コンタクトセンターで使える!ソーシャルメディア活用の手引き 第4回




最初の壁は「メディアの選択」
答えは『顧客の利用実態』にある


ソーシャルメディア対応は、莫大な初期投資が必要なものではないため、「まずやってみること」が重要だとされる。だが、それは何の準備もなく「とりあえず始める」ことを意味するのではない。今回は、準備のひとつである『メディアの選び方』を検証する。効果的な運用のためには、“自社の顧客はどのSNSを使っているか”という視点が欠かせない。

著者:オフィスバトン うねだ友希
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 ソーシャルメディアの運営体制は、どのようなプロセスで構築すべきか。コンタクトセンターを構築する場合は、まず予測したコールボリュームに対する適正な席数を算出し、それを満たすためオペレータの採用や育成を進める。この手順は、ソーシャルメディアでも全く同じことが当てはめられる。

 企業でのソーシャルメディア活用が広まりだした頃、頻繁に見かけたのが突然担当者不在となり、せっかくファンやフォロワーのついたアカウントが放置されてしまう事例だった。「問い合わせ数が少ない」という理由でたった一人の社員に任せた場合、突発的な会議や休み、事故、病気などで顧客が放置されてしまうことは当然、懸念される。実際に、担当者が産休に入ってしまい、翌日から対応が不可能になってしまったTwitterアカウントもある。

 せっかくファンになってくれた顧客の期待を裏切らないためにも、対応件数に応じて少なくとも複数名以上のチームで運営していくのが望ましい。複数名で運営する場合は温度差が生まれないためにも、対応ポリシーはあらかじめ明確にすべきだ。考え方としては、トーク品質の一定化を保つよう努力するコンタクトセンターとまったく同じといえるだろう。

■効果のあるメディアを把握する

 ひとくちにソーシャルメディアといっても、TwitterやFacebookなどさまざまある。どのソーシャルメディアを始めたらいいのか?と聞かれることがあるが、強いて言うならできるものは全部やった方がいい。既に使っている方は感覚的に理解できると思うが、それぞれ性質が異なるためだ。

 例えば、Twitterは短い文章でも共感してくれたフォロワーにリツイートされリアルタイムで拡散される特色が強く、Facebookはより長い文章で表現することも出来るうえ、写真やリンクで視覚的に伝えられるメリットがある。

 mixiは、効果検証がしつくされていないものの、ターゲット層が主婦や若い世代の場合は有効だとされている。最近話題の多いピンタレストは、よりビジュアルで訴えかけられる今までとは一味違うソーシャルメディアだ(図1)。日本でもルクルーゼ・ジャポンやサンリオのハローキティ、資生堂のマジョリカ・マジョルカ、ローソンやユニクロなどがアカウントを開設している。企業だけでなく、大学がキャンパスの写真などをアピールしたイメージ戦略として開設する事例も出てきた。インパクトのある見せ方を期待したいのであれば、活用企業が少ないいま、チャンスだとも言われている。

図1 国内企業のピンタレスト事例


 忘れてはいけないのが、自社の顧客がどのメディアに多いのかなどリサーチしておくことだ。やみくもに発信してもそこに顧客がいないのであれば響かないのでやらないも同然だ。Twitterは10代から30代の利用者が最も多く、Facebookは20代から40代が多いといわれている。年代によって男女比も異なるが、直近では20代女性の利用は男性を超えて女性がメインユーザーとの分析結果もあった。「ソーシャルメディア白書2012」(トライバルメディアハウス/クロス・マーケティング)やインターネットで公開されている信頼性の高い利用者調査などを見れば、メディアごとの属性や特徴が細かく分析されているため、参考にされるとよいだろう(図2)。

 各メディアの特徴を踏まえたうえで、自社の製品と顧客に合ったソーシャルメディアをそれぞれどのように運用していくのか選択していただきたい。

図2 ユーザーの利用実態を把握できるデータ例


■効果検証ツールを活用する


 複数メディアを運用するのであれば便利なツールを知っておいた方がいい。VOC分析なども可能な高価なツールもあるが、無料の対応支援ツールも有効だ。例えば、シースミック(Seesmic)はFacebookやTwitter、リンクトインなど複数のソーシャルメディアを同時に立上げることができ、マルチアカウントにも対応していて安定性も高い。同じような機能としてHootSuiteもある。いずれもフリー版が気軽にダウンロードできるので、操作しやすいと感じるツールを選ぼう。

 また、用途は異なるがTOPSYはTwitter上の検索ツールとして使い勝手が良い。埋もれてしまいがちな過去の投稿まで遡って表示してくれる。自社製品やトピックを調べたいときなどに有効だ。様々な無償ツールがインターネット上で検索すれば出てくるので気軽に試してみていただきたい。

 実際に自社での運用を始めたあとの効果検証については、Twitterであれば無料ツールでもTwitraqという便利なものがある。また、Facebookでは「いいね!」数が30を超えるとインサイトと呼ばれる解析ページが見られるようになる。そこにはどの投稿がどれだけの影響力を持って、何人に見られたのかなど詳細なデータを見ることができる。ある程度無料で解析できるものもあるので使い勝手のいいものを探してみていただけるとよいだろう。

(コンピューターテレフォニー2012年9月号掲載)

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2024年01月31日 18時11分 公開

2013年02月22日 14時11分 更新

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