“動ける現場”をつくる! 自律的組織の構築術 第2回
営業活動で成果が上がらない要因の多くは、「誰に売るか」が曖昧なまま進めていることにある。アプローチ先の精度が低いほど、無駄な架電が増え、スタッフのモチベーションが下がる悪循環に陥りやすい。重要なのは、感覚ではなくデータで「狙う相手」を明確化し、限られた時間と労力を最大化する仕組みをつくることだ。
営業活動における「ムダ打ち」とは、成約の見込みが薄い相手に労力を費やしてしまう状態を指す。特にテレマーケティングでは、アポイントが取れない状況を放置してしまうことが多く、コールスタッフは成果が上がらないとわかりながら架電を続けることになる。成果が見込めない仕事を続けるほど苦痛なことはなく、やがてモチベーションが低下し、離職へとつながる。
アポイントが取れない最大の理由の一つは、商材の強みと、ターゲット企業・担当者のニーズが一致していないことである。「商材を磨けば売れる」と考えがちだが、実際には商材の強みを短期間で変えることは難しい。したがって、成果を出すためには「商材を変える」のではなく「ターゲットを変える」発想が必要である。
例えば、自社サービスが「業務効率化」に強みを持つならば、現場の人手不足や生産性に課題を感じている企業を狙うべきだ。一方で、ブランディングや新規顧客開拓に注力している企業に対して、効率化を訴えても響かない。営業成果は「何を言うか」よりも「誰に言うか」である。ターゲティング精度の向上は、営業の量よりも質を高める“根本的なテコ入れ”であり、再現性ある営業組織の基礎となる。
ターゲティング精度を上げるためには、CRM(顧客管理システム)を単なる管理ツールではなく、「再現性を生む仕組み」として活用することが重要である。CRMは入力することが目的ではなく、学習と改善のためのデータベースとして使ってこそ価値を発揮する。ここでは、現場で特に有効な3つの活用法を紹介する(図)。

①業界や従業員数で絞り込めるようにしておく
ターゲットを定義する上で最も重要な属性は「業界」と「従業員数」である。業界ごとに共通の課題や商習慣があり、業界単位でリスト化できれば訴求ポイントを最適化できる。また、企業規模を判断するうえでは、売上高や資本金よりも「従業員数」を重視すべきだ。なぜなら、売上は業種によって変動が大きく比較しづらいが、従業員数は業務プロセスや課題構造に直結しているからである。CRM上で従業員数を整理しておけば、営業トークや提案内容を企業規模に合わせて最適化できる。
②誰にNGを受けたか記録する
テレマーケティングでは、受付や担当者からのNGは避けられない。重要なのは「どの段階でNGを受けたか」を正確に記録しておくことである。受付で断られた場合は、受付に伝えるフレーズ改善で再挑戦できるし、担当者NGであれば、半年も経てば状況が変わっているかもしれない。別の切り口を思いついたり、商材の強みに変化があれば時期にかかわらずアプローチできるチャンスが生まれる。このように、CRMで履歴を追えるようにしておくと、再アプローチの確度が格段に上がる。
③担当者からのNG理由を記録する
担当者に断られた理由を記録しておくことで、再提案のチャンスを生み出せる。「予算がない」「タイミングが合わない」「他社を利用中」などの情報があれば、機能追加やキャンペーン時に一斉フォローできる。NG理由は営業部門だけでなく、商品開発やマーケティングにも共有することで、次の戦略設計にも役立つ。CRMは単なる管理ツールではなく、新商品開発のヒントを探すツールとしても運用できる。
あるデザイン会社の事例を紹介する。同社は、広告代理店の「制作パートナー」として提携を狙う営業活動を行っていた。当初は営業部門に対して「案件が立て込んだ際に制作を請け負いたい」とアプローチしていたが、アポイント率はわずか2〜3%にとどまっていた。
そこで、営業先を営業部門から「制作部門」に切り替えた。「営業負担の軽減」ではなく「制作キャパシティ確保」というニーズに合わせた切り口に変更した。その結果、アポ率は5%前後に上昇した。ターゲットの課題認識に沿って接点を再設計したことが成果の要因である。
さらに、同社はCRMで「受付で断られたのか」「担当者で断られたのか」を詳細に記録していた。担当者NGだった企業は接点があるため、受付が取り次ぎやすい。半年後、制作部門向けの提案として再アプローチしたところ、追加で4%のアポイントを獲得。結果としてアポ率は当初の倍以上に向上した。CRMを活用し、ターゲット精度と再接触戦略を両立させた好例だ。
営業の成果はセンスでも根性でもなく、「設計」で決まる。ターゲティングを精緻化し、CRMを正しく運用すれば、誰が担当しても一定の成果を出せる“仕組み営業”が実現する。ムダ打ちを減らすことで、スタッフは成果の出る相手に集中でき、仕事への納得感と成長実感が生まれる。
営業活動の本質は、数を打つことではなく、正確に狙うことだ。ターゲットの見極めとデータの活用こそが、成果とモチベーションを両立させる営業組織の礎である。
(月刊「コールセンタージャパン」2026年1月号 掲載)
2025年12月20日 00時00分 公開
2025年12月20日 00時00分 更新