本誌記事 インタビュー バーチャレクス・コンサルティング 森田 智史 氏

国内の先駆者が説く“組織作り”の要諦

People インタビュー

「カスタマーサクセス」の伝道師
国内の先駆者が説く“組織作り”の要諦

カスタマーサクセスに関わる人々の間で「青本」と呼ばれる著書を翻訳し、日本にその概念を広めるきっかけを作ったバーチャレクス・コンサルティング 常務執行役員の森田智史氏に、その定義から具体的な組織づくりにおける要諦を聞いた。

森田 智史 氏
バーチャレクス・
コンサルティング
常務執行役員
森田 智史 氏
2013年バーチャレクス・コンサルティング中途入社。CRM関連、自社デジタルマーケティング領域の事業拡大、RPAソリューション等新規事業開発などに従事。2018年発刊『カスタマーサクセス—サブスクリプション時代に求められる「顧客の成功」10の原則』の訳者であり、カスタマーサクセスに関するコンサルティングや講演なども行う。

──御社の考える「カスタマーサクセス」の定義を伺えますか。

森田 まず、「仕組み」と「思想・哲学」に分けて考える必要があります()。組織や体制などの仕組みはサイエンス、つまり科学的なアプローチで実現する必要があります。一方、経営理念や戦略などはその会社独自の思想や哲学、つまりアートであり、この明文化も必要不可欠です。この両輪を回すことが大前提となります。

 顧客がサービスや製品を購買する際には、「何かを解決したい、実現したい」という欲求があるはずです。企業はこの欲求を正確に把握し、かつ購買から利用に渡るプロセスの利便性を高めることで、顧客の満足度は高まり、その結果として売り上げが伸びます。この考え方がコンセプトとしての「カスタマーサクセス」であり、これを踏まえ、施策に落とし込み実行するのが機能・組織としての「カスタマーサクセス」です。「物を売る」という発想に終始するのではなく、顧客の成長を阻害している要因を可能な限りスムーズに解消することが、自社を成長させる。これが根本思想です。

図 カスタマーサクセス推進に必要な“サイエンス”と“アート”

図 カスタマーサクセス推進に必要な“サイエンス”と“アート”

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サイエンスとアート両輪がポイント
概念→組織づくりの流れで構造化

──御社はカスタマーサクセス組織づくりのコンサルティングなども提供していますが、ポイントをどう捉えていますか。

森田 重要なのは、「カスタマーサクセスという名称の一部門だけを最適化しても機能しない」ということです。誰に、どのようなサクセスを届けたいのか、どのような課題を解消したいのかを見極める。そうした思想を関連部門で共通化したうえで、科学的(サイエンス)アプローチで仕組み、業務プロセスに落とし込みます。例えば、営業部門の活動がサクセス的思想に基づき、本当に顧客に価値ある提案ができているかをチェックすることも必要です。目先の売り上げ偏重な思考に支配されていないかなど全体最適化をあわせて考えないと、一部門だけがカスタマーサクセスを掲げても機能しません。

 念頭に置くべきは、思想・言語の共通化です。細かい業務内容は変化がつきものですが、「カスタマーサクセスのミッション」を社内で共通認識できるよう、言語化して周知しておかなければ、単にカスタマーサクセスという名称の組織をつくっても、社内外で混乱を招くだけです。

──(コンセプト的な議論ではなく)どの組織がハイタッチ、ロータッチ、テックタッチを担うのかなど、手法の切り分けを課題視している傾向を感じます。

森田 BtoB、BtoCのビジネス形態や企業規模にかかわらず、まずはテクノロジー・デジタルを駆使してどこまで何ができるか、すべきかを考えるべきだと思っています。テックタッチとハイタッチの境目をどこに置くのかという議論はありますが、すべての顧客接点・対応をまずはテックファーストで設計し、その前提で、その土台の上に営業やカスタマーサクセス、カスタマーサポートが最適な方法・頻度で連携し密にコミュニケーションを取るのが望ましい姿だと考えています。

 数年前、カスタマーサクセスが日本に入ってきた頃は、ハイタッチ偏重の傾向が強かったと思います。日本の営業現場は「足で稼ぐ」ことが王道とされ、とくに大企業はハイタッチをよしとする風潮が今も根強いと思います。しかし、それは昔ながらの手法に則った“常識”の延長にすぎません。実際、大企業であってもテックタッチをベースに全顧客に対して共通的な対応を敷き、そのうえで顧客に成り立てのタイミングで手厚くフォローする、購買意欲が高い重要顧客に対し個別にハイタッチ接客を行うことで、成果の最大化を図ることができている事例もあります。

かつてのコールセンターと重なる
今後のサクセス発展の可能性

──バーチャレクスがカスタマーサクセス領域で貢献するための方向性について教えてください。

森田 まずはコンセプトの啓蒙です。この概念を浸透させ、市場を創っていきたいと考えています。サクセスとは「顧客の持続的成長」を指します。そこで欠かせないのが、ホスピタリティの精神です。家族構成や状況を緻密に把握し先回りして最適なタイミングで最適な提案をする。アニメのサザエさんに登場する三河屋のさぶちゃんが、そんなホスピタリティの例えとしてよく使われますが、日本には良くも悪くも「おもてなしの文化」があります。これはサクセスとの相性がよく、馴染みやすいと捉えています。ホスピタリティは、私たちの主戦場であるカスタマーサポートやコンタクトセンターで培ってきた文化でもあり、ノウハウもあります。多くの要素が共通化できるのではないでしょうか。

 かつて、カスタマーサポートやコンタクトセンターは、削減すべきコスト部門と言われていた時期がありました。ですが、CXが注目を集めはじめて以降、非常に重要な顧客接点であり、企業にとって必要不可欠という認識が改めて浸透しつつあるように思います。カスタマーサクセスは、概念も組織としても夜明け前ですが、このサポート部門同様に存在自体が普遍的になっていくように働きかけていきたいと思っています。

 

2024年01月31日 18時11分 公開

2022年12月20日 00時00分 更新

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