クレーム対応のレシピ 第20回

経験/知識の違いから生まれる
気持ちの“温度差”に要注意!


著者:JBMコンサルタント 玉本美砂子
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 9月も下旬になると朝は急に冷え込み始めるものの、昼は相変わらず30度近くまでなる。この“温度差”のせいか、何を着ていいのか服の選択も迷ったあげく、体調を崩してしまった。

 クレーム応対においても、顧客とオペレータの気持ちの“温度差”からこじれることがよくある。顧客が「自分にとっては重大、深刻なことである」と訴えているのに対し、応対者が軽く受け止めたような言葉遣いや口調をしてしまい、クレームを大きくしてしまうということだ。

 こうした温度差が生じる原因は、いくつかある。

 たとえば、顧客と応対者では「経験数」が違うことである。応対者は毎日、何十本の電話を取っているが、顧客がその企業に電話をかけるのは生涯にたった1回かもしれない。ましてクレームとなると、顧客にとっては大事であるケースが少なくない。にもかかわらず、応対者は「自分が処理する何十もの応対の1つ」というの意識しかないことがある。奇妙な例えだが、子どもがテストで50点を取って「一大事だ」と慌てる親に対し、何百人ものテストの採点をしている先生はフツーのことと受け止める。これも、経験数と当事者であるか否かの差が、気持ちの温度差につながるケースだ。

 一方で、「知識が違う」ことに原因がある場合もある。商品/サービスの専門知識を持つ応対者にとっては、たいしたことではなかったり、よくあることでも、顧客にとってはとても困る非常事態だと思うことがある。こういう場合、「大丈夫です。問題はありません」と顧客を安心させられるような伝え方ができればいいのだが、これも顧客の訴えを軽く扱うような応対をしてしまいクレームを発展させてしまうことがある。

 また、顧客の状況に対する「イマジネーションが働かないこと」で温度差が生じる場合もある。「何に困って、どんな気持ちになっているか」が汲み取れない応対者は少なくない。顧客の訴えに対して、事実の確認と対策に終始してしまう。事実に伴う「感情」を汲み取れず、事実が正しいかどうかだけを問題にする応対だ。例えば、裁判は事実を争い、ディベートは説得力を競うが、クレーム応対は、相手の感情に共感するかどうかと、それを言葉や口調で表現することこそが大切なのだ。苦労や心労、事の重大性、当事者意識――それらを共有することなしにクレーム応対は成り立たない。

 さて、この原稿を書いているときに、知人から電話があり面白い話を聞いた。得意先からのクレームに対してある社員が謝罪文を書いた。その際、「ビジネス文書の書き方」の類の本を参考にしたのだが、そのタイトルが「顛末書」だったとか。我が社員とはいえ、知人は呆れていた。結局、再度、上長である自分が改めて謝罪に出向いたと言う。まぁ、そういう「顛末」の話だった。わかるかな?(古いか?)


(コンピューターテレフォニー2012年11月号掲載)

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2024年01月31日 18時11分 公開

2016年06月29日 16時49分 更新

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