本誌記事 ケーススタディ パーソルキャリア

パーソルキャリア

「CX統括部」横断組織を設立
人材ビジネスの“クライアントサクセス”のあり方

プロフェッショナル人材を活用する人材ビジネスで、顧客の成功をどう実現するか。パーソルキャリアは2025年4月、「HiPro CX統括部」を新設。サービスごとに分散していたナーチャリングやクライアントサクセス機能を横断的に統合した。カスタマーサクセスとしては、非SaaS領域ならではの難しさと向き合いつつ、再現性の高い支援モデル確立に取り組んでいる。

 SaaS領域では一般化しつつあるカスタマーサクセス(CS)を、パーソルキャリアは、人材サービス事業に「クライアントサクセス」として取り入れている。

 企業が抱える課題にあわせて、高度な専門スキルを持つ、副業・フリーランスのプロフェッショナル(プロ)人材をプロジェクト単位に紹介し、課題を解決するサービス「HiPro」に活用している。

 HiProは、「HiPro Biz(経営支援)」「HiPro Tech(IT領域特化)」「HiPro Direct(マッチングプラットフォーム)」の3サービスを提供している。

 導入企業の増加とともに、同社は2025年4月に組織改編を実施。サービスごとに存在していたナーチャリングやマッチング機能、クライアントサクセスを統合し「HiPro CX統括部」を立ち上げた()。

図 組織体制
図 組織体制

 タレントシェアリング事業部ゼネラルマネジャーの金内慶太氏は、「これまではサービスごとに最適化されていた機能を、横串で統合する形にしました」と組織体系について説明する。「HiPro Biz」を担当する、同部マネジャーの野口拳志氏は、「プロ人材の活用が初めてのお客様も多いため、オンボーディングから成果の創出までを一貫して支援することでより高い成果の創出を図ります」と説明する。

 現段階での対象顧客は、全体の約20%。「現状は上位の一部にとどまっているものの、拡張の余地は十分にあると考えています」(金内氏)。

非SaaS型ゆえの難しさ
サクセスの定義とプロジェクト推進

 SaaS企業は、顧客がソリューション、アプリケーションを利用したログなどから状況を把握しやすい。しかし非SaaSにあたるHiPro Bizでは、それが難しい。

 顧客の状態や状況について野口氏は、「お客様のプロジェクト進捗や、意見をもとに判断しています」と説明する。また、KPIやサクセスの定義もサービス特性に合わせた内容になっている。

 クライアントのプロジェクトのテーマ(課題含む)は、新規事業の立ち上げからDX、人事制度設計まで幅広い。アウトカム(成果)も案件ごとに異なるため、統一した指標を置くことはほぼ不可能だ。サクセスの定義は、少しでも共通化しやすい「もう一度使いたくなる」「他部署に紹介したくなる」といった、リピートや紹介の兆しとして捉えている。

 企業からは、「プロ人材をどう活用すればよいか」「プロジェクトの進め方が分からない」など。また、プロ人材からは、「企業とのコミュニケーションがすれ違っている」「プロジェクト当初の目的が変化した」といったものが挙がる。野口氏は、「企業とプロ人材の双方から相談があります。人と人の関係性が前提なことから、状況に応じて微修正が必要になるケースも多い」と語る。

 プロジェクトは半年から年単位におよぶことも多い。短期的な成果だけでなく、関係性の維持や方向性の調整も求められる点が、この領域での特徴といえそうだ。

タレントシェアリング事業部 HiPro CX統括部 Client Delightment部 ゼネラルマネージャー 金内慶太氏
タレントシェアリング事業部 HiPro CX統括部 Client Delightment部 ゼネラルマネージャー 金内慶太氏
同部 Client Success Planningグループ マネージャー 野口拳志氏
同部 Client Success Planningグループ マネージャー 野口拳志氏

再現性を高める“型化”と
AI活用の構想

 業務の再現性を高めるため、サクセス担当者の動きを形式知化する取り組みも進めている。金内氏は、「2つの“型”が見えてきた段階です」と現状を話す。

 1つは、“顧客密着型で、顧客接点を多く持ちながら、プロ人材と伴走するスタイル”。2つ目が、“プロ人材だけで埋められないポイントに対して、サクセス担当者が代替的に入り、プロジェクトを支える”だ。「傾向が見えてきた上での今後の課題は、汎用性や拡張性だと考えています」(金内氏)。これが実現できれば、対象となる顧客層も拡大するだろう。

 またプロジェクトの管理には、ヘルススコアを導入。企業の決裁者・推進担当者双方の評価や、リスク認識と対策状況を組み合わせ、「ABCD」で状態を分類している。

 CSにおいて、KPIにチャーン(離脱)率を設定する企業が多い。しかし同社では、チャーンは必ずしもネガティブと捉えていない。なぜなら、課題が早期に解決すれば、契約終了する“グッドチャーン”もあるためだ。野口氏は、「NPSをプロジェクト終了時に取得し、お客様の本音を拾う取り組みも進めています」と補足する。

 一方、生成AIの活用については、まだ実験段階にある。将来的には、AIが代替し、プロジェクト状況の診断や、ヘルススコア判断を補助できないかを検討中だ。現状のA〜Dの評価は、どうしても人による評価のブレが生じやすい。「人によってアンテナ感度が違う部分を、AIで補える可能性があると思っています」(金内氏)

 プロ人材活用という特性上、HiPro Bizのクライアントサクセスは、SaaS型とは異なる難しさを抱える。しかし、組織再編による体制整備なども行うとともに、業務の型化や再現性の向上を図っている。非SaaS領域におけるCSのあり方を、模索しながら形にしようとしている段階だ。

(月刊「コールセンタージャパン」2026年4月号 掲載)

2026年03月20日 00時00分 公開

2026年03月20日 00時00分 更新

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