大村 康雄 

本誌記事 連載 “動ける現場”をつくる! 自律的組織の構築術 第1回(新連載)

“動ける現場”をつくる! 自律的組織の構築術 第1回(新連載)

再現性と成果を両立する実践ノウハウ①
スクリプト通りに話してもアポが取れない理由

インサイドセールスは、成功パターンの再現性を高めるためスクリプトを用意することが一般的だ。しかし、スクリプトをしっかり理解してコールを開始したのに、アポイントが取れない。こうした悩みを抱えるコール担当者は多い。なぜスクリプトにフォーカスしすぎるとアポが取れないのか。さらに、スクリプト以外に何が必要なのかについて解説する。

大村 康雄
エッジコネクション
代表取締役社長
大村 康雄
慶應義塾大学経済学部卒業後、シティバンク銀行(現SMBC信託銀行)入行。2007年、株式会社エッジコネクション創業。営業支援業を軸に人事・財務課題にも対応するコンサルティング企業として展開。これまでに1600社超を支援し、継続顧客割合は75%以上。2024年7月には「黒字持続化経営の仕組み」を出版。

 スクリプトは、インサイドセールスの生産性を高めるために不可欠なツールだ。しかし、スクリプトに沿っても、思うような成果を生まないことがある。なぜか。それは、相手が「人間」だからである。

 相手が人間であれば、望み通りの反応になるとは限らない。「想定外の返答」はいくらでも来るし、求めていた答えを適切に返したはずなのに反応が渋いことはいくらでも経験したことがあるはずだ。

カギは「スクリプト+α」の対話力

 スクリプトに忠実な対応は、相手を「型にはめるような行為」で、本来のあるべき姿に反し、遠ざけることにもなりかねない。

 アポ獲得のカギは、相手が人間であるからして“対話力”である。しっかり電話に出ていただいた方と対話し、警戒心や不明点などをていねいに取り払い、アポイント獲得に繋げる。それがあるべき姿であり、決して、「スクリプト通りにトークを展開する」ことではない。スクリプト通りにトークを展開しようとしすぎると、相手との対話が疎かになり、トークの流れを無視して無理にスクリプトの流れに寄せようとするなど、会話がチグハグになる。当然、“対話”はうまくいかなくなる。

 スクリプトは基本の型として頭に入れつつ、実際のトークは相手の反応や返してきた内容に応じて臨機応変に対応するという進め方がテレマーケティングの基本と考えるべきだ。

よくある失敗と乗り越え方

 実際に、スクリプトに頼り過ぎている人は次のような失敗をしていることが多い()。自身が当てはまっていないか確認してほしい。

図 失敗例と対策
図 失敗例と対策

・棒読み:明らかにスクリプトを読んでいるとわかるような話し方でコールをしている状態である。相手からすると、自分と話そうという意識ではなく、とりあえずこの内容を伝えようという意識で電話してきていることが明確にわかってしまい、そのような人の話を「きちんと聞きたい」とは思えないだろう。「何かを読んでいるな?」と気付かれないくらいの話し方ができるようになってからコールをするようにしよう。

・ペーシングの失敗:自分がゆっくり話しているのに早口で話されたら、その会話の居心地があまりよろしくないのは容易に想像がつくと思う。テレマーケティングで成果が上がらない人は、このペーシングがしっかりとできていないことが多い。相手の「間の取り方」、「話すスピード」、「声のトーン」、「テンション」などなど、電話だけでもさまざまなことを人は読み取ることができる。これらを可能な限りすべて相手とシンクロさせていくことで、相手は心地よく会話ができる状態になるとともに、見知らぬ人からの電話でも切りにくくなる。ペーシングがうまくなる方法として、電話口の相手の「モノマネ」をしながら話してみよう。早口で「お世話になっております」と言われたら、自分も同じ早口かつ同じくらいのスピードで「お世話になっております」と返す、といったように行うと、ペーシングのコツが掴みやすくなる。

・魅力不足:これはトークのやり方云々の前提の話ではあるが、スクリプトに書いてある内容が相手にとって魅力的ではない場合、いくらうまく相手と対話ができてもアポイントは取れない。アポイントを取るには、わざわざ見知らぬ人との時間を作ってもいいかと思わせるだけの魅力が必要だ。対策としては営業担当者など、「商材の魅力」、「強み」、「差別化ポイント」といったことを把握している人にヒアリングし、スクリプトの魅力を足していこう。

・知識不足:スクリプトでしっかり魅力を伝えることに成功し、対話もできていると、もっと知りたいという気持ちになってくるので相手から質問が出てくる。その時、自分の知識が不足していると、しどろもどろの回答になったり、語気が弱くなったりして、相手が興味を失ってしまう。コールに入る際はしっかりと知識を入れ、弱気な返答にならないようにしなければならない。ただし、すべて電話で答えてしまい、アポイントが取れた時に話すことがなくなる状態は避けよう。程よいタイミングで「ここから先は商談で」とアポイントにつなげることが重要である。

・強気のアポイント提案:それなりに対話が進み、「これならアポイントが取れるかも!」と思った際、「よろしければ、お手隙の日程で詳しくご説明しますよ!」と強気に言ってしまう人がいるが、そうすると相手は警戒し、「そこまでは結構です」と逃げられたり、「とりあえず資料ください」となったりする。日程をいただくのは相手の時間をいただくということ。しっかりと低姿勢に出てていねいに提案しよう。

成果を出す人のスクリプト活用術

 どんな商材でも一定の成果を出す人は、スクリプトから「商材の特徴」やアポイント取得時に「ヒアリングすべきこと」など、本当に重要なポイントのみを箇条書きで抜き出し、あとはフリートークで進めてしまう傾向が強い。「スクリプト通りに話すことに集中しすぎているからアポが取れない」のである。ぜひ、スクリプトから少し距離を置き、せっかく電話に出ていただいた方との「対話」を重視したテレマーケティングに取り組んでみていただきたい。

(月刊「コールセンタージャパン」2025年12月号 掲載)

2025年11月20日 00時00分 公開

2025年11月20日 00時00分 更新

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