本誌記事 ケーススタディ フロンティア

フロンティア

最適な“出会い”をデザインする
BtoBマッチングを最適化に導くサクセス業務の全貌

企業の持つ課題と、それを解決するパートナー企業(受注側企業)の橋渡しをする、BtoBマッチングサービス「レディクル」を展開するフロンティア。同社は成果を最大化するために、カスタマーサクセス業務を展開している。契約継続を見据え、契約後3カ月/6カ月/10カ月目の3つのタイミングを重視。パートナー企業のモチベーションを敏感に察知し課題を解消していくことで、チャーン抑止を図る。

 課題を持つ企業と、それを解決できるパートナー企業(受注側企業)をつなぐBtoBマッチングサービス「レディクル」。このサービスを展開するのがフロンティアだ。

 レディクル統括本部 アカウントリレーション部 部長の増田将也氏は、同社のカスタマーサクセス(CS)部門の機能を持つアカウントリレーション部の役割について、「パートナー企業(受注側企業)を成功に導くのが、我々のミッションです」と強調する。

 レディクルは、クライアント(発注企業)からのニーズをヒアリングし、その課題を解決できる最適なパートナー企業を紹介する「マッチングプラットフォーム」だ。

 クライアントに費用はかからず、パートナー企業から報酬を得る仕組みだ。初期費用30万円、月額30万円(1年契約)、さらに1件のアポイントごとに5万円が発生する。

 営業がテレアポなどで案件を獲得すると、品質管理部が内容をヒアリングして、案件表を作成。案件表をもとに、アカウントリレーション部が各案件のマッチング精度を整え、さらに商談後のネガティブ要因を収集・改善する()。月2回の定例ミーティングを通じて、パートナー企業のリテラシーや状態も把握し、受注につながるアクションを提案していく。

図 案件受注から契約継続までのフロー
図 案件受注から契約継続までのフロー

単なるマッチングではない
契約更新を見据えたCS活動

 増田氏は、同社のCSの価値について、「我々は“単にマッチングすれば終わり”といった支援はしていません。パートナー企業様の可能性を最大化するために、いかに最適な“出会い”をデザインし続けるかを追求しています。ですから、受注につながる“出会いの質”が大切になってきます。だからこそ、CSの役割は重要なのです」と語る。

 パートナー企業側は約2500社が登録している。

 業種は、ITやWeb制作、コンサルティング、BPOと幅広い。商談件数は、月平均2000件近い。しかし、仮に成約できたとしても、パートナー企業の課題が解決されなければ、契約更新はされない。「だからこそ、“レディクルのCS”は、キックオフ直後から密接にパートナー企業と伴走、支援します」(増田氏)。

 成果指標となるKPIは、「月間商談数」「受注率」が指標になることが多い。初回の商談までがサービス提供範囲となるため、受注支援にこそ介在する価値がある。

 中でも、重視しているのが契約後3カ月/6カ月/10カ月目の3つのタイミングだ。

 3カ月目の利用の初期体験の度合いにより、パートナー企業のモチベーションは変わり、半年後の成果が左右される。だからこそ、継続交渉を始める10カ月目までに、課題を解消しておく必要があるという。

 増田氏は、「受注できない理由はさまざまです。営業の追客ができていない、提案力が弱い、自社サービスに競争力がない──こうした課題をアカウントリレーション部が客観的に分析し、必要であれば営業コンサル的な支援も行います」と取り組みを語る。

 同部では、担当社数は1人あたり約50社にのぼる。増田氏は「業績も好調のため、利用企業も増加しています。そのため、積極的に採用を進めています」と語る。“専門性を持った提案型営業の経験者”が求める人材像だ。

レディクル統括本部 アカウントリレーション部 部長 増田将也氏
レディクル統括本部 アカウントリレーション部 部長 増田将也氏

属人化の支援体制から脱却
ノウハウやツールを活用

 属人的だった支援体制からの脱却も図っている。

 60種以上の提案資料のテンプレートや、行動フレームを整備した。この仕組みによってノウハウを共有し、担当者の早期立ち上がりを支えている。

 情報連携ツールは、自社開発のCRMデータベースを中核に、GoogleスプレッドシートやNotionも併用している。顧客の状態やチャーンの兆候はデータベースで可視化され、営業部門との連携も密に行われている。

 同部の課題のひとつに、「パートナーが受注しすぎることによる離反」もあるという。

 「ありがたいけれど、対応しきれずリソースが足りなくなったので解約したいといった声もあります。そこで当社からは、業務委託先の紹介や採用支援も行い、こうした離反を抑止しています」(増田氏)。

 細やかな支援が奏功し、継続率は全体で高い水準を維持している。

 さらに伴走支援の体制は単なる成果主義にとどまらない。

 商談を通じた学習機会を得ること、営業力の底上げ、サービス理解の深化──CS業務の一連のプロセス全体が、顧客の企業成長につながると位置づけられている。

 担当者が商談の設計や振り返りに深く入り込み、提案を続けるからこそ、顧客からの信頼は厚い。

 「ありがたいのは、成果が出たときに“レディクルのおかげで会社の営業が変わった”と言っていただけることです」(増田氏)。

 さらに現在は、サービスをチケット型で利用するライトユーザー層に対しても、適切なタイミングでサブスクリプション型への移行提案を行う仕組みづくりを進めている。

(月刊「コールセンタージャパン」2025年11月号 掲載)

2025年10月20日 00時00分 公開

2025年10月20日 00時00分 更新

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