カスタマーサクセス・アワード2026検証 

カスタマーサクセスを「現場任せ」にしない 大企業ならではの課題を解消する横断型支援

NEC

「代行」ではなく
自ら動く仕組みを整える

CoEが担うのは、各現場の顧客対応を引き受ける「代行」ではない。「現場に入って実務をするというよりは、現場の方がうまく立ち上がれるように、CS活動の支援や人材育成を担う」(服部氏)という役割だ。 支援は大きく3つある。第一は、CSの立ち上げと定着の支援。いわゆる「イネーブルメント」だ。顧客情報の整理から対象顧客の選定、具体的な活動の設計へと進むプログラムを用意し、教育やレクチャーを行う。社内コミュニティも運営し、部門を越えて相談、知見を共有できる場を設けている。
第二は、啓発と人材育成だ。ポータルで基礎知識や事例を紹介し、実践をはじめたい人にはハンドブックや研修を提供する。さらに、社内の職種としてCSを位置づけ、必要なスキルを整理している。学習機会の提供に加え、仕事としての役割を明確にする取り組みである。
第三は、活動を効率化・高度化するIT基盤の提供。CoEがカスタマーサクセス基盤の全社提供を開始しているが、全組織に一律に利用を求めているわけではない。規模が大きく管理が複雑な事業と、立ち上げ段階にあってもっと簡易なツールでも管理できる事業では、得られる効果が異なる。基盤を用意するだけでなく、事業の状況に応じて使い分ける視点を持ち、アドバイスしている。

カスタマーサクセスCoEの活動全体像:個別最適から全社最適へ
カスタマーサクセスCoEの活動全体像:個別最適から全社最適へ

CS活動そのものも強制ではない。「プロダクトや営業部門の業績拡大、最大化に寄与する活動であることを伝え、賛同したところから進めています」(服部氏)。
どうしても、とくに営業では新規案件の獲得が優先されやすい。利用定着から継続、追加提案へとつながる活動の意味を示し、現場の理解を得る。CoEの評価も普及の広がりだけでなく、支援先でどのような事業成果が生まれたかを重視している。

製品単位の支援から
顧客単位の連携へ

今後の課題は、個々のプロダクトを軸としたCSを、顧客への一貫した価値提供へ広げることだ。現状は、営業とプロダクト側がそれぞれの立場で活動、連携している。これをSI事業や導入後の活用まで含めてつなぐ役割、進め方の整備を検討している。
デジタル基盤にも、習得や入力に手間がかかるという課題がある。そこで、AIを窓口に設置し、必要な情報を検索・登録できる仕組みの検証をはじめている。保守・サポート部門が持つ顧客の声の活用も検討しているが、情報の利用条件や共有範囲など、解決すべき課題は残っている。顧客情報の統合やAI活用は、NECといえども全社で完成した段階ではないということだ。
同社の取り組みが大企業のロールモデルとなるのは、CSの実務を中央組織(CoE)が代行するのではなく、各部門の自律的な実践を共通の手順、人材育成、基盤で支えている点にある。全社横断組織の役割は、一律の活動を広げることにとどまらない。事業ごとの違いを踏まえ、部門の境界を越えて顧客の成果を支える仕組みを育てることにあるといえそうだ。

2026年11月05日 00時00分 公開

2026年11月05日 00時00分 更新

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