本誌記事 ケーススタディ サーキュレーション

難易度の高いサクセス部門の人材育成方針

Casestudy ケーススタディ

サーキュレーション

経営者を支援する「プロシェアリング」
難易度の高いサクセス部門の人材育成方針

あらゆる業種が“人手不足”に悩む昨今、注目されているのが「プロ人材」の“活用”だ。さまざまな業種のクライアントに向けて、経営陣やコンサルタントを派遣するサーキュレーションは、2万名以上もの人材を抱え「プロシェアリング」を展開。同時に、クライアントを支援するカスタマーサクセス部門でもまた、ハイレベルな問題解決スキルを持つ人材を育成している。具体的な教育手法を聞いた。

石戸美香氏
カスタマーサクセスチームマネジャー 石戸美香氏

 人口減少、少子高齢化社会が進行し、人材が払底しているのは現場だけではない。経営層もまた同様で、さまざまな経験や知見を持つ人材への需要が多い一方で、リソースが枯渇している。そこで複数企業で人材を共有する「プロシェアリング」が注目されつつある。経営者層やコンサルタント(事業会社の実務経験者)など「プロ人材」を活用した業務委託事業を展開するサーキュレーションは、同市場をけん引する1社だ。同社ではプロ人材を「シニアエグゼクティブ」と「ミドルプロフェッショナル」の2種類に大別している。シニアエグゼクティブとは、大手上場企業の経営者層を含む、有名企業の戦略に精通したエグゼクティブ、専門領域の技術者層だ。ミドルプロフェッショナルは、ベンチャー経営者層/事業会社出身者層、コンサルタント、外資金融出身者などで構成している。

 利用手順は、(1)取り組みたい課題(テーマ)のすり合わせ、(2)プロ人材の選定と面談、(3)プロジェクトキックオフ、(4)フォローアップ──という流れとなっている。課題やテーマとして多いのは、採用&人事制度改革、新規事業開発、販路拡大、生産改革、海外展開、事業承継など。契約形態はプロジェクトチーム組成による業務委託準委任契約だ。

図 サーキュレーションのビジネスモデル

図 サーキュレーションのビジネスモデル

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コミュニケーション対象は経営層
サクセス担当者に求められる「説得力」

 同社の組織はいわゆる「THE MODEL」型で、分業制で営業活動を行っている。具体的にはマーケティング、インサイドセールス、フィールドセールス、カスタマーサクセスに分けて業務を分担しており、顧客の契約・利用の立ち位置などによって対応部門が変化していく。

 カスタマーサクセス部門が顧客と関与するタイミングは契約受注直後からだ。フィールドセールスと協業で対応することが多く、担うミッションは大きく「顧客満足度向上」と「アップセル/クロスセル」の2つある。これをKGIとして、プロジェクトの適確な要件定義から完遂まで、伴走する形でサポートしている。

 提供する業務の性質上、対応する顧客は、大企業では役員、中小企業であれば代表取締役であることが多い。「本質的な経営改善」がテーマになるため、カスタマーサクセス部門の担当者にはかなり高いスキルが求められる。プロジェクトマネジメント自体の知識はもちろん、その企業の業務内容から抱える課題とその解決策のキーを特定する知見、さらには経営層と対等に話せるだけの説得力/コミュニケーション力が必要だ。

 とくに中小企業は目的やゴールが不明瞭なケース、人員体制などのリソースが十分でないケースも少なくない。カスタマーサクセスチームマネジャーの石戸美香氏は「社長に対して、現実ラインを提示して交渉し、説得するだけのスキルを1人ひとりのメンバーが求められます」とその難易度の高さを説明する。

テックタッチ強化し
即座のフォローを実現

 現在、カスタマーサクセスチームの人員は10名(2022年11月時点)。大企業の担当者で1人あたり6〜7社、20プロジェクト。中小企業担当は80プロジェクトも抱える。

 そこでとくにオンボーディング以降はテックタッチを活用している。毎月発生する請求書の処理にあわせて、「計画通り」「進捗が遅れている」などの状況を、顧客にクリックひとつで入力してもらう。状況に応じて、即座にフォローする仕組みを用意している。

 だが、やはりメインとなるのはハイタッチによる支援だ。定期的なレビューミーティングをサーキュレーション主導で行い、次月で取り組むべき事項、そのためにアサインすべき要員などを確認、場合によっては人員追加のアップセルにつなげる。

スキルアップ環境を完備
成長意欲で組織力を最大化

 こうした難易度の高い案件に対応するメンバーを育成するために、多様なスキルアップ環境を用意している。社内のベテランスタッフによるプロジェクトマネジメント研修や顧客である経営層向けのマーケット情報や課題解決ウェビナーも自由に閲覧できる。

 また、週に一度の定例会議に加え、3カ月周期で「CSの未来会議」を行っており、「数年後の未来に向けて」組織をどのようにしていくべきか、全員参加でディスカッションする。石戸氏は、「重要なのは、スタッフ1人ひとりの“当事者意識”です。メンバーは25〜35歳と若いのですが、“顧客を成功に導きたい”という強い意思と高い目標が何より大事。メンバーの成長意欲を刺激するとともに、スキルアップ環境を整備することで日々学び、成長を続けています。それぞれのスキルアップとモチベーションをエンジンに、今後さらに組織力を強化し、本当の“企業のサクセス”を実現します」と語った。

(2023年5月号 月刊「コールセンタージャパン」掲載)

 

2024年01月31日 18時11分 公開

2023年04月20日 00時00分 更新

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