本誌記事 座談会 デモ&コンファレンス 2025 in 東京 誌上レビュー(後編)

デモ&コンファレンス 2025 in 東京 誌上レビュー(後編)

“CSらしくないCS”の存在価値の示し方
カギ握る「データの取り扱い方」と「AI」活用

前編では、オービックビジネスコンサルタント(OBC)とアンドエスティHDが、従来のカスタマーサクセス(CS)の枠にとらわれず、企業特性に準じて独自のCS像を築いてきた軌跡を紹介した。後編では、「CS立ち上げ時の壁」や「経営層への価値の伝え方」など、現場が直面しやすい課題に着目。今後求められるCSの進化について、より実践的な議論が展開された。

平田 智教 氏
平田 智教
オービックビジネスコンサルタント
営業本部
カスタマーサクセス推進室
室長
宇都宮 英 氏
宇都宮 英
アンドエスティHD
コーポレート本部
カスタマーサクセス部
CS統括 兼 DX推進シニアMGR
山田 ひさのり 氏
山田 ひさのり
日本カスタマーサクセス協会
代表理事

──後半では、「CS立ち上げ期の苦労」や「経営層への理解促進」など、より実践的なテーマを議論します。

山田 CS組織を立ち上げる際、最初にぶつかる壁が「存在価値の証明」です。(OBCとアンドエスティHDは)いかにして経営層に、その意義を伝えたのでしょうか。

平田 クラウドビジネスへの転換が、経営戦略の大きな柱となった結果、「解約率と理由の可視化」が経営課題に挙がりました。このことが、CSの必要性が認められた最大の理由です。設立当初は、マーケティング部門内のタスクフォースとして設置。1年をかけてデータの蓄積と分析を行い、「どのフェーズで解約が起きやすいか」をデータとして経営にレポートを提示したことで、CSの必要性が明確に伝わりました。

宇都宮 当社の場合は、AIプロジェクトが突破口になりました。AI活用は非常に関心が高く、CSが先陣を切って成果を出すことで、上層部からの期待や評価の風向きが一気に変わりました。もともとAI関連の取り組みが社内に50件以上ある中で、CSが最初にAIエージェント、Microsoft Copilot、WFM、VOCポータルと数々のコンテンツをリリースし注目されました。

山田 両社ともCSが単なる「対応部門」ではなく、「経営に資する分析部門」になった瞬間があったのですね。では、マネジメントの立場で、最初に自身に課したミッションや、「これをやりたかった」という事柄はありましたか。

平田 「ソフトウエア提供企業から、サービス提供企業へ」という転換を社内外に伝えたかったですね。クラウドは中長期的に見れば価格が高くなる傾向が強い。結果、継続的な価値提供が求められます。だからこそ、1年に1度の契約更新時に、「この1年で使い勝手も対応品質もよくなった」と評価してもらえるようなサービス設計を心がけ、今もそれは同じです。

宇都宮 まずは、社内のCSへのイメージを変えることでした。部署名を「顧客サービス部」から「カスタマーサクセス部」へ変更したり、社内PRを工夫。公募内容に攻めのプロジェクトを掲載し、これまでと違う層にリーチするなど、戦略的にCSに対するイメージを刷新しました。

左から、山田ひさのり氏、平田智教氏、宇都宮 英氏
左から、日本カスタマーサクセス協会 代表理事の山田ひさのり氏、オービックビジネスコンサルタント 営業本部カスタマーサクセス推進室 室長の平田智教氏、アンドエスティHD コーポレート本部 カスタマーサクセス部 CS統括 兼 DX推進シニアMGRの宇都宮 英氏

顧客の成果にいかに貢献するか

山田 CSを「(企業やブランド、プロダクトの)価値づくりの起点」に据えている点が共通していますね。サポートや営業との連携、目的の共通化、また、「顧客の成果にいかに貢献するか」への取り組みは進んでいますか。

平田 「CSとはCS部門だけの仕事ではない」と実感しています。ユーザーのログや利用傾向を起点に、パートナー様との関係性、営業活動、さらには開発部門にもフィードバックが可能ですし、実践もすべきです。

宇都宮 当社のCS部門は今や、「広義なマーケティング」「新サービス提案」「他部署の業務効率化」にも着手しています。社内FAQへのAI活用もそのひとつであり、パーソナライズされた全社の接客構築も、CSとしての構想があります。最近は、実店舗の接客データを分析し、優秀な店舗の特徴を全社に展開する事も始めました。前編でもお話しした通り、CSの役割を「引き算=生産性向上」「足し算=業務の再設計」「掛け算=他部署との協働」の3つの視点で捉えています。現在は、「CS2.0期」入りました。VOC活用やAIとの連携によるセルフサービス強化を軸に、LTV最大化を目指した“経営貢献型CS”への進化に取り組んでいます。

山田 CS部門が、社内外の情報ハブになっている点が、大きな特徴ですね。

宇都宮 社外に向けた活動のみならず、社内における「対話データの翻訳者」としての役割が重要です。具体的には、VOCポータルを構築しました。問い合わせやアンケート、チャットログなどのデータを構造化し、実店舗のマーケティング活動にも活用しています。

平田 当社も、「(経営の)裏方」という立場を強めています。パートナービジネスゆえに、他社のような“CSらしい接点”は保有しにくいものの、パートナー様からのフィードバックやデータ分析をもとに、次に起こり得る課題を先回りして支援する。それが契約継続率の向上につながっています。

山田 「翻訳」「先回り」は、素晴らしい役割の表現ですね。今後、CSに、どのような進化が求められているでしょうか。

宇都宮 「境界を越える力」が必要だと思います。問題が起きても、CS部門だけで解決しようとせず、他部署や外部と連携し、解決に導きLTVを高めていく。ファネル思考(マーケティングファネル)から、フライホイール思考へと循環型の顧客体験設計が欠かせないため、その構築と運用を担う部署になりたいと考えています。

平田 CS活動の範囲を、これ以上“足す”のではなく、他部門と“掛け算”をする段階に来ていると感じます。例えば、開発部門と連携し、解約の多い機能を改善したり、営業部門と連携して課題のある顧客層にピンポイントでアプローチしたりといったアクションです。CSは、全社的な活動へと拡張していくべきだと思います。

山田 これからのCSは、「どの顧客に、どの価値を、どう届けるか」を設計する“顧客戦略の中枢”になることが求められそうですね。

(月刊「コールセンタージャパン」2026年3月号 掲載)

2026年02月20日 00時00分 公開

2026年02月20日 00時00分 更新

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