2025年のカスタマーサクセス市場を俯瞰し、顕在化した変化・トレンドと、2026年以降の展望をまとめる。次の5項目を順に検証する。
なお、各項目の最後には、それぞれの解説を要約した図を掲載する
カスタマーサクセス業務に対するIT投資は、コールセンターなどのカスタマーサポートと比較すると活発とはいえない。その主な理由として考えられるのが次の3点だ。
(1)生産性指標に基づく運営が成熟しているコールセンターに対し、KPIの構造が根本的に異なるため、短期的な導入効果の可視化が難しい。
(2)カスタマーサクセスの実践企業はスタートアップをはじめとしたSaaS企業が中心で、大規模なIT投資がしにくい。
(3)現場業務の多くがハイタッチに偏っており、「型化」が進んでいない。また、コールセンターなどのサポート現場で活用しているナレッジベースの横展開もほとんど進んでいない。さらに最大の理由は、個々人のITリテラシーが比較的高く、(IT化しなくても)一定水準で実践できてしまう点にあると推察される。結果、経営陣にとってはIT投資の優先順位が上がりにくい。
生成AI活用についても、コールセンターのように「オペレータ1人あたりの生産性向上」という明確な目的に対する専用ツールの導入はそれほど進んでいない。しかし、すでに導入しているタスク管理ツール(Notionなど)、Googleの各種アプリケーション、マイクロソフトのOfficeツール、そしてSFAなどのCRMプラットフォームに生成AIが組み込まれつつあり、「情報整理・要約・文章作成・ネクストアクション設計」といった担当者の判断を支える業務で実用化されつつある。米ゲインサイトが2025年1月に発表した「Customer Success Index Report」には、「91%の企業がAIがカスタマーサクセス戦略全体に中程度以上の影響を与える」としており、具体的にカスタマーサクセス部門が省力化できる時間や範囲も示されている。一方で、顧客対応そのものを自動化する事例は、ほとんど出現していない。ハイタッチ対応に偏っていることも大きな原因だが、ハルシネーションのリスクも重く捉えられている。これはコールセンター/カスタマーサポートにおけるトレンドと重なる部分が大きい。
2026年、とくに注目したいのが、Googleが提供する「Gemini」の機能強化だ。スプレッドシートやGmailなど、カスタマーサクセス従事者が主に使っているツールとの連携が強化されている。同社のプラットフォームを全社的に活用しているケースが多いスタートアップ各社での活用はより容易になった。今後、この傾向はさらに強まることが見込まれる。
AI活用は、「AIに食わせるデータ」が成否を大きく左右する。これは、第3次AIブーム当時からの普遍的な事実だ。生成AIの場合、ハルシネーションのリスクが高いだけに、その必要性はさらに高い。その点では、カスタマーサクセス領域は大きな可能性がある。顧客理解に基づくパーソナライズされた対応は、ハイタッチ業務で培われており、関連データが継続的に蓄積されている。インシデント対応に偏っているコールセンターよりも「深いデータ」が存在している傾向は強く、AI活用には大きな武器となるだろう。2026年はこの点に注目したい。
ポイントは、その「データを束ねる手段と場所」だ。米ゲインサイトをはじめ、プラットフォームを提供するITベンダーの多くがワークスペースやヘルススコア、ネクストアクションなどのサクセス業務に加え、チャットボットなどのテックタッチのやり取りを集約する一体型プラットフォームを志向している。散在するデータの連携・集約が「AI時代のカスタマーサクセス」の成否を分けるポイントとなりそうだ。
2026年01月06日 15時50分 公開
2026年01月06日 15時50分 更新