~SVの自分磨き~ロジカルで行こう!第1回



改善案やVOC活用に有効!
「MECE」を用いた分類手法とは


オペレータフォローからVOC分析まで多岐にわたるSV業務。これを、より効果的・効率的にするのが「ロジカルシンキング」だ。多忙極まるSVだからこそ、あわただしく目先にとらわれた仕事の仕方を避ける必要がある。論理的思考の技術は、マネジメントの潤滑油。身に付けなければ、現場は回り始めない。

著者:Y'sラーニング 浮島由美子
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 「ロジカルシンキング」、書店のビジネス書のコーナーに行って、この言葉を見ないことはありません。「ビジネスではロジカルシンキングが大切」、「これさえできれば問題解決」という言葉が躍ります。

 「ロジカルに考える」とは何でしょうか。私たちの仕事では、どこに役立つのでしょうか。

 本連載では6回にわたり、「ロジカルシンキング」とは何か、コンタクトセンターの現場で具体的にどう役立てられるのかを考えていきます。

■「思考の技術」を身に付ける

 ロジカルシンキング、すなわち「論理的に考える」とは、次のような行為を指します。

・結論に対する根拠を矛盾なく明示する ・原因を正しく掘り下げて推定する ・数ある対応策の中から、思いつきではない合理的な対策を選定する ・遅滞なく実行できるよう、理にかなったプロセスを組み立てる  これらは、誰もがいつでも行おうとしていることではありませんか?

 ロジカルシンキングとは、「思考の技術」です。皆さんの「考え方」を変えろというものではありません。これから紹介する手法は、「こんな考え方もいかが?」というものです。考え方の幅を広げ種類を増やすことで、より多くの問題を迅速かつ的確に解決することを目指します。

 ロジカルに考えるということは、感情を排除することではありません。感情を考慮したうえで、客観的に検討を加えることです。「知識」の多くは、「知る」だけでは役に立ちません。たとえば、車の運転は、知識だけではできません。「運転方法」という知識を得たうえで、「実車で練習」という訓練を重ねます。

 「思考」というのは便利なものです。知識を身につけるだけで、使ってみることができます。もちろん、訓練を重ねれば、より磨きがかかります。「知る」と「知らぬ」は大違い、ロジカルな考え方とはどんなものなのか、まずは扉を開いてみてください。

■「MECE」でモレ・ダブリを防ぐ

 ロジカルシンキングではさまざまな「型」が登場します。「手法」もあれば、「フレームワーク」と呼ばれるものもあります。

 その一つに「MECE」(ミッシーとかミーシーと読みます)があります。Mutually Exclusive collectively Exhaustiveの略で、意味は「モレなく、ダブリなく」。事柄に重なりがなく、しかも不足もない状態を指します。ものごとを分析するとき、この考え方は重要です。

 たとえば、人間を「成人しているかどうか」というキーワードで分類するなら、「大人」と「子供」でMECEです。では、「学校」が対象となった場合はどうでしょう。「男子校」「女子高」「共学」、いえ、「別学」などという分類もあります。「私立」「公立」...、「国立」はどうしましょうか。「公立」として扱いますか?別ですか?「小学校」「中学校」「高等学校」「大学」...。「幼稚園」や「高等専門学校」はどう扱いますか?「大学院」はどうしましょうか。

 分類の選択肢や考え方は、「大人」と「子供」などのような単純なものではなさそうです。このように切り口や選択肢が多岐にわたったとき、「MECE」という考え方を知らないと、モレやダブリが起きてしまうということなのです。

■VOCの分類を精査する

 ではこの「MECE」、この考え方は現場でどう使えばいいのでしょうか。

 たとえば、コールセンターに集まった顧客の声(VOC)を皆さんはどう分析していますか。

 「ご意見」は定性的で、定量的なデータのようにわかりやすいものではありません(図1)。声の一つ一つに反応してしまっても傾向はつかめません。だからといって、多数決で集計するわけにもいきません。少数意見から貴重なヒントを得た例はたくさんあります。定性情報分析は「どの視点から情報をみるのか」が重要です。

図1 顧客の声(例)


 似たような声をどの視点から見るのか、今回含まれていない声の「分野」が存在するのかしないのか、「その他」の中にいろいろな声が入りすぎていないか、回答者のセグメント分けは必要か――など、「正しいカテゴリ設定」が必要です。

 「経験」や「センス」だけに頼ってカテゴリを検討するのは危険なことです。正しい枠組みが定まらないと、どうなるでしょう。図2の矢印部分のように、情報にモレがあると顧客を正しくセグメントできません。また、情報のダブリがあると回答を正しく配置できません。

図2 カテゴリ分類の例


 このとき、「MECE」という考え方が活躍するのです。「MECE」は視点を定めることです。「モレやダブリがあってはいけない」――たったこれだけの「思考チェック」です。

 テーマとなるべき視点を定め、情報を網羅するだけです。過去に「顧客の声分析」の経験がなくとも、配属されたばかりで、「経験値」がなくとも、「MECE」に従って適正なカテゴリを検討することは十分可能なのです。

 ロジカルシンキングは「思考」の「手法」です。私たちは「考え方」を手に入れることでよりよく前進できます。その手助けとなるツールと思えばよいのです。

 本連載では、ロジカルシンキングの「思考プロセス」を一つずつ現場事例とともにご紹介いたします。

(コンピューターテレフォニー2012年4月号掲載)

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2024年01月31日 18時11分 公開

2013年02月22日 14時09分 更新

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