SVのためのオペレータ指導要綱第2回



余計な気遣いと過剰な応対技術は不要!
オペレータとの『役割の違い』を意識すべき


20代半ばのSVが、平均年齢40歳のオペレータをマネジメントする――こうしたシーンはコールセンターではめずらしくない。オペレータに気を遣いすぎて上手く指導できないことを悩むSVは多いが、実はオペレータ側はベテランほど“役割の違い”を認識しており、的確な指導を求めているものなのだ。今回は、スムーズな指導を実施するのに必要な“心構え”について説く。

著者:市場通信 石橋由佳
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 今回は、SVの“気の持ち方”に焦点を当て、オペレータ指導のコツを解説します。

 世の中にはさまざまな仕事がありますが、コールセンターほど品質が「人」に左右される業種も少ないのではないでしょうか。個々のオペレータのスキルやモチベーションなどはもちろん、精神的なコンディション、職場の人間関係などさまざまな要素がセンターのアウトプットである電話応対そのものに直接影響を及ぼします。

 このため、SVは「オペレータに気持ちよく働いて欲しい」と考える傾向が強いようです。センターをマネジメントする上でこの気持は不可欠ですが、これが行き過ぎてしまい、SVが気を遣い過ぎている現場が少なくありません。例えば、時には厳しいことを言わなくてはいけないことがあってもなかなかそれを言い出せず、ついへりくだって笑いにつなげる会話を展開してしまう。少し話を聞いてもらう場合にも「○○さん、お忙しいところすみません、少しお時間を頂戴してもいいですか?すみませんね、ありがとうございます」など過度にへりくだるSVが散見されます。

■応対の上手さや年齢にこだわらない

 SVからよく相談されるのが、「自分よりキャリアが長い、あるいは年齢が遥かに上のオペレータをどう指導したらよいかわからない」というものです。オペレータ経験を経てからSVに就任するキャリアステップを用意しているセンターがほとんどですが、必ずしもオペレータとしてトップレベルになることをSV昇格の条件としているかというとそうではありません。このため、「電話応対が自分よりずっと上手なオペレータ」や、「10歳以上も年上のオペレータ」をSVがマネジメントしなければならないというケースはめずらしくありません。結果として、「どう指導したらよいかわからない」となるのです(図1)。

図1 SVとオペレータの関係


 一方、オペレータ側は「年齢」や「キャリア」に対し、意外とこだわりがないものです。とくに現場に長いベテランであれば、SVと自分(オペレータ)の“立場の違い”を認識しているからなおさらです。必要以上に気を遣われると、オペレータは「色々と言ってはくれているが、一体、何が言いたいのだろう?」「そんなに気を遣わずに普通にいえばいいのに……」という小さな苛立ちが心の中に芽生え、かえって話に集中できなくなることもあります。

 余計な気遣いよりも、心がけるべきポイントは、「伝えたい内容」を「率直にわかりやすく」伝えることではないでしょうか。もちろん、指摘の内容が的外れだったり、勉強不足を露呈するようではオペレータからの反発は必至ですから、SVが真剣に各オペレータの応対を聞いたうえでの指摘であることが大前提です。

■スーパーオペレータである必要はない

 オペレータを指導する立場として、SV自身も優れた電話応対ができれば言うことはありませんが、それは最重要課題でも必要条件でもありません。SVとオペレータは、役割が違うのです。

 SVとして最も重要なことは、『オペレータを活かす』ことです。必ずしも、自身が万能の“スーパーオペレータ”である必要はありません。たとえ、オペレータの範となるような優れたスキルを持ち合わせていたとしても、それを指導できなければSVとしての資質には欠けているといえます。

 また、電話応対は内容に応じて求められるスキルも異なります。SVは自身がそれらのスキルを網羅して身に付けるよりも、①センターが理想とする応対と個々のオペレータのコンディションを適切に“把握”する、②オペレータ個々の成長のタイミングに応じて課題や伸ばしたいスキルを設定し指導する――という2点が重要です。(図2)

図2 SVの役割


■想いをオーバーなくらい伝える

 最後になりますが、指導の際には、「この人を伸ばしたい」という熱意を持っていただきたいと思います。また、気持ちを持っているだけではだめで、オーバーなくらいで日々伝えていくことが大切になります。指導には冷静な判断や適切な指摘が欠かせませんが、オペレータも人間ですから、「この人の役に立ちたい」という真摯な思いや熱意にこそ心が動かされます。もし、SVが自分の業務知識やスキルに不安を持っていたとしても、無理をせず、「私も(このスキルは)苦手なのですが、一緒にがんばりましょう」などと正直に話をすると良いでしょう。「共に成長する」という意識とアプローチを共有することで、きっとよい方向に行くと思います。

 「オペレータは顧客に相対しているとき、自分のスキルを振り返る余裕がない」という事実を忘れてはいけません。オペレータは、「このお客さまは満足していただけた」とか、「難しい方だった」という感想は抱けても、「今回の応対のスキル上の問題点は…」と振り返ることは難しいでしょう。だからこそ、冷静かつ客観的な視点で判断し、アドバイスをしてくれるSVの存在はオペレータにとって非常に意味のあるものと言えます。モニタリングのフィードバックはややもすると、現場の不満を聞く場になったり、「コミュニケーションを円滑にするため」にオペレータ中心の時間になりがちなものですが、SVは、「スキルを伸ばす」という目的を明確にしたうえで、イニシアチブを持って現状に関する率直な指摘を行うことが重要です。

 今回は、具体的な指導方法というより「心構え」的な話になりましたが、実は指導の結果(スキルアップ)に最も影響する内容と言えます。

(コンピューターテレフォニー2012年1月号掲載)

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2024年01月31日 18時11分 公開

2013年02月22日 14時00分 更新

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