:B-コミュニケーション 高橋珠実
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  今回は、「モニタリングの専門家」であるQAを新規に選出する際のポイントを解説する。

 QAの選出法は、外部採用と内部育成と2つがある。
 QAを外部から採用する場合、コールセンター経験者の採用を前提に考えるケースが一般的だ。具体的には、オペレータやSV、QAの経験を持つ人材を対象にする他、FAQ作成やシステムの企画、変更、コール分析を担当するシステム担当者の経験を有する人材も、十分にスキルを発揮、活用できると思われる。オペレータ経験者であればモニタリングスキル、SV経験者であれば応対ルールが適切であるかの判断力、トレーナー/QA経験者ならば個別改善以外に全体を把握するための傾向分析のスキル――などがあるかどうかを、採用の場面でチェックする。採用時にそれぞれのスキルが不足していることがわかっていれば、それを習得するために要する時間をあらかじめ算出しておくことも必要だ。

 QAを採用する際に見るべきポイントは、①オペレーション解析、②顧客満足度分析、③クレーム分析――の3つの能力があるかどうかだ(図1)。

図1 QA業務に活かせる経験


課題発見力と顧客視点が必須

 オペレーション解析とは、日常の応対業務のモニタリングを通して、応対の不足原因や流れに課題がないかを解析することだ。この業務を担当するためには、業務内容を把握していくことも大切だ。そのため外部採用後には、ある程度の時間をかけて業務内容・知識を学ぶことが必要となる。

 顧客満足度を分析するためには、顧客目線でのチェック力が必要となる。QA担当者の経験はモニタリングを分析する知識面で重要となる。企画などのスキルは、収集方法の選択や分析結果をあらゆる視点で評価する場面で必要だ。また分析を強化するのであれば、情報システム、SEの経験では、より低コストで効率的にシステムを活用した分析手法や必要なソフトの選択の場面でスキルが発揮できる。1つひとつの事例にこだわりすぎないで、視点ごとのモニタリング力の有無をチェック、またあわせてそれらを表現する文章力なども、傾向分析のためには必要だ。

 苦情、クレーム分析に必要なスキルは、電話業務に限らず対面も含めた応対スキルが必要だ。苦情を分析する場合には、顧客との対話を構成する場面をシーンごとに分析して、要因を突き止める必要がある。営業経験を持つ人材は顧客とのコミュニケーションスキルが発揮でき、企画の経験があれば応対を分解して要因解析できるスキルが活かせ、相談室経験の保持者には会話を通した顧客のニーズを把握するスキルが期待できる。もちろんセンターSV、トレーナー、QAも、それぞれの経験を活かすことはできるが、上記のようなスキルを身につけていく必要がある。

生え抜きは業務知識に頼りがち

 一方で、キャリアパスの一環としてQAという役割を設置し、既存スタッフからQAを抜粋、育成しているセンターも多くある。

 内部起用の一番のメリットは、業務内容を熟知していることだ。しかし、SVやオペレータからの昇格者にありがちな「自分だったらこうする」という視点でモニタリング評価が偏ってしまうことが多く、指摘事項ばかりになってしまったり、改善するための取り組み施策が「知識を身につける」か「応対を良くする」といった感覚としての取り組みになりがちであるため注意が必要だ。「今までしていたから」または「業務がわかっているから」と、過去の経験値に任せきりにするのではなく、センター運営の目標を具体的に検討するためにも、資質を新たに教育していくことは大切だ。

新人QAが陥る4つの傾向


 担当者を決定し、業務改善、分析の為にモニタリングを開始すると個々のスキルの違いによって、評価がずれることがある。

 スキルや経験が安定していないQAがモニタリング時に陥りやすい傾向は、寛大化、中心化、ハロー効果、論理的錯誤――の4つが見られる(図2)。寛大化は、対象者から悪く思われたくないという意識から陥る傾向だ。点数を判断するスキルが未熟で自信がないと無難な判断をする中心化という症状もあらわれる。また1つの評価が他の評価項目の判断に影響するハロー効果や、「この人はいつもこう」という思い込みや拡大解釈が判断を左右する論理的錯誤などにも注意が必要だ。

図2 新人QAが陥り易い傾向


 このため、1人のモニタリングの結果を全てとせずに、必ずグループで評価結果をカリブレーション(基準あわせ)して、評価が偏らないようにするべきだ。たとえQA担当者が1名であったとしても、モニタリングを評価や分析に使用する場合には、マネージャーやSV代表者など複数名でグループモニタリングを行い、偏らないようにする必要がある。

 また、スタッフを新しく迎えるときには、同じ音声を使用して、何回かグループモニタリングをくり返しトレーニングすることで、そのスタッフの癖や陥りやすい傾向が見えてくる。ズレやブレを確認し、くり返し修正していくことで、基準をあわせ、同じ目線で取り組むことが出来てくるものだ。基準を明確にし、あわせていくことは、時間がかかったとしても、品質基準を作成していく上で重要なことだ。

(コンピューターテレフォニー2008年12月号掲載)

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2024年01月31日 18時11分 公開

2013年02月22日 11時58分 更新

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