本誌記事 ケーススタディ SELF

SELF

“少人数・兼務”──スタートアップCSの課題を打破
生成AIがもたらす「自動化・内製化・深耕」

生成AIチャットボット『SELFBOT』を提供するSELFのカスタマーサクセス部は、小規模体制ながら、大企業を中心に1人あたり数十社の導入支援を担う。プロダクトマネージャーがCSを兼務し、開発と現場が密接に連動する“伴走型CSプロセス”を構築。生成AIを活用した業務効率化とオンボーディング支援により、少人数ながらも“スケールするCS”を実現している。

 スタートアップ企業のカスタマーサクセス(CS)は、少人数体制にもかかわらずオンボーディングから活用定着、KPIの設計まで幅広い役割を担うことが一般的だ。

 プロダクトの成長速度に組織の拡大が追いつかず、兼務を前提とした運営/マネジメントを余儀なくされる。“限られたリソースでいかに支援のクオリティを維持し、同時にスケールさせるか”が共通課題といえる。

 生成AIチャットボット『SELFBOT』などの開発と提供を行うSELFも、少数精鋭体制で多数の企業(クライアント)を支援している。導入先の多くは大企業だ。

 自身も開発部門を兼務するプロダクトマネージャー兼カスタマーサクセス責任者の森田志乃氏は、「会社全体が成長過程にあるため、CSと開発など各部門との距離が極めて近い。そのため、お客様からいただいた要望を迅速に改善活動へつなげられるスピード感は強みのひとつ」と説明する。顧客の声を収集し、改善サイクルに至るまでを短いリードタイムで機能させている点は、SELFの提供価値にもなっているようだ。

プロダクトマネージャー兼カスタマーサクセス責任者の森田志乃氏
プロダクトマネージャー兼カスタマーサクセス責任者の森田志乃氏

オンボーディングを
3段階に分けて実施

 自社でチューニングができるプロダクトの特性から、解約率が低い。これを前提に、オンボーディング施策に注力している。そのプロセスは、「無料トライアルを経て、1カ月の有料トライアルを行い、その後に正式導入」(森田氏)の3段階に整理されている。

 “無料トライアルの申し込み=オンボーディング開始”と定義し、伴走と支援がスタートする。キックオフミーティングで現場での利用場面をヒアリングして想定。1カ月の有料トライアル期間で“成功基準”となる目標を共有する。生成AIを用いるプロダクトの特性上、導入の成功は現場の理解度や納得感に左右されやすい。

 森田氏は「経営層が導入を決めたとしても、日々業務を担う現場の方にプロダクトを利用するメリットを感じてもらえなければ定着はしません。(導入すると)どの点が改善され業務がラクになるのかを一緒に描くことが重要なポイント」と説明する。

 特徴的なのが、現場での実利用を確認する「精度評価リスト」の作成と運用だ()。

図 想定質問リスト(サンプル)
図 想定質問リスト(サンプル)

 顧客が重要とする問い合わせ20問に対し、設定した精度で回答できるかを確認し、オンボーディング完了の目安としている。“リストがクリアされた=顧客が実装できている”と判断し、正式導入に移行する。

 さらに森田氏は、「現場経験の長い担当者でも、運用してみると想定外は必ず出てきます。“引っかかり”の確認をていねいに行い、改善していくプロセスが重要」と説明する。その結果、同社ではオンボーディングとアダプションを段階的に切り分けず、現場での定着を重視した連続的なプロセスとして扱っている。

業務に必要なソフトに
生成AIを活用

 少人数でCS業務を遂行できている背景には、生成AIの活用がある。CS業務で必要となる、回答精度レポートの自動生成/案件管理/ニーズ整理の自動化出力など必要なツールは独自に作成。「サービス名や期間などの必要情報を入力すればレポートが出力できる仕組みを、ChatGPTの登場直後から整備をしはじめました」(森田氏)。

 顧客への回答文の下書き生成、蓄積されたナレッジを元にした改善提案といった業務にもAI活用は浸透し、工数を削減できている。こうした土台があるからこそ、兼業体制にもかかわらず1人あたり数十社を担当できている。

 管理指標については、LTVをKGIに据えたうえで、無料から有料、有料から正式導入の各突破率(転換率)をKPIに設定。森田氏は「解約率が低いため、アップ/クロスセルによる利用拡大を重視しています。100人が使っているなら次は1000人。あるいは他部門にも広げられないかなど、お客様の“深耕”に力点を置いています」と強調する。

 小規模組織でも成果を出す人材について森田氏は、「お客様とともに考え、伴走し続ける力」とし、「ヒアリング能力、柔軟性、課題整理ができたり、長期的な関係を築けることがポイント」と続ける。各メンバーのバックボーンは異なるが、補い合いながら目標に向けて補完し合うチーム運営が強みだ。

 森田氏は、「生成AI活用をはじめ、現状のサポート体制のまま生成AIを使った効率化を図り、業務を拡大できる仕組みを構築、お客様の成功に寄り添う道を探ります」と展望する。

(月刊「コールセンタージャパン」2026年1月号 掲載)

2025年12月20日 00時00分 公開

2025年12月20日 00時00分 更新

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