大村 康雄 

本誌記事 連載 “動ける現場”をつくる! 自律的組織の構築術 第4回

“動ける現場”をつくる! 自律的組織の構築術 第4回

再現性と成果を両立する実践ノウハウ④
KPI設計と見える化で防ぐ“なんとなく運用”

KPIを設定し評価と紐づけ、チームが自走できる環境を整えても、メンバーの行動は鈍く成果が伸び悩むケースは少なくない。そこで今回は、チーム全体が「何となく」動く“なんとなく運用”の防ぎ方を解説する。問題は個々のモチベーションやスキルではない。数字とアクションが連動せず、日々の行動指針として機能していないためだ。行動を決める数字と次のアクションを明示することが重要だ。

大村 康雄
エッジコネクション
代表取締役社長
大村 康雄
慶應義塾大学経済学部卒業後、シティバンク銀行(現SMBC信託銀行)入行。2007年、株式会社エッジコネクション創業。営業支援業を軸に人事・財務課題にも対応するコンサルティング企業として展開。これまでに1600社超を支援し、継続顧客割合は75%以上。2024年7月には「黒字持続化経営の仕組み」を出版。

 日次・週次・月次で数値は管理され、報告も欠かさず行われている。にもかかわらず、成果が安定しない。改善の指示を出しても、次の月には元に戻ってしまう。こうした状況に心当たりのあるリーダーは少なくないだろう。

 このとき問題なのは、「KPIが形がい化していること」でも「管理が甘いこと」でもない。多くの場合、KPIそのものは存在しているが、それが現場の行動と結びついていないのである。結果として、チーム全体が「何となく」動き、「何となく」振り返り、「何となく」改善したつもりになっている。この状態こそが、“なんとなく運用”である。

 今回は、チームの動きが止まってしまう構造を整理したうえで、リーダーが設計すべき“KPIの考え方”と、現場を動かすための“見える化の仕掛け”について解説する。KPIを「管理の道具」から「行動を揃えるための仕組み」へと変える視点を共有したい。

“なんとなく”動いてしまう背景

 チーム成果が伸び悩むとき、真っ先に疑われがちなのが現場メンバーの姿勢やスキルである。「もっと主体的に動いてほしい」「数字に対する意識が低い」といった言葉は、多くの現場で聞かれる。しかし、実際の現場をよく観察すると、担当者が決して手を抜いているわけではないことが分かる。

 問題の本質は、「どのKPIに着目し、成果を改善するためにどのようにアクションを変えていくか」が明確になっていない点にある。KPIは共有されているが、それが日々の行動指針として機能していない。その結果、各メンバーは自分なりの解釈で行動し、チームとしての動きが揃わなくなる。

 例えば、「アポ獲得数」「通話時間」「架電数」といった数字は提示されているものの、「今日はどの数字を最も意識すべきなのか」「どの指標が悪化したら、何を見直すべきなのか」「成果が出ている人と出ていない人の違いはどこにあるのか」が言語化されていないケースは多い。

 こうした状態では、メンバーは「とりあえず言われた数字を追う」か、「過去の成功体験に頼る」しかない。結果として、行動は場当たり的になり、改善が積み上がらない。“なんとなく運用”とは、意欲や努力の問題ではなく、指針がないままでの運用状態なのである。

KPI設計が甘いと動きが止まる

 KPIが機能しない理由の多くは、設計段階にある。

 特に多いのが、アポイント獲得数や成約獲得数といった最終成果の件数である成果KPIだけを設定し、成果KPIを改善するための行動に示唆を与える施策が抜け落ちているケースだ。次にどう動けばいいのか、ヒントを得られる「プロセスKPI」も見る必要がある()。

図 成果KPIとプロセスKPIの関係整理
図 成果KPIとプロセスKPIの関係整理

 月間アポ数や成約率といった成果指標は重要だ。しかし、それだけを見ていても、現場は動き方を変えられない。なぜなら、成果はあくまで結果であり、日々コントロールできるのは行動だけだからである。

 さらに見落とされがちなのが、「期限」と「判断基準」である。KPIに定点観測の期限が設定されていない場合、振り返りは曖昧になりがちだ。「もう少し様子を見よう」という判断が続き、改善のタイミングを逃してしまう。

 本来、KPIは現場に「次に何をすべきか」を示すための設計図である。そのためには、(1)成果を因数分解して分析できるだけの情報を収集する、(2)追うべき指標を絞る、(3)いつ、何を判断、レビューするのかを明確にする──などが不可欠である。「見える化」の本質は、行動につながるか。つまり、その数字を見た瞬間に「次に何を変えるべきか」が分かる状態になっているかどうかだ。分析するためのプロセスKPIを、常に全員が確認できるようにしておくことで、自発的な改善を促す。見える化とは現場を管理するための仕組みではなく、現場が自分で考え、判断し、行動を変えるための“補助線”といえる。

KPIと行動のリンクが成果を生む

 成果を出し続けるチームには、明確な共通点がある。それは、KPIが「評価のための数字」ではなく、「行動を決めるための数字」として使われている点である。

 良いチームでは、「KPIを見る → 今日の行動を決める → 実行する → 振り返る → 明日の行動を修正する」という流れが日常的に回っている。この循環があることで、改善が属人化せず、チームとして積み上がっていく。

 ここで重要なのが、リーダーの役割である。リーダーは、数字をチェックする管理者ではない。KPIを行動に翻訳する設計者である。「この数字が意味しているのは何か」「次に変えるべき行動は何か」を言語化し、現場に示し続ける。その積み重ねが、メンバーの自律性を育てるのである。

 “なんとなく運用”から抜け出すために必要なのは、気合や根性ではない。KPIを問い直し、「現場が動く設計」になっているかを見直すことである。

 KPIを管理のための数字にとどめるか、チームを前に進める仕組みに変えられるか──その分岐点に立っているのは、常にリーダーである。

(月刊「コールセンタージャパン」2026年3月号 掲載)

2026年02月20日 00時00分 公開

2026年02月20日 00時00分 更新

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