市界良好 第129回

2023年1月号 <市界良好>

転職市場

市界良好

<著者プロフィール>
あきやま・としお
CXMコンサルティング
代表取締役社長
顧客中心主義経営の実践を支援するコンサルティング会社の代表。コンタクトセンターの領域でも、戦略、組織、IT、業務、教育など幅広い範囲でコンサルティングサービス及びソリューションを提供している。
www.cxm.co.jp

転職市場

秋山紀郎

 転職エージェントのテレビCMが盛んに目に入る。新型コロナで加速したデジタル化などを背景に、IT系企業の求人数が増えているだけでなく、他の業界でも経験者採用は堅調なようだ。一方、米国では正反対のニュースが多い。起業家のイーロン・マスク氏に買収されたツイッターは、世界の社員のうち半数の解雇に踏み切り、経営改革を進めている。Facebookを運営するメタも1万1000人以上の社員の解雇を発表、アマゾンでも約1万人の人員削減があるようだ。

 日本のIT産業において、終身雇用や年功序列に代表されるメンバーシップ型雇用から、職務に応じて報酬が決まるジョブ型雇用に切り替える企業が増えていることが、転職市場が拡大している背景にある。キャリアアップを目的に転職する人が増えているのだ。企業にとっても、新しい事業を創出したり、グローバル競争で戦うには、適所適材のジョブ型雇用の仕組みが必要なのである。このジョブ型雇用は、KPIで成果を示しやすい営業職でも適用される。しかし、ある会社で営業成績を上げた人が、競合先に転職してかつての競合製品を売り込む姿を見ると、以前の売り込みは何だったのかと疑問を感じてしまう。とくに複雑さを増しているコンタクトセンターのソリューションは選ぶのが難しい。顧客企業の課題を分析し、ソリューションを提案する営業職が果たす役割は大きいし、ソリューション選定後も長い付き合いが原則となる。人事制度がどうであれ、長く勤めている営業担当のほうが、安心できるのではないか。ユーザー企業の担当者においても、長くその職務に就いている人のほうが、見識が深いことが多く、改革などの実行力もある。

 ジョブ型雇用のデメリットとしては、優秀な人材が流出しやすく、採用コストが高くなりやすい点であろう。だから、報酬だけでなく、働きやすい労働環境の提供などのリテンション施策がカギとなる。一方、働く側の最大の課題は、その職種に対するニーズが少なくなったとき、転職しづらくなる点である。自分に合っていて、しかも、長い目で見て安定した職種を選ぶのは簡単ではない。とくに経験の浅い若い世代にとっては、メンバーシップ型雇用のもと、さまざまな仕事を経験して、自分にあった職種を見つける過程は大切かも知れない。

 採用難が続くコンタクトセンター市場であるが、センターの仕事はジョブ型雇用に向いていると思う。メンバーシップ型雇用であると、コンタクトセンター業界のことを理解した頃に人事異動してしまうこともある。そのために、改革がとん挫するケースは多く聞かれる。本来、カスタマーサポートに適した人材は、労働市場にとても多いのではないか。ところが、電話応対と限定すると、人が集まりにくい傾向がある。もはやセンターの仕事は、電話だけでなく、チャットなどのデジタルチャネル対応、FAQなどのデータメンテナンス、VOCデータ分析など幅広い。ビデオ・コミュニケーションもある。また、SVとは何をする仕事なのか。目的、責任、求められるスキルなどの定義も必要である。センターにおけるさまざまな職務の定義と、採用条件を細かく設定して人材を求めることが重要である。

 

2024年01月31日 18時11分 公開

2022年12月20日 00時00分 更新

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